第11話 回想編⑧誕生日
2021年10月31日
10月は彼の誕生日だった。あいにく日曜日と重なっていたので、母親の手伝いをしないと、と言われて会えないと思っていた。それに私も子どもがいるので日曜日は都合が悪い。土曜日ならと思い、曜日指定してみたが「その日は金曜日から日曜日まで、妹の仕事の手伝いをするから、あかんねん。ごめんね。」と断られた。妹は派遣で和菓子の販売員らしいが、その手伝いならば派遣ということになる。そこまでコロナでお店の経営が苦しいのかと思い、あまり深くは聞けなかったが、本当は手伝いではなかったのだと思う。その1ヵ月ほど前に彼は間違えて誰かに送るはずのメールを私に間違えて送ってしまった事がある。内容は「舞鶴旅行の振り込みしといたよ。」という内容だった。その時は両親が行く旅行の振り込み完了LINEだったと説明。でも、この3日間は旅行に行っていたのではないかと思う。両親とでもなく、他の誰かと。
そして10月半ば頃、「31日の日曜日空いたけどどう?」とお誘いがあった。その日は彼の誕生日だった。誕生日空けてくれたんだと嬉しくなって、「誕生日やん!」と言うと、「ホンマやね、偶然やわ。」と、自分の誕生日を忘れていたような返事が返ってきた。この日は必ず会いたいと思い、予定を調整した。
当日、京都の鴨川で待ち合わせをすると、彼が自転車で河原町まで来た。大阪に住んでいるのに電車で河原町まで来ればいいのに、と思ったが、「いつもの癖で、西院で降りてしまった。自転車をそこに停めてるから、ここまできちゃったわ。」と言った。変わってるな。と思いつつも、この時はさほど気にならなかった。
「誕生日だし、何が食べたい?」と聞くと「何でもいい。」と彼は言った。私は特別な日は少しいい食事をしたかったが、彼はそのへんにあまり興味がなく、「パスタの気分かな。」と言った。結局パスタの店の近くにトンカツ屋さんがあり、「やっぱりトンカツ。」という事で、2人でトンカツを食べた。
それから服を見に行き、彼が気に入ったアウターを私からプレゼントした。その後はホテルへ行って濃厚な時間を過ごした。
この日ほんとうは、「有名な湯豆腐屋さんがあるから行きたいなら連れていくよ。観光地だから他にもお寺とか色々あるし。」と彼に言われていたが、久しぶりに会うので私がホテルに行きたいと希望した。彼は体調と気分にもよるが、常にセックスの事を考えている訳でもなく、私が喜びそうな事も考えて提案してくれた。
ホテルで彼はまた「放尿が見たい。」と言ってきた。私は「飲んでくれるなら。」と答えた。彼は「飲むのは無理。舐めるだけ。」そう言って私が出し始めると少し舐めていた。彼は体液を与え合うことも好きだった。正常位しかできない彼とのセックスは私が下になる事が基本だったので、唾液を垂らしてきたり、射精の瞬間口の中に出してきたりする事が多かった。私も好きな人のなら普通に飲めたので抵抗はなく、受け入れた。それに、彼は「精液苦いよね?」と聞いてきて、「うん。」と答えていたが、本当は無味だったし、こんな言い方変だと思うが、飲みやすかった。
ホテルから出て、「カフェに行ってゆっくり話そう。」と言って、とてもアンティークさが素敵なカフェに連れて行ってくれた。彼はチェーン店の密集したカフェ等が好きではなく、広々としたお店が好きで、「せっかくカフェ行くのに、ゆっくりしたいやん。」と言っていた。
しばらくゆっくり話をして、彼は私を駅まで送ってくれて、その日は大阪に帰った。私は京都に行くのが楽しかった。近場の観光地。新しい土地、新しいお店、どれも新鮮で、彼と大阪で会いたいとは思わなかった。彼もまた、大阪で会おうと言わなくなってきた。彼にとっては京都で会う方が都合が良かったのかもしれない。
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