第9話 回想編⑥カミングアウト

2021年9月


 9月に入ったある日の事、ある話の流れで、彼から「ええっ。。」というようなカミングアウトがあった。

「実は僕は寝取られる事に興味がある。」このカミングアウトで、今まで彼が経験していたなかなか濃い体験も、「だからか。。」と納得する事に近づいた。


 寝取られとは・・・自分の大切な彼女等を他の男に抱かせる事で、とてつもなく激しい嫉妬が興奮に変わるのを楽しむ行為である。


「実は今までRさんが他の男としてるところを想像して、オナニーをもう何十回もしてる。」「Rさんに出会う前の2年間は彼女がいなかったから前に寝取られた事を思い出しながらずっとオナニーしてた。」彼はマゾ気質があるのだろう。以前に付き合った人たちと経験した「唾液を身体に垂らす」「陵辱される」「アナルを攻められる」等の行為は彼がおねだりしていたに違いない。元風俗嬢だった彼女に関しても、寝取られがエスカレートしていき、他の男が射精したコンドームを持ち帰ったり、動画を持ち帰ったりをされた、と言うよりはさせた、のではないだろうか。しかし寝取られにはリスクがある。彼女も、最後には本当に寝取られて終わっている。もちろん彼女も寝取られ行為を楽しんでいたと考えられるが、いつしかその相手の方を好きになってしまい、彼に報告せずに、その相手と会っていたのだ。それが2度バレたので別れる事になった。彼は自分の知らないところでその相手と会われるのは許せない。「彼女に愛されていないと意味がない。愛されたい。」と彼は言ったが、私が「彼女に他の男に抱かれてこいって言って、本気で愛される訳ないやん。」と言うと、「そやね」と彼は静かに納得した。

 彼にとって、この彼女が寝取られ行為をした初めての人だった。他の彼女にもカミングアウトした事はあるが、泣かれてしまったらしく、決行はできなかったのだろう。

 私は泣くまではいかないが今までお付き合いをした男性たちは皆、独占欲が強く浮気しようものなら私の事も相手の男も刺し殺しかねない人たちだったので、なかなか彼の気持ちが理解できなかったし、もし本当に浮気してしまったらあっさり「さよなら」と言われてしまうのではないかと疑うほどだった。

 結局、「Rさんを失いたくない。前の彼氏等との行為を想像するだけで十分興奮できる。寝取られは、最後本当に寝取られて終わる。今はその不安が大きいから、寝取られ行為をしなくていい。」

「寝取られた後のセックスは、今までにないぐらい興奮して燃える。でも、寝取られを楽しむにはお互いに理解が必要。浮気をした事のない人が無理にしなくていい。」彼は自分を納得させるようにそう言った。


 しかし、しばらくすると、また寝取られたい願望が現れ、「寝取られたい・・・」と言い出すのである。たまに負けん気の強い私がいて、以前の彼女とのセックスが今までにないくらい燃えたと言われると、自分もそうさせたい気持ちになる時があった。


「誰とすれば一番興奮する?」

「ヤリモクの人。遊びでできるような人。」

「それは病気のリスクもある。元彼なら安心してできる。」

「元彼?寄り戻らない?」

「別れたのに戻らない。」

「う~ん・・・。」


 彼は少し考えて、「じゃあ、元彼にLINE送ってみて。」と言った。


 突然の寝取られ決行である。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る