上書きされた過ち

 兄と妹、姉と弟……それらの関係だと法律上、婚姻が認められていない。反対にいとこ婚は認められている。


 しかしながら世界共通ではない。いとこ婚をタブーとみなし禁止されている国も確かに存在している。それだけセンシティブな問題なのだ。


 背景にある遺伝性疾患のリスクはもちろん、倫理や感情の面から忌み嫌われているのも否定できない。法律で認められていたとしても、万人に受け入れられてはいない。


 普遍的ではない故に色者扱いされてしまうのは避けられないのかもしれない。禁忌の恋とは言い得て妙だ。


 そんな知識を中学生の頃から知り得ていた俺は……どうしようもなくどうしようもない。



『しよっか…………子供の頃の続き♡』



 この時期になると必ず思い出す過ちの記憶は昨日、興奮を増して上書きされた。


 未希ちゃんからの口づけで考えることすらしなくなった俺は、今まで溜まってきたすべてをぶつけていた気がする。


 どちらからともなくキスを求め、どちらともが生まれたままの姿になり、互いが互いの体を貪るようにまぐわった。


 続きと未希ちゃんが口にしていたように、俺達が最後までいったのは初めてだった。子供の頃はその手前で終わっていたのだ。それでも、当時の刺激は相当なものだったけど。



『はぁ……はぁ……』


『…………んッ』



 舞花の時とは違い静かな夜だった。


 行き交う息遣いはか細く、時折漏れる未希ちゃんのよがり声も控えめだった。弱でリズムを刻んでいた扇風機の方がよっぽどうるさかった。


 けれど、未希ちゃんの中は脳が焼かれてしまうほど熱く濡れていて、その事が俺を加速させた…………おかげで短い時間ながらも3回シてしまった。



「……………………」



 3時限目休み。普段なら友達とくっちゃべっているこの時間も、今日に限ってはそんな気分にならず、俺は頬杖ついて窓の外のつまらない景色をボーっと見つめていた。



『――待って待ってハルくん! ――はいこれ、お弁当! 学校、頑張ってきてね!』



 朝、夜とは打って変わりケロッとしていた未希ちゃんを見て、俺は少なからずショックを受けた。


 あの感情を言葉で説明するのは非常に難しい……いや、難しいのではなく嫌なだけなんだと思う。言葉にする事で自分の気持ち悪さが浮き彫りになるようで……今更なにを気にしているんだって感じだが。



「……………………」



 俺はスマホを取り出し、LINEを起動しトーク画面を開く。


 昨日交換したばかりの未希ちゃんとは未だやり取りなし。学校にる間、何度も送ろうと文字を打っては消したりを繰り返している。



「はぁ……」



 ため息を零したそのすぐ後、手に持っているスマホが短く振動した。



『面と向かってが凄く恥ずかしかったから伝えられなかったけど…………気持ち良かったよ、ハルくん♡』



 不思議な事にたったそれだけで朝から抱いていた鬱屈な気持ちが消え、心の器はふち一杯にまで満たされた。

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