第12話
「はぁーやっと講評も終わりか……」
灼熱のフィールドワークを経た課題はそこそこしっかり作り込んだので評価としてはそこそこだったように思う。まぁ今期の成績自体は蓋を開けないと何とも分からんのだけど。
「リンゴおっつー」
「おー、お疲れー」
同じ学科の友人たちと軽いねぎらいの挨拶を交わす。
学科内での打ち上げ、という話もあったようだが今一つ全員の都合が合わず一番多く参加できそうなタイミングで飲み会を開催し、来れる奴だけでやるスタイルに落ち着いた。残念ながら俺はそのタイミングに合わない方だ。
「リンゴくんは飲み会いくん?」
飲み会開催の掲示物(ワードアートまみれ)を眺めているといつの間にかリコさんが近づいてきていた。
「いや、残念ながら都合がね、リコさんは?」
「うちは行く~、リンゴくんとも飲んで見たかったなぁ」
「じゃあまた別の機会に」
「そやねぇ、なぁなぁ」
肩が触れそうなくらい近づいてひそひそ声になるリコさん。
「バタくんのアレ、なんか進展あった?」
「いや、特に?」
「けっこうじっくり派なんやねぇバタくん。うかうかしてたら夏休みきてまうで」
「そうねぇ、まぁ学祭が勝負所……かもしれない?」
「ほぉー、現場押さえたら教えてや!ウチも物陰に潜みたいわ」
「いや、そんな機会ないぞ多分、俺も覗いたりする予定はない」
「ええ~、いっちゃんアツいとこやのに」
冗談(多分)を交わしているとリコさんを呼ぶ声が聞こえ、ほなな、と言って行ってしまった。
「おいおい、いつの間にそんな仲良くなったんだよ」
「ん?」
振り返るとニヤついた表情の柴田がいた。主にお前のせいだ
「いや、別に仲良くまではなってないと思う」
「あんな距離感で何の話題なら仲良くないとか言えんだよ」
お前の事だよ、と言いそうになったが飲み込み話題を変える。それより気にすることがあるだろうよ。
「いや俺のことはいいんだよ。お前結局学祭でどうすんの?」
「あー、いよいよだよな。つうことで飲みいこうぜ、作戦会議で」
「今日は無理だぞ」
「空いてるときでいいわ」
「じゃあ後でLIINするわ」
「うい、センキュウ」
後日、柴田との作戦会議の結果。
まず一対一のデートに誘うのはやめておく。数人のグループで出かける機会を作ることで距離を縮めようという方針になった。
実質的にまた俺が巻き込まれることにはなるんだが、まぁそうでもないと一足飛びにデートってことは無さそうだししょうがない。
「やっぱ海じゃね?夏だし」
「海か……」
「え、海嫌いなんか?」
「磯臭いとちょっとな、匂いがあんまり」
魚市場みたいなところも苦手だ。
「匂いか……まぁユナちゃんの水着見たらそれどころじゃねぇだろ」
「それどころじゃねぇのはお前だろう」
「だってお前……こう……な?」
そう言いながら柴田は空中に意味深な曲線を描いていた。まぁ言わんとすることは分かるけどな。
「あんまり露骨な目線飛ばすと感づかれるんじゃないのか、引かれても知らんぞ」
「くっ、そうなんだよな……めちゃくちゃ見てぇけどあんま見たら好感度が……」
「まず好感度で、付き合ったらたっぷり見せてもらえ……」
「天才、それだわ」
付き合ったからといってじっくり見せてくれるのかは知らんけどな。
「それはそれとして見てぇなぁ。リンゴだってぶっちゃけ見たいだろ?」
「そりゃなぁ、スタイルいいもんなユナちゃん」
「うむ……」
男同士でこういう話題になったことはあんまりなく、積極的に話すタイプでもないから気恥ずかしい感じがして表には出さないが、それを置いといたら正直同意しかない。
「海に誘うとしてもある程度目星は付けといたほうがいいんじゃないのか」
「そうだな、リサーチしとくわ。リンゴはユナちゃんに興味なさそうな男とか探しといてくれるか」
「ああ……まぁそうか。そうだな」
なんだその条件、と思ったがわざわざライバルというか邪魔になるような奴を誘うことも無いか。ユナちゃんに興味ない……ピコとかしかっちくらいしか思いつかないが、あいつらはあいつらで夏遊びたいなと言っていたのでちょうどいいかもしれない。
最後の焼き鳥を食べ終えたところで時計は十時を回っていた。
もう数日もすれば、いよいよ学祭が始まる……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます