協力
Side:クリスティーナ
アインから進展があったという連絡をロイから聞き、いつものようにロイの屋敷に集まった。
「それで、進展って何があったんですか?」
「母上とリリア……様がお茶会の約束をした」
「今、お姉様の事を呼び捨てにしようとしました?」
「……していない」
「…………まぁいいです。お姉様が王族全体を嫌っていなかったと知れて嬉しかったんですね」
「それだけじゃない。そのお茶会で私と顔合わせをしてくれるらしい」
なるほど、それはテンションが上がる訳です。今まで顔も名前も知らない人だったのに、ようやく顔見知りになれるのですから。
まぁ、名前は覚えられていたと知れば、驚くかもしれませんね。その顔が見れなくて残念です。
「さて、今日はその自慢で終わりですか?」
「いや、今日は協力者を連れてきた。入ってきてくれ」
「……失礼します」
アインの掛け声に入ってきたのは、お姉様を傷つけたシシリア・ラティスだった。
「……帰ります」
「少し待って欲しい」
「この方がお姉様を傷つけた事には変わりありません。そのような方と話すことはありませんわ。いいえ、そうですわね。帰ってすぐにお姉様に泣きつきましょうか。『アイン様がラティス様と親しくしていて、ラティス様を差し向けたのはアイン様だった』って」
「止めてくれ!」
クリスティーナは的確にアインが嫌がるであろう言葉を告げる。残念ながら事実なのでアインは縋ることしかできない。
「間違っている所……ありました?」
「グッ、いや……ないが……」
「では失礼します」
「ちょっと待ってください!」
この状況をなんとかしようとするが、言葉に詰まるアイン。それを放置しようとすると、今まで黙っていたシシリアが声を上げる。
「……なんですか?」
「…………このシスコン!」
「………………」
シスコンという言葉は私がこの世界に来てから一度も聞いたことがない。それに一度お姉様の前で言ってみたことがあるが、「どういう意味?」と聞かれ、返答に困ったものだ。
もちろんお姉様には姉妹の仲がとても良いことだとだけ教えてある。
そんな言葉を使う……それは私と同じ知識があるということ……。
「転生者ですか。それでお姉様に嫌がらせを……」
「してないわよ!……いや、言葉選びを間違えたのは謝ります。でもそれは誤解なの!」
「誤解?」
「そう! 私は第一王子に対する見方を変えればいいのではないかと言いたかっただけなの」
見方を変えたところで、アレはどうにもならないでしょうに……。
――そっか、お姉様にアレを押し付けて、自分はアインに寄りそう。その方が王妃の道が近づものね
「本当に最低」
「なんでっ!?」
「私が理解できないとでも? それ程までに私を馬鹿だと思っているのですか?」
「ちょっと待って! 本当になんで怒っているのかわからないんだけど!」
アインを見ると、彼は苦笑いしながらうなづく。いや、うなづかれても、一体どういうことなのでしょうか?
「はぁ……。任せてと言われたから任せていたけど、いくらなんでも喧嘩を売りすぎだよ」
「そんなっ!? 私の何がいけなかったのですか!」
「兄上をリリア様に押し付けようとしている様に聞こえたよ。いや、普通はそう思うだろうね。兄上を好きでいるような物好きなんていない「そんな事はありません!」……君以外はね」
「……つまり、あなたは本気でアレなことが好きで、それが叶わないからせめてアレについての考え方をお姉様に教えようとしていたの?」
「そうです。殿下の魅力に気づいてもらえたらローズ様も考え方が変わるかなって」
いやいや、そもそもアレの魅力って何? それにお姉様の考え方が変わるのであれば、アレはそのままってこと!? この人、自分が何を言っているのかわかってない?
「驚いている所申し訳ないが、もっと驚くことがあるぞ」
「今でさえ頭が痛くなってきているのにさらに追い討ちをしますか。そうですか。お姉様になんて報告をしましょうか」
「その脅しは勘弁してほしいが、是非とも聞いて欲しい事なんだ」
「はぁ……。一体なんなんですか?」
「兄上の魅力についてだよ」
「……帰ります」
アインの言葉にクリスティーナは完全に興味を無くし、立ちあがろうとした所でアインに止められる。
「まぁ待ってほしい。ちゃんと聞いてくれ」
「聞いたところで顔がいいとかそんなんでしょ? 必要あり「そんな所どうでもいいのです!」……では何が?」
クリスティーナは適当に聞き流そうとしていたが、シシリアの強い否定に少し興味が出た。
「アウレウス様の良いところは、少しですら知性を感じないのに、無駄にプライドだけが高い所です! 何をやってもできないのに、できないのは人のせい。その癖に努力も何もしない最低な所です!」
「褒めてます?」
「褒めてます! だって上に立ちたいのに努力もせず、その能力もない。そんなダメ男。とっても可愛いじゃないですか!」
だめだ。この人話通じない人だった。ダメ男が良いなんて……どうしてそれをお姉様に押し付けようとしたの!? もしかして自分がアブノーマルだってわかっていない!?
「……という事で、兄上にお似合いなのは彼女しかいないから協力してくれないか?」
アレがもっとダメになる未来しか見えないのだけれど、私……私達にとっては実害も何もない。
私は大人しく元いた席に座り直した。
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