お茶会

「また会えて嬉しいわ」


 王妃様主催のお茶会。参加者はリリアだけでなく、王妃様の横にもう1人、同じ歳ぐらいの少年が居た。


「シャロン様、お久しぶりです」

「リリちゃんも元気そうで良かったわ」


 どこか寂しそうに笑う王妃様。手紙ではそんな素振りはなかったのに、お父様の言った通り本当は気にしてくれていたのでしょうか?


「紹介するわね。息子のアイン。貴方の1つ下かしら」

「はい。ティア……、クリスティーナからお名前は伺っています。クリスティーナと仲良くしていただいているみたいでありがとうございます」


 感謝を告げると、王妃様はアイン様を冷たく睨む。その視線を受けて勢いよく首を横に振るアイン様。 どうしたのでしょうか?


「コホンっ、ちなみに仲良くってどんな?」

「申し訳ありません、そこまでは……ですが、ドルン様と3人で楽しくやっているとだけ……。あっ! 最近は1人女の子も増え、とても仲良くやっていると言っていました」

「……! ゴホッゴホッ」

「大丈夫ですか!?」


 一旦落ち着くために紅茶を飲んでいたアインがリリアの言葉でむせ始める。リリアはクリスティーナの話を聞いているだけなので、その内容から普通の友人関係だと思っている。事実その通りなのだが、言い方とタイミングが嫌がらせのように悪かった。


「リリちゃん、少し待っていてちょうだいね。アイン、少し話があります。コチラに来なさい」

「……はい」


 王妃様に連れていかれるように、部屋の隅に押しやられるアイン様。その姿はシュンとしており、なんだか可愛らしく見える。


 入れてもらった紅茶をゆっくりと飲んでいると、半分くらいの所で2人が席に座る。


「ごめんなさい。招待したのに待たせてしまって」

「いいえ、紅茶もとても美味しいですし、それにアイン様の表情がコロコロと変わって大変面白かったです」


 アインにとっては好きな人の前で母親に叱られたり、同じ部屋にいる相手の事について話させられて恥ずかしかったりと複雑な気持ちであった。しかし、リリアの言葉ですぐさま気分が良くなる。


 そうして始終和やかに進んでいたお茶会も終わりを告げる事になる。


「どう言うつもりだ!」


 ノックもせずに扉を開け放つ乱入者……いえ侵入者、もといアレこと第一王子が我がもの顔で部屋に入って喚き散らす。


「追い出せ!」


 その言葉を発したのはアレではなくアイン様でした。突然そんなことを言われたアレは戸惑った顔をした後、私を睨めつけ……る前にアイン様が間に入り、アレの様子がまったく見えなくなる。


「……今日は来ては行けない、私はそう言いましたよね」

「母上まで……そうか、母上達もそいつに騙されているのですね。お前、いい加減にし「止めなさい!」……ろ……」

「……連れていきなさい」

「「はっ!」」


 アレの後ろから来た騎士が2名、アレを部屋から引き摺り出す。アレは王妃様に怒られたことで呆然としており、いつもよりも大人しかった。


「ごめんなさいね」

「……いえ」


 先程までの楽しい雰囲気は何処へ行ったのやら、部屋にな残ったのは重苦しい空気だけだった。

 いつまでも続くと思われたこの空気の中、シャロンが話し始める。


「今日呼んだのは貴方とまた話したかったのもあるけど、もう1つ重要な話があったの」

「……はい」

「さっきのを見たでしょ。あの子は国王になるつもりだけど、絶対に無理だと私は思ってる」

「…………」


 ではどうしてアレにまだ王位継承権を残しているのですか? 思わず言ってしまいそうになったのを必死に我慢する。


「あの子に王位継承権を残していたのは貴方があの子の婚約者だったから。婚約者のまま王位継承権を剥奪してしまえば、貴方にも影響が出てしまう」

「それは……ですが、先に婚約を白紙にしてもらえれば……」

「そう。初めからそうしていれば良かったの。それでも貴方の隣ならあの子も頑張れると、そう思ってしまった。それ以上に貴方との婚約の縁が切れれば、貴方はもう王族には近づかなかったでしょう?」

「そう……ですね。正直、白紙にして王位継承権が無くなれば、私に言い寄ってくるか、私のせいにしてくるのは目見えてますから。近づきはしなかったと思います」


 ですが、最初に言われる言葉は『お前のせいで』でしょうね。自分が悪いなんてこれっぽっちも思わない人でしょうから。

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