悪魔の楽器を持った天使は天上に唄う

肉級

前奏曲

 俺はその時まで神なんてモノの存在を信じていなかった。


 俺には、両親も、兄弟も、親族も、友人と呼べる存在も居なかった。

 

 あの頃の俺は、自分の才能のなさに絶望し、いじけていた。殻に閉じこもり、何も聞こうとはしていなかった。


 そんな時だ。あの人に出会ったのは。


 この奇跡が神様の思し召なのだとしたら、俺は、俺の残りの人生をこの人に、この人の音楽に捧げよう、そう思った。


 俺の、俺だけの巨匠マエストロに。

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