第7話 ヨムカク親子の日常①

◆百閒先生◆


――ある日のリビングにて


◆息子Y(以下Y)「おかん、百閒先生の『御馳走帖』知らん?」


◇母T(以下T)「え?知らんよ。っていうか、アンタがこの前、読みよったやろ」


◆Y「この前、読みよったのは『阿房列車』の方」


◇T「あれ、そっちやった? アンタが持っとると思っとったんやけど。わたしもまた『御馳走帖』読みたくなったけ、アンタに言おうと思いよったんよ」


◆Y「うん、今は『サラサーテの盤』を持ち歩きよるかな。 僕は百閒先生でいえば、幻想小説が一番好みやけど、無性に随筆集が読みたくなる時あるよね」


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百閒先生とは内田百閒のこと。

基本的に、わたしたち親子は本の共有はあまりしないのだが(ジャンルが微妙に違うというのもある)同じように好きな作家さんというのは、実は結構いる。

百閒先生も、そのうちの一人である。

わたしが好きなのは特に随筆集。『御馳走帖』は食事をテーマに書いたエッセイをまとめたもので、いつ読んでもお腹が空いてくる。


Yはエッセイも好きだけど、「件」「冥途」など幻想小説に惹かれるという。


そして、わたし達二人とも内田百閒という人の偏屈だけどユーモラスで憎めない人柄が好きなのだ。


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◆息子Y(以下Y)「そういえば百閒先生って夏目漱石に傾倒しとったの知っとる?」


◇母T(以下T)「そうそう、憧れの人、雲の上の人やったんやねぇ。漱石の机に憧れて、同じ寸法の机を作らせたり、着けていた前掛けを真似して着用してみたり。なんかスターに憧れるファン心理みたいで、わかるわぁ」


◆Y「漱石コレクター?とも言われる収集癖もあって漱石愛が凄かったみたい」


◇T「へぇ〜なんか親近感が増すわ〜」


◇◆◇


◇T「あのさぁ、内田百の筆名、故郷の百間川から取ったもので最初は「百」って表記しとったんやってよ」


◆Y「へぇー、それは知らんかった」


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「百(日)」が「百(月)」に変わった理由について百閒は語っていない。


ただ


「お日様とお月様と、どちらがえらいか。

それはお月様がえらいにきまっている。

お日様は明るい昼間に出ているのだから何でもない。

お月様は闇夜を照らして明るくしてくれる。

お月様が隠れたら、夜は真っ暗になってしまう」   


内田百閒 「摩阿陀十三年」


という発言をしている。


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◇T「改めて、我儘わがままで頑固で、だけど人としての可愛げを沢山もっていた愛すべき百閒先生に乾杯!」


◆Y「乾杯!」


(冷茶のグラスを合わせる親子二人)

(^_^)/□☆□\(^_^)

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