第2話 それぞれのヨム(母T*前編*)

 母Tつきのの読書のはじまりの記憶は、松谷みよ子の創作童話「まえがみ太郎」の本だ。

 このお話については以前にもエッセイで書いているけれど↓


「いつかこんな冬の終わりに」

 *火の鳥と手放すことの難しさ*

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054893600353/episodes/1177354054893641439


 三、四歳くらいだったかな。

 絵本ではなくて児童書で、最初は読んでもらっていたのだと思うけど、そのうち読んでもらうのがもどかしくて、うろ覚えの字を拾い読んでいくようになり。

 わからない文字はその都度、両親や祖母に聞いていた。

 この時に、うるさがらずに教えてくれたおかげで、本を読むことの楽しさを知ることができた気がする。


 ◇◇◇


 子ども時代に印象に残っている本を何冊か。


路傍ろぼうの石」山本有三  

 厳しい境遇のなかでも、ひたむきに生きる吾一少年の物語。(未完)


「白い牙」ジャック・ロンド

 白い牙と呼ばれた一頭の孤独な灰色オオカミの数奇な生涯。


 どちらも、その頃読んだ本は今、手元に無い。

 Amazonなどで探してみても装丁などがまったく違っているので、何となく手を出しかねて今に至る。


 この辺は亡き父の趣味が反映しているようにも思える。

 父は七人兄弟の末っ子で物心つく前に母親を亡くしていた。

 孤独を抱え、苦労を重ねながらも負けずに生きていくという物語に自身を重ねていたのかもしれない。


 ◇◇◇


 そしてここからは小学六年生で出会った本の話。

 その時クラスでは、担任の先生が誕生月に色々な文庫本を用意して一冊を選ばせ、プレゼントしてくださっていた。


 わたしが目を惹かれて選んだのがこの本。

「まぼろしの祭り」立原えりか

 掌編を集めた童話集だったけど、この出会いは衝撃的だった。


 なんて美しく儚い世界なんだろう。

 優しいけれど沁みいるように切ない。

 何度も何度も読み返し、夢中になった。

 これは角川文庫の立原えりか童話集Ⅱで、勿論すぐに「木馬がのった白い船」童話集Ⅰ、「青い羽のおもいで」童話集Ⅲ、「妖精たち」童話集Ⅳと揃えた。

(現在は絶版)

 それからも立原えりか先生の本をとにかく探して集め続けた。


 立原先生の作品はどれも好きだけど、この初期の作品集との出会いはわたしの宝物になった。


 今でもこの文庫本は手元に持っている。

 手擦てずれしてしまっているけれど、時々取り出しては、そうっと大切にページをめくる。


 ◇◇◇


 第3話 それぞれのヨム(母T*後編*)へ続く

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る