第9話 流石異世界人!

数分前の出来事。ランスの護衛役として、王国で女騎士を務めているアンナが居なくなった。探すためにランスとヴィーゼは、一緒に森の中を進む。緑鮮やかな森の中から、一つの冷気が空を舞っていた。


「…なんだあれ」

「あっちで何かあるのかしら…?」


二人は不信がり、冷気が舞っている場所へと、様子を見に行く。もしかしたら、誰かいるかもしれないと思って——。


♢♢♢


白い冷気が青空に舞う。それを見た俺とランスは一緒にそこへと足を運ばせる。もちろん、警戒は忘れない。なにがあるか分からない以上。そんな時、金属音が交わる音が聞こえた。

カキン!カキン!という音が。茂みの方からその様子を覗き込むと、あら不思議。甲冑を身に纏い、大剣を両手で持っている、女騎士さんがいるではありませんか。

その人を見た時、ランスの表情は変わる。そして、小さな声で、“アンナ”と、言っているのだ。

やはり、あの人はアンナさん。なぜ盗賊団の男二人と戦っているのかは、分からずじまいだが。


………流石は騎士。圧倒的な戦力差だ…。

とか思いつつ、茂みの方から覗いていると、アンナさんは今戦っている男と夢中なのか、後ろから迫っているもう一人の、ダガーナイフを片手に持っている奴は、ゆっくり忍ぶ。


大剣を持っている騎士に、ダガーナイフって…。

流石に武器の選択肢間違えているだろ。とは思うが、実際には言わない。


「………武器の選択肢、間違えてるのじゃないかしら」

(言っちゃダメ!!)


口に出ちゃうタイプなのか、ランスは隣でそう言った。おい、もうちょっと……ね?

今はどうでもいい…か。ひとまず、様子見と行こう。

ここでじゃじゃ馬の如く、飛び出したとしても、敵と判断されちゃあ、おしまい。なんせこっちには、王女様がいるからな。俺が怪しく見えてしまいそうだ。


(やっぱり、流石。惚れ惚れしちゃう)


女騎士さんであるアンナさんは、相当な腕前なのだろうと思った。王女様の護衛役に務まるなど、大変そうだ。

茂みからでもわかる、アンナさんの横顔。多分俺が、女子だった場合その横顔で惚れそう……。

……なんちゃって。


いや、それはどうでもいい。頭から消そう。アンナさん、未だに後ろにいるやつに気付いてなさそうだな。


「ね、ねぇ、あれ大丈夫なのかしら?」

「うーん、どうだろう」


2人でひそひそしながら、そう言う。大丈夫なのだろうか?少し心配してしまう。


「おりゃあああああ!!」

「……何!?」

(まずい!!)


急いで茂みから飛び出し、俺は魔法を放つ。手を前に出し、そこから魔法陣を展開をさせ、軽く詠唱を言い放つ。


「———『雷針ライトニング・ニードル』!!」


魔法陣から雷を纏い、ビリビリッ!となる小さな槍———針ような細いもの。それが男に向かって飛んでゆく。

その男の頬を掠り、男はその場で座り込んだ。

流石に、そう簡単に人を殺すことはできないからなぁ。

って言うか、あの針?があの人の顔に向かってたら、あの人下手したら死んでたかも!?危ねぇ…。流石に、人を殺すことは出来ないし。


「……君は」

「え!?あ…………」


やばい、すごい見られている…。


「アンナ!」

「……!お嬢様!」


ランスは茂みから飛び出し、アンナさんに飛びついた。アンナさんは甲冑を着たまま、ランスを抱き止めた。

なんだろう、泣いちゃいそうだ…。この涙脆さの俺に、そんなグッ!とくるシーンを見せられるなど…。泣いちゃうじゃねえか……。

……。

…………。

…………まぁ、それはほんの冗談。あんまし、涙はもろくないけど…。


「この野郎ぉおおおお!!」


呆気に取られていた、もう1人の盗賊団は、ダガーナイフより少し刃が長い剣を持って、襲いかかって来る。


「お嬢様は下がってください!!」

「………アンナ!」


アンナさんに叫ぶランスさんと、アンナさんは剣で1人の男と戦う。

援護射撃しとくか…?

いや、騎士なら大丈夫だろう……。


「おりゃあああ!!———『火炎放射ファイア・アロー!!』」

「ぐっ!」

「———『氷塊放射グラソン・アロー!!』」


放ってきたファイヤの矢を、俺は氷の矢で放つ。

援護射撃をしよう。


「邪魔すんじゃねぇ!!」


標的は俺にされ、俺は先程の雷の針をデカくさせ、槍と化する。

手を出し、俺は再び魔法陣を展開させ、多少変わった詠唱を放つ。


「———『迅雷槍サンダー・スピア!!』」


放たれた槍は男に直撃する。

あ、やば…。


「うぎゃぎゃぎゃきゃ!!」


ビリビリッ!と男の体全体を雷が回り、そんな悲痛な叫びを言い放った。


「フッ…」


と、少しかっこつけるが…。


(やばいやばいやばい!大丈夫?死なない?大丈夫!?本当に!?)


内心焦るのも仕方ない。うん、そう。仕方ないのだ。死んでしまったかと思ったが、そんなこと無かった。流石、異世界人。


♢♢♢


ランスはアンナさんと出会え、理由を問い詰めたのだ。大人しく吐いたアンナさんは、どうやらランスを守るために離れていたそう。盗賊団どもは地面に倒れ、伸び切っている。

うん、自業自得。


と、頷き俺はアンナさんからお礼を言われた。頭を下げられた俺は、少しこそばゆかったが、悪い気はしない。

そして、2人とは離れるかと思いや———。


『着いていくわ!』

『お嬢様!?』

『え、?』


突然ランスがそう言い、その場にいた俺とアンナさんは驚きの顔に満ちる。

次は王国へ行けるだろう…。


そしてどうやら、俺はランスから気に入られたらしい。悪い気はしない。なんせ友達だからね!

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