第8話 アニメにいたら推しになりそう!

「あの、アンナさんってどんな人なんですか?」

「アンナは正義感が強いの。昔から私を守ってくれていたわ」


森の中を歩きながら、俺はランスさんと話していた。小鳥が鳴く声が耳に入り、ここ辺りは小鳥たちの巣がある。

その為、小鳥の鳴き声が頻繁聞こえる。小鳥の鳴き声を聞いているランスさんの顔は、子供らしい笑顔を見せていた。

まるでキラキラしているエフェクトが、幻覚で見えるのようだ。

いや、それは末期…?


「…でも、どうしてアンナが居なくなったのかしら…?」

「うーん、何か理由がある、とかですかね?」

「でもそれだとしたら、なんで私に言わず……」

「あ、そっか」


納得してしまう。騎士なら守るべき相手から離れるだろうか?魔物とかに襲われてしまったら、元も子もない。


(そう言えば、ここあたりで果物があるって言ってたけど…。見たことないなぁ)


空を見ながらそう思っていると、再び水辺が現れる。キラキラっと太陽の光で輝いていた。


「わぁ、綺麗…。きちんと整理されているのかしら?」


俺も初めて見た。というか、ここが一体どこなのか分からなくなってきた。

ランスさんは水辺の近くへと行き、履いていたスカートの布を膝の裏へと挟み、両手で水を掬う。


「ここの水って飲めるのかしら?」

「喉乾いたんですよね?念のため、はい」

「え、でも貴女のじゃ? というより、私貴女の名前知らなかったわ」


俺は腰のベルトに付けていた、水袋をあげる。ここの水が綺麗なのかどうか分からない為、上げた。

と言うより、名前を言っていなかったなぁ…。

大事なことを忘れていた。


「あぁ、すみません。ヴィーゼと言います。ランスさん」

「ヴィーゼ…。いい名前じゃない。それと、私と貴女って同い年じゃないの?」


年齢に関して分からん。どう答えたらいいんだ…?

自分の年齢が分からない俺からしたら、なんと答えればいいのか迷う。

うーん、素直に言う?いや……。


「多分、そうだと思います?」


疑問系で答える。それしか方法がないと思う…。

すると、ランスさんは小さく笑った。そんな笑みに少しだけ、ほんの少しだけドキッとする。

なんだこれ、ほんとなんだこれ?アニメの世界にいたら、多分推しになってる。


「ふふっ、なんで疑問系? 同い年っぽいし、王女である権限で、タメ語でいいわ。ほら、ヴィーゼ?」


すごい小悪魔的な笑みだ。大丈夫、大丈夫…。

ふぅー、はぁー。………………よし。あんだけドキドキしていた心臓が落ち着いてきた。


「え、えぇと。ら、ランス?」

「そう」


ぬわぁあああ!推しになってたかもしれん!!

………。

………………。

………………………。

………………………………ふぅ。

落ち着けた。


「とにかく、早くアンナを見つけなきゃ…」

「そう、だね。どこにいるんだろう」


王女相手である為、タメ語は慣れない。


♢♢♢


ランスの護衛役、アンナはヴィーゼたちがいた場所から、だいぶ近い距離にて、盗賊団と剣を交えていた。金属音が鳴り響き、葛藤していた。


「くそ! こんなの聞いてねぇぞ!」

「お嬢様には近づけさせません!!」


威圧ある声で言い放つ。確実に盗賊団と距離を詰め、確実に剣を振り落とす。甲冑を着る分厚い鎧を確実に使いこなし、重たいであろう甲冑に遅れを取らない。


「くそ、これならどうだ!!

———『氷塊放射グラソン・アロー』!!」


魔法陣が展開され、氷から冷たい空気が放たれる。白いモヤを放つ氷塊は矢のように、アンナに襲いかかる。


「なんのこれ式!!」


両手に持っている大剣で、その氷塊を跳ね返す。跳ね返された氷塊は、空高くへと飛び立った。


「くそ、この王国騎士が!!」

「おりゃああああ!!!」


アンナの後ろには、もう一人の盗賊がいた。視界に隠れ、アンナはまるで気づいていないようだった。だが———、


「グェッ!」

「…………!?」


それを止めたのは———。

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