第7話 王国お嬢様

さて、どこへ行くかはもう既に決まった。まずは、ボーデンさん出身の地へ向かうこと。

これしかないだろう。

村からはっきりと見える、子供たちの一生懸命に働く仕事ぶり。

そして鳥や動物たちの、合唱のようにも聞こえる鳴き声。


ひとまず俺は、村長に言ったのち、早速旅立とうとしている。ボーデンさんから地図を渡され、それを頼りに行こうと思う。流石に魔物達を連れて行くわけにはいかないため、森に置いていこうとしている。村の子供達とは仲がいいと思っている。

子供は好きだし(まぁ、自分自身も子供のようなものだが)


「んじゃ、行ってきます」

「気をつけて行ってこい!」

「楯突くものは亡き者にせい!」

「この人たちは…。まぁ、ヴィーゼ!頑張れよ!」

「あ、うん…」


最後の最後まで物騒だ。

村の門を通り、ヴァレイ達に見えなくなるまで、必死に手を振る。寂しそうにこちらを見ているスライム達もいるが、意思疎通はバッチリできるため、大丈夫だと思う。


♢♢♢


森の中を歩き、多分一時間経過した。

この世界に来て、10年ぐらい。魔物使役できるようになったのは、スライム、ゴブリン、鳥の魔物、えーと、それから〜…。

やべ、わからなくなった。ともかく、たくさん増えた。と言うことにすればいいでしょ。


森を歩いていると、川が見えた。お世辞にも整理されているとは思えないほどの、道。でこぼこな道標はかなり歩きにくいと思っている。

先はどんどん進んでいくと———、


「えぇ、ナンデェ〜?」


何故だろう。誰がここに少女を捨てたのだろう。許せん!!

とまぁ、一旦落ち着こう。もしかしたら、自分の足で来た可能性もある。なら、この子が倒れている理由。

ハーフアップされた髪。

クリーミー色のような髪の色。

身なりはどこかのお嬢様だろうか?よくアニメとかで見る、綺麗な服。仮にお嬢様じゃなくとしても、どこかの令嬢では無いだろうか。

なら、どうしてお付きの人がいない?

痩せ細っているわけでもないし、太っているわけでもない。健康的な体型だ。

ツンツンしたら起きるだろうか?

一旦屈み、人差し指で肩をツンツンする。


「うぅーん……」

(よかった、生きてた)


少し不吉なことを考えていたが、なんとか生きていたのなら、ホッとする。


「お嬢さん、なんでこんな所に?」

「うぅん?貴女こそお嬢さんじゃない」


目を擦りながら、俺のほうへ言ってくる。ごもっともです。確かに俺もお嬢さん類に入るのだろう。

だがしかし。俺は中身は男。前世は男。

と言うわけだから、見た目が可愛らしい女の子だけであり、俺は実際は男。

(…とか言ったら、多分引かれるんだろうなぁ)


「そう言えば、アンナはどこ!?」

「…ん?どなた?」

「私の護衛騎士よ!どこへ行ったのかしら…?私を置いてどこかへいくはずなのに……」

(この人、やはり令嬢か何か?)


慌ててキョロキョロとする、その人物は寝ていた体勢から起き上がる。と、する所力が入らないのか、起き上がることができなかった。

同時にお腹の虫が聞こえてくる。


「…!?あ、いや。えぇ、と。別にお腹空いているとかじゃないからね?ただ、そう!疲れていただけよ!」

「あ、うん。そう言うことにしておくから、まずは何か食べよう?」

「そ、そうね…。と言うか、貴女。私を誰だと思ってるの?」


確かに、誰だと思っているのだろう。同い年の女の子?それとも、どこかの令嬢?

そう指差してくるその少女は、上から目線だった。仮に、王女様なのであれば、仰せのままに。だ。


「私は、近くの王国の姫君。ランスよ!」

(やっぱり王女様だったんだぁ……)


そう自信満々に言うが、沈黙が流れる。みるみると顔が真っ赤になり、つい笑ってしまった。


「ぷっ」

「な、何かしら?わ、私が王女であるからなの?」

「え、いや。ただ単になんで王女様がこんな所にいるのかなぁ、って」

「そ、それは……」


そう顔を背けるランスさんは小さな声で言った。聞こえないだろうと思っていたのか、話題をすり替えようとするが、俺はあえて言わないようにする。

(なるほど、この近くにその美味!な果物があるから…)


さっきの顔から真剣になる王女様は、再びそのアンナ、と言う護衛の人を探すべく森の奥へ入ろうとしたが、俺は止めた。


「そっちじゃないよ」

「…え?」

「だってそっちはさっき俺、じゃなくて。自分が来たもの」

「あら、そうなの?うーん……」


不安そうな顔をするランスさんは、どこかよそよそしい。人探し…。護衛騎士の人が守るべき対象から離れるだろうか。

いや、考えられない。倒れるぐらいまでの疲労。いや、多分お腹空いてだろうが。

ここは、探すのを手伝いますか。


「あの、ランスさん」

「え、なに?」

「自分も探すの手伝いますよ」

「え、でも…」


巻き込めるわけないと言う顔で、俺の顔をじっと見る。よく見ると、その緑色の瞳は綺麗だった。

と言うのは、今はどうでもいい。一人より二人。それが一番いいだろう。それに、この世界へ来て初めての友人だ。

村の人たちは、友人というより家族に近い。


俺が勝手に友人と思っているのだろうが、友達になれたらな。と思っている。


ランスさんと共に、俺は護衛騎士のアンナさんを探しにいくべく、再び森の中を進む———。

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