第6話 前世の後悔
あれから5年は経っていた。
早いなぁ、と実感しつつ、今日も魔法に明け暮れる。
差し掛かる夕焼けが、あの時の炎を思い出させられる。女の子を助けて、それで諦めて。
もう、身寄りは誰も居なかったし、両親も既に他界しているし。天涯孤独だし。
森に照らされる夕焼けを見ながら、俺はそう思った。決して、人生に後悔がないわけではない。多少はある。
小学生の頃、中学生の頃、高校の頃。
そして社会人となってから〜、どのくらい経ったっけ?
家に帰ったら、シーンとした部屋でただアニメをこよなく愛し、夕ご飯を食べるときも、寝る直前もアニメ、アニメ。
別に友達が居なかったわけじゃない。お互い、社会に出ればめっきり会える機会が無くなっただけ。
だけど、まさか死ぬとは思ってなかった。
今まで積み上げてきた全てが、全部。捨てられたかのような。そんな心残り。
「………いや、これは。自分が出した答え。異世界へ来て、お節介と言われるぐらい、他人のために手を伸ばしたい。それが、理由」
憧れていた、そんな主人公のように。俺は、なりたい。
♢♢♢
そんな日から一週間が経過する。俺は森だけでは限界を感じていた。
魔物の数は多いし、大半は俺の使役している
でも、やっぱりボーデンさんのところで、あのスパルタは受けたくない……。
ものすごく厳しいし。それはこの体型に慣れているのか、それとも社会でのあれこれに慣れてしまったのか…。
大人になれば、叱ってくれる人は上司か…。
まぁ、いいや。
よし、村から出よう。そうと決まれば、早速行動だ。
♢♢♢
実際、俺はどう思っているのか。両親が早くに他界してから、だいぶ時間が経つ。30歳の時に、両親が他界。その時はまだ、50代ぐらいだった気がする。20代の時に出会って、結婚。
俺が怪我したりしたら、厳しく接したり、ここまでするか!?って、言いたくなるほど。
だけど、いざ二人が亡くなってしまったら。それがどれだけ寂しいものなのか。何となくだけど分かった。
両親が亡くなってから、10年。
仕事に明け暮れていた俺は、寂しいとか。そんな気持ちはほとんど無かったと思う。
朝から仕事。夜まで仕事。帰ってきて自分の時間を使い、そして眠る。
そんな日々で疎かになっていたのかもしれない。こんな感情に疎くなったのは。
美味しい手料理。
頑固親父だったけど、俺のことを常に思っていて。
説教ばかりしていた、俺の母親も常に思っていて。
俺が社会に出た時は、仕送りなんかもしてくれて。
あはは、俺。馬鹿だなぁ…。
二人の愛情知らずに、反発ばっかしてたんだもん。
それは、親が亡くなってから、気付くんだな。親の愛情に———。
俺は森の中をかき分けるように歩き、そんな昔のことを再び考えていた。
どうする事もできない、そんな過去を、いつまでも振り返っていた。無駄だって分かってるし、戻る事もできないって分かってた。
だけど、抗えないこの感情を、どうコントロールしろと?と、言いたくなる。
(やっと、村が見えてきた。村長に言おう)
森を出て行くことは、禁じられていない。ただ、魔物を使役する時は、気をつけろ。と、言われるぐらいだろう。
ここは異世界。俺の目標はドラゴンを使役する事。
それが出来れば、殆どの魔物は使役可能だと目論みる。
仮に、ドラゴンを使役できたら、どうしよう。背中に乗る?移動手段?新たな子供?
まぁ、それは後で考えることにするか。
「村長〜!」
俺は門を潜り、早速村長の元へと足を運ばせる。村長はキレッキレだ。最初の頃の自分の感情を返してもらいたいほど。老人かなぁ、とイメージしていたが、まさか。現役バリバリのプロレスラーかと思うほどの、バッキバキの腹筋。ある意味、どうしてそうなったのか、詳しく聞きたい。
と、思ったが、この体では逆にキモくなる。うし、やめよう。
「どうした。ヴィーゼ」
「村を出たいです!」
「……理由としては?」
「力を蓄えたいです!」
「ほんとに出て行くのぉ!?」
村長は、ちょっとうざいんだよなぁ。
多少の嫌悪を抱きながら、言葉のキャッチボールを早める。
村長に言うと、いつもこうなるのだ。成長しない一族なはずなのに、何故かバッキバキの人物がいるし。ほんと、訳わからんな。
「ト・二・カ・ク!俺は……!じゃなくて、自分は外に出てもっと強くなりたいんです!!」
危ねぇ、危うく俺っ子になるところだった。
と言うのは、どうでもいいとして、そうはっきりと断言した。
「よし、分かった」
あれ、分かってくれた?
意外な反応に少し戸惑ってしまった。
「え、いいんですか?」
「もちろん。そうと言うのであれば、ワシは止めん」
そう威厳さを見せる村長。キャラブレブレだなぁとか思うが、そう言ってくれたことには、ありがたい。
村長からのオーケーも貰えて、次の日には準備をしたいところだった。
さて、最初はどこに行こう…?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます