第5話 巨体な魔物
俺が異世界に来て、ヴィーゼとなってから5年が軽く経過した。5年経っても幼女のままだ。魔法のことに関しても、普通に適性があり、どんどんと魔法を覚えていっている最中。
正直、最初は大変だった。あの、ボーデンさんは魔法を教えるのに関しては、ばりスパルタだった。何度挫けそうになったことか…。怒ると怖いし、説教オヤジを思い出してしまう。
竹刀持ってバーン!ってやるし。メンタルが崩壊しそうになったが、晴れて魔法を覚えることに成功!
今回も、森の方へ行って練習再開だ。
5年もあれば、魔物の子達とも仲良くなり、以外と愛着が湧いてきている。ゴブリンにスライム。鳥の魔物に…。友達がたくさん増えた気分だ。
森の奥へ奥へと行っていると、足元がおぼつかない。
何だ?巨人がきたような、ドシンドシンは。
それに、森も騒がしくなっているし…。
「マズイゴーレムダ」
5年も経てば、使役している魔物たちの言葉もわかるようになったのだが、ゴーレム?あの、ゴーレム?
だが、俺のイメージではこんな地鳴りがなるほどじゃ…。
「な、何だあれ!?」
俺が見たゴーレムは全く違う。あれは、ゴーレムじゃない。巨人以上だ。
だが、魔物だとすると、俺の魔法が効くんじゃないか?
手をバカでかい巨体に向け、自分自身の視界に目のマークが見えるような、形となる。本来なら、
ピカーン!
と、なるはずなのだが、反応なし。なぜだ。
何で反応しない!?ここで反応しなかったら、俺一巻の終わりじゃん!!
「どうやら、今のお前の力じゃ無理らしいぞ!!」
「………!?な、何でこんなところに!?」
俺が初めてこの世界に来た時に、俺の名前を呼んだ少年。名前は“ヴァレイ”
どうやら、鳥の力を借りてここに来たらしい。
そして、目の前にいる巨体は俺の力じゃ、太刀打ちできないとのこと。
ここは、撤退するしかないか…。
その間にも、巨体の足音がドシンドシンと、鳴っている。立つのが困難だ。
「ここは一旦逃げよう!」
「うん!」
後ろにいる相棒のスライムと、ゴブリンと一緒に逃げる。
スライムはポヨンポヨンと跳ねて逃げて、ゴブリンはなんかすごい、鳴き声で鳴いている。
「…………!?ヴァレイ!このままだったら、村が!」
「あ、しまった………!」
このままだったら、村のみんなが危ない。なら、方法は一つしかないものだ。
食い止めるしか、方法が!!
「ヴァレイ!村のみんなを任せた!!」
「………はぁ!?ヴィーゼは?!」
そんなの、言われなくたって分かってるんじゃねぇの?俺は、誰かのために。魔法を必死に覚えた。
アニメのような、主人公に憧れて!!
「『
手から放つ雷音。それは、まさに天気予報が悪くて、雷音のゴォーン!と言う音のように!!
ビリビリッ!とじゃなく、ゴォーン!!と言う音名が成り立つ。
巨体は訳の分からない日本語を放ち、真っ黒焦げになった。
何だろう。こんな事思っちゃいけないんだろうけど、ものすごく。呆気なかった……。
だけど、使役できない魔物もいるようだ。
安らかに眠れ。
軽く一礼をし、俺は巨体から去る。
「おい!後ろ!?」
「え!嘘!?」
どうやら、しぶとそうだ。だが、なんか張り合いを感じる!!タフすぎても困るけど、タフじゃなさすぎるのも、なんかねぇ。
慌てて後ろを振り向いたとしても、どうやら未だに戦えそうな感じを醸し出す。巨体の人。
人かどうかも分からんが、敵意を見せるのなら、木っ端微塵にする。
それが俺のエゴ!
と言うより、巨体の人って攻撃してきたっけ?
あれ?そう考えると、俺。喧嘩出した?だから、追いかけているのか!
あ、俺のせいじゃん……。
「のわぁ?!」
でかい腕を振り下ろすあたり、かなり怒ってそうだ。ごめん…。巨体の人。どうやら、俺がやってしまったようだ。
再び森の中を走る。かなり息が上がってきたが、追い付かれたら、死ぬ。
それはもちろん、避けたい話。なら、どうする?使役できるかどうかやってみないとあれだけど、このままって言うのもねー。さて、どうしますか。
「どうする!?ヴィーゼ?!」
「もう一回、放つ?」
「え、まぁ。それがいいだろう」
満場一致!と言うわけで早速行動!
「ドウスルンデスカ!?」
「まぁ、大丈夫大丈夫」
肩に乗っていた、スライムさんも心配そうな顔色となっていたが、大丈夫と言う理由でぷにぷにな頭を撫でる。
何という撫で心地!そして可愛い!やばい、親心が溢れているかもしれん…。
ゴブリンにスライムさんを任せ、俺は巨体に立ち向かう。
そう。俺が異世界でやる事。それは、主人公のようなカッコいいヒーローになる事!
まぁ、40歳、いい歳で何言ってんだ、って何度思ったが、昔からの夢を諦めることはできない。現代社会では普通に無理だったが、異世界ならそれが出来る。
「さて、やりますか」
「ニンゲン・タベル」
(怖っ)
突然喋り出したかと思えば、そんな不吉な事。というか、人間だったの?てっきり、別種族かと…。
いや、今はどうでもいい。とにかく、戦う。それしかない!
「ニンゲン・タベル」
だから怖いわ。
振り下ろされる、片腕。それを避け、転がる。
痛い…だけど。何というか、臨場感を感じる。学生の頃にやったあの身震いするような、そんな臨場感。初めてボスを相手した時のような、そんな感じがする。
「———『
魔法陣が展開され、氷塊の形が、矢のように発射される。だが、やはりタフだ。全然怯まない。
どうする………?こういう時、あのアニメの主人公ならどうする?逃げる?戦う?仲直りする?
いや、前後は論外。中間がそうだ。
ともかく、村の人たちを守るためなら。戦うしかない!
(どうしたら、倒せる?使役できたらなぁ…。ああ!駄目だ!同じことの繰り返し…)
やはり、色々と考えてしまうのは、癖なのだろう。こういう時、一体どうしたら!!
本来なら、始まりで出でこないだろう!あ、いや違うか。あれから5年は経っているのだから…。
なら、中ボス?そうか!だからか。だからあの時、魔物の数が多かったのか…。まぁ、今は小さい魔物だったら、使役できるけど。まだ大きいやつは無理だし。
「———
再び魔法陣が生成され、そこから炎槍が放たれる。だが、全然怯まない!あー、もう!どうなってんだ!!
全然弱いじゃないか!!
はぁ、もう。どうしたら良いんだ。攻撃魔法は全然聞かないし。
「………!?ぐっ!」
大きな腕は振り下ろされる。地面が凹んだような、痕が残る。ヒビが入ったような、そんな手型に。
………地面?
「そうだ!」
確か、土の中に魔物がいたはず。あの、体は最初は小さいが、土を蓄えることによって大きくなる、魔物!ダイダラボッチみたいに、最終的にはでかくなる!
「“ソイル”!出番だ!!」
“ソイル”…。
意味は土というまんまだが、土を蓄えて大きくなるのだから、名前には最適じゃないか?
「ご主人様~!!」
小さな穴が意図的に作られ、そこから小さな土の魔物が現れる。俺の肩に乗ってくるソイルは状況を理解すると、俺の肩から降り、土を吸い取る。
「やれ!ソイル!」
俺は手を前に出す。手の甲にある目のマークが光を放ち、それに共鳴するかのように、ソイルは巨大な相手に攻撃を放つ。
バコン!バコン!
と、言った音を出し、巨体と同等の体型になったソイルは、確実にダメージを与えているかのように見える。
流石はソイル!と言おうとした時、後ろからの視線がエグい。悪寒を感じた俺は、ソイルに大声で頑張れー!と声を出した。
「ゴシュジンサマノタメー!」
と、最初の見た目とは裏腹な、野太い声が発せられた。大きくなったんだから、仕方ないと俺自身に言い聞かせている。
♢♢♢
どうやら、倒せたようだ。
ソイル、お疲れ。俺、あんまし役に立ったなくね?
その後は、村の人たちが急行で来てくれて、この巨体でゴーレムのようなやつをどうするか決めていた。俺たちは、そのまま村の方へ帰る。その為、その後どうなったかは、知らない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます