第4話 森に住む民と魔法のこと
何故かゴブリンが後をついて来る。それはもう、ストーカー並みに。それが何故なのか。理由がわかれば苦労はしないが。
森は奥まで続いている。それはもう、奥の奥まで。そこをズンズンと進み、人が居そうな場所まで行く。
お?足音が聞こえる。もしかしたら、誰かいるかもしれない。
サッサッ、
と言う音が、耳に入ってきた。それが魔物なのか、人間なのかははっきりとは分からないが、もちろん警戒はした。
この異世界に来てから、数分、もしくは数十分。経ったと思うが、視界が慣れて来る。初めて作業してから、だいぶ時間が経つと、作業に慣れるのと同じ…だと思う。
こう言う時に、案内役か何かがいたら、もう少しは楽に行けると思うが、そんな都合の良いものは、ついていない様だった。
と言うより、この体。めちゃくちゃ体力ありまくっている。休まず結構歩いたのにも関わらず、全然息が切れない。身なり的には『森の民』の様な。そんな感じの格好だが、違うっぽそうだ。イメージとしては、弓矢を持ち、耳は長い。まさにエルフの様な格好を想像しているが、それとは真反対。
耳は長く無いし、弓矢を持っていない。どうやら、服だけだった。
と言うより、あの足音が聞こえてから、全く来ていない。もうそろそろ来て良い頃だが、気配が全くしない。
ゴブリンもうんともすんとも言わない状態で、俺の後ろにいる。少し気味が悪いが、離れようとしない。
偶然に現れたこの紋章が、手がかりになりそうだが、全くもって反応もしなくなった。一体何がどうなっているんだ?異世界なのに、魔法も使えないし。もしかして、ハズレスキルを拾うとか?
いやいや、そんなラノベみたいな……。いや、今の自分の状況ってこんな感じじゃん。
気づいた時には、もう既に遅し。
すると、何か見えてきた。それは、木々が門の様になっている形。
なんだろうか?とにかく行ってみよう。
デデーン!
といった感じで、迫力のありそうな門が存在していた。視界が低い為、大きく感じてしまう。
俺の前世での身長が、160センチくらいはあったが、それより全然低い。
いや、それは当たり前のような気がする。160センチの門が存在するとしたら、そこは———。
中へと入ると、村が存在していた。人に溢れかえっていたところ、ゴブリンの姿を見た人たちは、血相を変えて俺に聞いて来る。
「どこで拾った?」
と。拾ったも何も、ついてきた方が正しい。この目の前にいる男性がどなたか。存知あげないが、とにかくそう答えた。
そんな時、また男性の声が聞こえて来る。今度は、どうやら、笑顔が優しそうな笑みを浮かべている、背の高い男性。
「え、ええと、あっち」
門の方を指さす。そもそも、ここは一体どこなのだ。大人は、この男性しかいない。殆どが子供だ。子供だけの村なのか?いや、そんなはずない。生みの親がいるはずだ。
子供たちは熱心に働いている。俺の子供時代のような。わんぱくな子が多い。ある意味、働いていない子供なんて、いないんじゃないだろうか。
数軒の家と、木に設置されている、小さな家。小人とかが住んでそうだ。
「ん?おぉ!ヴィーゼ!帰ってたのか!」
ん?ヴィーゼ?
ヴィーゼとは、誰のことだろうか。後ろに誰かいるのか?いや、俺の後ろにはゴブリンしかいない。
なら……。
「どうしたんだよ?ヴィーゼ」
ヴィーゼとは、俺の事なのか!?
「も、もしかして…」
そう思い、俺は自分を指さす。すると、男の子は、
「何いってんだ?頭でも打ったか?」
と言ってくる。どうやら、ヴィーゼと言うのは俺の事らしい。俺、と言うより。この体の名前じゃないのか?俺の、来世の名前?そう言う認識でいいのか。
「あ、うん!そうなんだ!実はさ、頭を打ってどうやら記憶が飛んじゃったみたいで……」
自分の名前を知らなければ、男の子の名前など知らない。念のため聞かれた時に答えられないのは、不自然に思われる。
「まぁ、お前がドジるのはいつもの事だけど。多分そのうち戻るんじゃねぇか?」
と、背の高い男性は言う。どうやら、来世の俺。と言うより、ヴィーゼはドジな女の子らしい。
♢♢♢
この村はそのまま『森の村』と言うらしい。
ほんとにそのまんまだな…。
そしてこの『森の村』では、年齢を重ねたとしても、体は成長しなく、高い男性の名前は、“ボーデン”と言うらしい。
この人は王国出身の人らしく、人間だ。
そして、この『森の村』の民達は全員、昔から使役系の魔法を得意としており、存在するとしては、
と言うらしい。精霊なんかを使役することが出来ると言う噂は存在するらしいが、未だに実在はしていないと言う。
そしてその中で俺は、#魔物使役__モンスターテイマー__#だと。だからゴブリンが襲い掛からず、ずっと後ろをついてきているようだ。だが、テイマーの魔法を持っているこの森の民たちは全員、その使役している人物の言葉がわかるんだと。
だが、俺はどうしても。ゴブリンの言葉がわからずじまい。そして、手の甲に出現したこのマークはその印を示すと言うわけだった。
一応、別の魔法も扱えるらしいが、このヴィーゼは大の勉強嫌い。確かに俺も勉強は嫌いだったが、魔法ともなれば話は別。
と言うわけで、俺は魔法も覚えることにした——。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます