第3話 初の魔物

「ま、ままままま、魔物ぉおおおお!?」


大事な事を忘れていた。ここは異世界。なら、魔物の一匹や二匹はいるだろう。

ゲームの序盤で出てきそうなスライム。


ポヨンポヨン。


と、跳ねるスライムは怖くなさそうだ。と言うより、ちょっと可愛いと思ってしまう自分がいる。

もしかしたら、仲良くなれるとも思ってしまう。


「こんにちわ、スライムさん」


ポヨンポヨンと跳ねるスライムは、まるで挨拶を交わしているかの様だった。

そんな時、スライムの後ろから片手にバットを持った、ゴブリンがいた。

あ、俺終わったかも…。


次の行動に移そうと思ったのは、早い。

俺を獲物だと思っている、ゴブリンは俺の後ろを追いかけてくる。魔物同士なら問題ないと思った俺は、スライムを置いてきた。

大丈夫、魔物は魔物を食べない。


走って不確かな足取りで、森の中をひたすら走る。整備されていない森の中は、もの凄く走りにくい。と言うより、まだこの体が慣れていない様な。そんな気がした。

そして後ろから、威圧ある鳴き声と足取り。

そして目の前には———、


「———崖!?」


はい、終わった。

俺は再び死ぬのだろうか。後ろからは、確実に追い詰めたと思ったゴブリンが、余裕そうに笑みを浮かべている。なんだろうか、物凄い悔しい。

異世界になら、魔法の存在だってある筈…。

なら、何か適当に言えば、なるんじゃ無いだろうか?『火炎』とか、『水玉』とか。


(考えている暇はなさそうだ)


落ちて死ぬか…。

一か八かで倒すか…。

答えはもちろん———!


「———『火炎ファイヤ』!!」

「…………?」


………………………何これ、ものすごい恥ずかしい。


「嘘!?そんな簡単にできてない……?」


魔法は出なかった。ナンテコッタイ。

まずい、本格的にまずい。

ジリジリと攻めてくる、ゴブリンは分かっている。足を踏み外して、死んでしまうと。

くそ、どうする…。


♢♢♢


とうとう、攻められた。このままじゃ、再び死んでしまう。

再び魔法を放ってみる事にした。もしかしたら、変化が起きているかもしれないと。


「『火炎ファイヤ』!!」


無論、反応なし。

だが、諦めない。このまま、もう一度死んでたまるかと。

そう思うと、必死になれる。不思議なもんだ。


「『火炎放射ファイヤアロー』!!」


反応なし。なんだろうか。ゴブリンが物凄く、可哀想な目で見てくる。泣きたい気分。

もう諦めかけている時。ゴブリンが攻撃を仕掛けようとした時と、同タイミングだ。

俺は、もう無我夢中でゴブリンの振り下ろす手の方に、自分の手を伸ばす。そうすると、何故かゴブリンの反応が止まり。


「あ、あれ?」


どうしてか、襲ってこない。なんだろうか。もしかして、助っ人が!?

…と言うのは、どうもいない。そりゃあそうか。

という事は、どう言う事だ?

不思議なことが起こりすぎて、頭がパンクしそうだ。


「…ん?なんだこれ」


俺の手のひら…じゃ無いが、色白な手の甲に不思議な紋章が浮き上がっていた。これは、一体…?

そのマークは目の様なマーク。これがなんなのかは、異世界へ来たばかりの俺からしたら、何も分からない。なら、まずは人を探さなければならない様だ。


♢♢♢

だが、何故か。ゴブリンが後をついて来る———。

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