第22話「物書きと彼女」

新しくできたショッピングセンターに客を取られて、こっちは気息奄奄、近いうちに店じまいだよ。そんなことばかり言っている店主もいましたね。でもそれは、ちょっと違うんじゃないかな。「モール化」という手法で街を変えていくというなら、「新しいお店ができて嬉しい」「今までのお店が無くなって悲しい」というような、ポジティブなものであってほしいと思います。それがきっと、街と人にとって良いことだと思うからです。もちろん、そうではない例だってあります。それでも私はやっぱり、そういう風に思っていてもらいたい。その方が楽しいと思うのです。

『ボディビルと青春』では筋肉の美しさについて書かせていただいたけれど、あれは別に筋肉のことしか考えてないわけじゃないんですよ(笑)。私には夢があります。小説家になるということ。そしてもう一つは、いつか自分の小説を映画化すること。もし叶うならば、是非とも私の小説を使っていただきたいんです。そのためにも、たくさんの人に読んでいただける本を書きたいといつも思っています。

でも、ただ漠然と夢を追うだけでは駄目だということもよく分かっています。そのために何をすべきか? 今、私が一番必要だと思っていることは何なのか? それを見極めるためにも、日々いろんなことにアンテナを張っておきたいと思っています。

「人は一人で生きているわけではないし、一人きりでは生きていけない」ということは、よく言われることですよね。これは私が常日頃思っていることでもあって……だから私は、できるだけ人と関わりを持ちながら生きています。それは仕事上であったり、プライベートであったりするわけですけど、なるべく多くの人と接し、その人たちの良いところを吸収したり、逆に自分が吸収されたりしながら、お互いに高め合っていけたらいいなぁって思うんです。

さっきも言いましたけど、人はみんな違っていて当たり前だし、個性があるからこそ面白い。だからこそ、自分らしさを大切にしていきたいですよね。

これから先、世の中がどんどん変わっていく中で、私たちはどうなっていくんでしょうかね。例えば「便利になること」や「楽になること」が必ずしも幸せに繋がるとは限りません。むしろ不便だったり大変だったりすることが、人の心を豊かにするなんてこともあるかもしれない。それに、人間としての成長につながるようなこともたくさんあるはずです。そういったものをちゃんと見極めていかないと、人生はつまらないものになってしまうかもしれませんよ!

『片道きっぷ』を読んでくださった方の中には、「こんなことを言ったら怒られるかな……」と思いながらも、どうしても我慢できなくて口にしてしまうことがあるんじゃないでしょうか。私自身も、ついつい余計なことを口にしてしまったりします(苦笑)。たとえば電車の中で隣の人が咳き込んでいて、その音が非常にうるさいときなんかは、思わず文句を言いたくなってしまいますよね。でも、こういうときにグッと堪えて何も言わずにいることができるかどうかで、人間性というのは結構見えてくるものです。

まあ、中には本当に失礼なことを言う人もいますから、一概に言えませんけど……。でも私は、どんな時でも思いやりを忘れず、相手の立場に立って物事を考えていける人でありたいですね。そうすればきっと、社会全体がもっと優しい場所になると思うんです。

「この世で一番恐ろしいのは孤独である」という言葉を聞いたことがありますか? これ、すごく的を得ている言葉だと思いませんか? この言葉の意味する通り、私は誰かと一緒に過ごす時間よりも、一人で何かをしている時間の方に恐怖を感じてしまいます。一人の時間は寂しいものだから、その時間を楽しいものにしたいと思うのはもちろんなのですが、それがあまりにも長過ぎると、今度は退屈になってくるんですよね。結局、人間は一人でいることに耐えられない生き物なんだと思います。だからこそ、大切な人と一緒にいるときには、出来る限り楽しく過ごしたいじゃないですか。たとえ短い時間でもいいから、二人で一緒に過ごせる時間が欲しいですもんね。

詩という文字の世界が好きです。もともと本は好きだったのですが、活字を読むことに関しては苦手意識がありまして。学生時代は授業で国語の成績が良くなかったこともあり、どちらかといえば読書は敬遠していた方でした。でもある時、ふとしたキッカケがあって詩集を手に取ったことから、「本が好き!」「文章を書くことが大好き!」と思えるようになったんです。それからというもの、すっかり詩の魅力に取り憑かれちゃいました。今では毎日のように詩を書いています。

「詩人になりたい」なんて言うと、ちょっと大げさに聞こえるかもしれませんが、要は「言葉を紡ぐこと」が好きで好きでたまらないんです。だから小説だって書くし、エッセイだって書きたいし、絵本だって作ってみたいし、映画の脚本も書いてみたいし、舞台脚本も書いてみたいし、ラジオドラマもやってみたいなぁ~とか思っちゃうんです(笑)。

「小説を書きたい」「詩を書きたい」と思ったきっかけには、もちろん理由があるわけで。「なんとなく面白そうだな」という理由で始めてしまう人もいるでしょうけど、そういう気持ちでは続かないと思います。やはりそこには確固たる信念のようなものが必要ではないでしょうか。「私はこうありたい」「私はこうしたい」といった願望を叶える手段として、創作活動はあるのだと思っています。

そんな私にも彼女がいます。彼女は小説を書いている私の姿を見て「カッコイイ! 素敵だわ!!」と言ってくれるのですが……正直言って、あまりピンと来ていないようです。それどころか、彼女の方が断然上手に書けたりするんです。私は彼女に負けないように頑張っているつもりですし、実際、作品の質も上がっているように思うんです。でも、どうやら彼女の目から見ると、まだまだらしい。

「あなた、全然ダメねぇ」

「こんなのじゃ、恥ずかしくて人に読ませらんない」

「どうしてこんな風に書けるの?」

……なんて言われてばかり。なかなか難しいものです。やっぱり才能のある人には勝てないものなのでしょうか。

でも、私は諦めていませんよ!! いつかきっと、彼女より素敵な物書きになってみせますからねっ!!!

「人は一人で生きているわけではない」とはよく言われる言葉ですが、この言葉を実感させられる瞬間ってありますよね。それは例えば、友達が何か大変な問題を抱えていたときだったり、家族や恋人との喧嘩に疲れてしまった時だったり……いろんな場面で感じることができると思います。そして今、私がまさにそのような状況に陥っています。私の恋人は、とても優しい人で、いつもニコニコしているような人なのですが、実はものすごく繊細で傷つきやすい性格の持ち主。以前、彼の親友のことでトラブルが起きたことがあったのですが、その時はかなり深刻な状態で、一時は自殺まで考えてしまっていたほど。しかし、なんとか立ち直ってくれました。それ以来、彼は少しずつ強くなってきていると思うのですが……それでも、時々不安になることがあるようでして……。特に最近は、「また、あんな風になってしまったら……」と、ずっと悩んでいる様子なんです。

私も彼女も、お互いのことを信頼しています。だからこそ、相手のことを深く愛することができるんだと思います。でも、時には些細なすれ違いからケンカになってしまうこともあるわけで……。そんなとき、私は彼女に何ができるのか。彼女が何をして欲しいと思っているのか。それを必死に考えるようになりました。するとある時、ふと気付いたんです。私たちの関係は、常に一方通行なのだということに……。

「私はあなたの味方だよ」

「あなたを信じてる」

「私はいつでもそばにいるから」

「私はいつまでも待ってる」

そういった言葉を伝えることはできる。だけど、それ以上は何もできないんです。どんな言葉をかけてあげればいいか分からなくなってしまうんです。もちろん、お互いに分かり合える日が来ると信じています。でも、それまでは本当に孤独な戦いを強いられます。辛いけれど、それが現実なんだと思います。

この世で一番怖いものは孤独である。そう言ったのは誰でしたっけ? たしかニーチェさんだったと思うのですが……。確かにその通りかもしれません。誰かと一緒にいるときに感じる幸福感と、一人でいるときの恐怖は比べ物にならないくらい大きなものですからね。それに、自分の心が弱っているときは、他人の言葉さえ信じられなくなることもありますし……。とにかく、この世は一人きりで生きていくことが難しい世界なんだと思います。

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