第5話「笑って心開いたらあなたのこと好きになった」
ある人は言ったんだよ。「笑って心開いたらあなたのこと好きになった」って……。その人が私に告白してきたんだよね。もちろん断わったよ。だって、私には彼氏がいるからさ……。
だけど、「それでもいい!」って言われてね、なんか泣かれたんだよねぇ。私にはそれがすごく心に残っていてね、だから、私も笑顔を絶やさないようにしたいなって思うんだ。笑えば、人の気持ちは変わる。私と同じような経験をした人もいるかもしれないし、これからする人も出てくると思うけど、私が言いたいのは一つだけ。それは、「笑うときは思いっきり笑おう!」だね!
それからしばらく経って、また一人私の元にやってきた男の子がいた。名前は、鈴木翔くんというらしいんだけど、彼は私と同じで高校一年生なんだってさ!でもまあ、高校生っていうのは聞いてたからわかっていたんだけど、やっぱり、同じクラスじゃない人の名前を覚えていないもので……。だから、初めて会ったときに、名前を聞いて驚いた記憶があるなぁ~。それで、私は彼にこう言ってみたんだ。「君はどうしてこの学校に来たの?」って。そしたら、彼はなんて答えたか覚えている?なんと、「あなたに会いたかったんです!」って言われたんだよね。いやー、これにはびっくりしたよ。まさかこんなにもストレートに言われるとは思ってなかったからね。正直言うと嬉しかったけど、恥ずかしかったかな。そんなこと言われたら誰だって照れるもん。ただでさえ、恋愛経験がないっていうのにさ。まあ、そういうわけで、私たちは付き合うことになったんだよ。彼とはいろんなことを話したりしてるんだけど、なかなか面白い子でね、一緒にいるだけで楽しい気分になるんだ。だから、彼と一緒に過ごす時間は本当に楽しくて幸せだよ。彼の方はどう思っているのかわからないけれど、きっと同じように感じてくれてるんじゃないかな?そう信じたいよね。
でも、最近になって気になることがあってね……。それは、彼が他の女の子と話しているところをよく見かけるようになったんだ。しかも、その相手はみんな可愛い女子ばかり。最初は、私を嫉妬させようとしているのかと思ったんだけど、違うみたいだし……。じゃあ、何のためにそんなことするんだろうか? う~ん、謎が深まるばかりでよくわかんないや。もし、何か知っている人がいれば教えてほしいくらいだね。ちなみに、私もついこの間まで知らなかったんだけど、あの有名なカップルの片割れだったらしいよ。だから、私が知らないうちに有名になっていたんだろうね。まったく、有名人になったつもりはないんだけどなぁ。これならまだ無名の方がよかったかも……。知名度が上がるといろいろ大変そうだし……。特に恋愛面では……。
はぁ……、恋愛って難しいものなんだなぁ。誰か相談できる相手が欲しい……。できれば男の人で……。って、私の周りに男がいないから無理か……。それにしても、私の周りって女性しかいないような気がするんだけど……。まあ、今は気にしない方がいいよね。とりあえず、今度機会があれば彼に直接訊いてみようっと。
私はいつものように自分の席に座って本を読んでいた。すると、一人の男子生徒がこちらに向かって歩いてきたのだ。彼は、私の前で立ち止まるといきなり話しかけてきた。
「お前ってさ、好きな人とかいたりする?」
…………!?急に何を言っているんだこの男は!!確かに私の目の前にいる男子生徒はイケメンでモテそうな顔をしているが、突然すぎるぞ!もう少し前置きというものがあってもいいだろう!それなのに、なぜこんなにも唐突なのだ!普通ならば、「こんにちは」とか「お久しぶりです」とか言うものだろ!それを「好きな人いる?」だと?まずはその辺のことをちゃんと説明してから言ってほしいものだがな!だがしかし、ここで焦ってはいけない。こういうときは冷静に対応することが大切だ。ここは落ち着いて相手のペースに合わせるとしよう。
「ど、どうかしたんですか?」
私は少し引き気味になりながらも彼にそう尋ねた。
「実はさ、俺、今好きな人がいるんだよ。それでさ、お前に相談に乗ってもらいたいと思ってここに来たんだ」
「そ、そうですか……」
私はさらに困惑した。なぜならば、今の言い方ではまるで自分が告白されるみたいではないか。いや、告白されること自体は別に嫌ではないのだが、私にはもうすでに付き合っている人がいる。つまり、私は彼の恋を応援することはできない。これは困ったな……。どうにかして諦めてもらわないと……。
「あ、あの、申し訳ありませんが、私はあなたの気持ちに応えることができません。」
「え?なんで?」
「なんでって言われましても……」
この場に沈黙が流れた。そして、私はふとあることを思い出した。それは、「笑顔を絶やさないようにする!」ということだ。こんなことで悩んでいる場合ではなかった。笑えば人の気持ちが変わるということをすっかり忘れていた。私は彼にこう言った。
「ごめんなさい。私はあなたとお付き合いすることができません。だって、私はもうすでに付き合っている方がいるからです!」
「え?まじで?」
彼はとても驚いている様子だ。それもそのはず、私みたいな地味な子が彼氏持ちだということ自体がありえないことなのである。
「はい。私は嘘をつきたくなかったので本当のことを言うことにしました。」
「そっか……。なんか、ごめんな。変なこと訊いちまって。」
彼は悲しそうな表情を浮かべながらその場から離れていった。これでよかったのだろうか?という疑問はあるが、後悔はなかった。
その日の放課後、私の教室に一人の女子生徒がやってきた。彼女は、隣のクラスの高橋真由美さん。通称マユ。彼女とは中学の時から仲が良くて、高校に入ってからもよく二人で遊んでいたりする。今日も一緒に帰ろうと約束していたのだ。ちなみに、彼女のことは、下の名前で呼ぶことが多い。それは、彼女も同じで、お互いに呼び捨てで呼んでいる。
「あっ、やっと見つけた。ねえ、一緒に帰らない?」
「うん、もちろんだよ。ちょっと待っててね、すぐに準備するから。」
「わかった。じゃあ、先に校門に行ってるね。」
「了解。すぐに向かうよ。」
そう言って、私はカバンを持って廊下に出た。そして、階段を降りようとした時、ある男子生徒に声をかけられた。その男子生徒とは、同じクラスに在籍している山田裕也くんだった。彼はなぜか私に用事があるらしく、私を呼び止めたのだ。私に何か話があるのだろうか?
「なあ、ちょっといいか?話したいことがあるんだけど……。」
彼は真剣な眼差しで私を見つめている。おそらく大事な話があるのだろう。
「う、うん。いいけど……。」
「じゃあ、こっちに来てくれ。」
私は彼の後についていった。そこは誰もいない空き教室だった。まさかこんなところに連れ込まれるなんて……。これってかなりやばい状況じゃないのか……。もし、このまま襲われたりしたらどうしよう……。私はそんなことを考えながらも彼に付いて行った。
「あのさ、最近になって気づいたんだけど、俺って意外と嫉妬深い性格みたいだ。」
「へ?」
何の話をしているのかよくわからないが、どうやら彼は自分の嫉妬深さに気づいてしまったようだ。でも、それは当然のことだと思う。誰だって嫉妬することぐらいはあるはずだ。私も例外ではない。
「だからさ、最近になって思うようになったんだよ。俺はもっと自分を変えないといけないって。だから、これからは積極的に行動していくことにしたんだ。」
「そうなんだ。頑張ってね。」
「ああ、ありがとう。ところで、お前は好きな人とかいるのか?」
……!?急に何を言っているんだこの男は!さっきまであんなに真面目な顔してたと思ったら今度はこんな質問か!一体どういう意図があってこんなことを訊いているんだ!
「いや……特にはいないかな……。」
私は何となく嘘をついてしまった。
「そっか……。じゃあさ、今度遊園地に行くことになったらお前も一緒に行かないか?」
「え?どうして私なの?」
「いや、だってお前っていつも一人でいるじゃん?なんか寂しそうだなって思ってさ。それに、他の友達とかと行くよりお前と一緒の方が楽しめそうな気がしたんだよね。まあ、気が向いたらでいいからさ、考えてみてくれよ。」
「ちょっと待って!さっきのは嘘だったの!私には付き合っている人がいるの!」
「はあ?誰だよ?」
「鈴木翔っていう一年生……」
「そうか……」
残念そうにそう言うと、山田くんはその場を離れていった。私はほっとしていた。しかし、なぜだろうか……。少し胸の奥が痛むような感じがした。なぜなのかはよくわからない。ただ、この痛みだけはしばらく消えなかった。
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