第3話 リベンジ
それから、半年くらい過ぎた。もう、ビクトリアのことは完全に諦めていた。著名人のTwitterなんて、元々なりすましが多いのかもしれない。特にアダルト系は苦情を言いにくいだろうし、海外だから、やりたい放題だろう。クレジットカードの情報を盗まれなかっただけましだった。
「ネットで江田さんそっくりの人を見つけたよ」
夕飯の時に、同居人がふいに言い出した。
「え、どれ?」
「リンク送るから見てみて」
そう言って、アダルトサイトのリンクが送られて来た。俺のライブ動画がゲイのサイトにアップされていたそうだ。
「メガネとマスクで顔隠してるけど、声が江田さんだよね。この服、家で着てるし、部屋も三階だし」
「・・・」
「これ、いつ撮ったの?」
「半年前」
ジャパニーズ、ハンサム、アマチュアとタグ付けされていた。コメントも寄せられていて、「彼は誰?」「最高にホットだぜ!」「かわいい」「英語がたどたどしいのがいい」と書かれていた。しかも、2万回も再生されていた!しかも、最悪なことに俺は動画の中で「エド」と名乗ってしまっていた。
知ってる人が見たら、俺だと気が付くだろう・・・。俺は頭を抱えてしまった。
「リベンジポルノ?」
「そうじゃなくて、ライブチャットをやった時に隠し撮りされてたんだ・・・」
もし、誰かが「これ江田さんですか?」と、聞いて来たら違うと言えばいいけど、多分このまま流出し続けるんだろう。こういう場合はどこに文句を言えばいいんだろうか。取り敢えず、そのゲイサイトに削除を依頼してみたが、何の音沙汰もなかった。
他にも同じ女の声が入ってる動画が複数上がっていた。それこそ世界中の男たちが出ていた。白人、黒人、アジア系、ラテン系、アラブ、インド系。金を払ったのに、むしろ動画を取られている。どういうことだろうか。
『君、写真と全然違うね。詐欺師なの?』
と、笑いながら喋る白人男。
『金返せ!』と、怒鳴る太った白人男。
『ビクトリアだと思ったのに、ひどいよ』20くらいの若い白人男は本当にショックを受けている様子だった。
『随分太ったね』穏やかに笑う60くらいの、気のいい白人男性。
文句を言いながらもすぐに服を脱ぐ男たち・・・。
俺なんて大人しい方だった。
***
俺は懲りもせずに海外の大人向けサイトを閲覧しまくる。
するとあっけなく、10年も追い続けた、背中に十字架のタトゥーを背負ってる女を見つけた。ちょっと年を取ったビクトリアだった。偽物と違ってそんなに太っていないし、やっぱりきれいだった。
Twitterもやっていることがわかった。
でも、DMを送るのはやめておいた。もう懲りた。
偽物の方はもうアカウントを削除していたから、俺たちだけが半永久的に残るタトゥーを刻まれてしまった。俺は何か悪いことしただろうか?ライブチャットを利用する方が悪い?
他の男たちよりはましだと自分を慰める。
俺にできるのはそれだけ。
タトゥー 連喜 @toushikibu
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