Ⅱ - Ⅵ 国立図書館
アイリーとミラの元に、一通の手紙が届いた。
「アイリー、ミラ。元気にしているかしら。
私はまずまずと言ったところね。
二人もニュースで聞いたかもしれないけれど、今”タピオ”は”少年少女神隠し事件”で話題持ちきりだわ。行方不明になった子どもの中に、オリスもいたの!どれほど、私が悲しいかわかるでしょう。
でも、今の私にはどうすることもできないわ。大人が必死に捜索してくれているけれど、すでに1週間は経過したわ。
私は、ただ彼らの帰りを待つことしかできないのかしら。
どうか二人の知恵を、私に貸してください。」
読み終えた二人は、あの生意気な少年が行方不明になったことに驚きを隠せなかった。
「こんなことする人は、彼らしか考えられないわ!」
ミラが敵意剥き出しの表情で、はっきりとした発音で、その者の名を口にした。
「”悪”よ!それか、その影武者といったところかしら。それしか考えられないわ。」
「どうしてそう思うの?」
「行方不明と言われているけど、どう考えても誘拐されたとしか、考えられないもの。では、なぜ子どもが誘拐されたと思う?」
ミラはそういうと、一人推理し始めた。それは労働力ではなく、兵士育成だと述べた。10歳程度であれば、最低限の魔法の使い方を理解しており、土台が形成されている。加えて、未熟ゆえの純粋さを利用し、彼らを”悪”の兵士に仕立て上げると考えた。再び”
少し考えすぎではないかとアイリーは思ったが、彼女の推理には一理あると考えた。サファイアの瞳を伏せがちに、ミラはこう言った。
「でも、相手が”悪”だったとして、どう戦えばいいのかしら。私たちはまだ、魔法試験すら突破していない魔法使いなのよ。」
途方に暮れた彼女の顔を見たアイリーは、そこであることを閃いた。
「私たちにできることをすればいいのよ!ほら、まずは行動しましょう!」
二人は国立図書館へ向かった。国立図書館は、世界最大の図書館であり、蔵書数は数えきれないほどである。最近の著書だけでなく、伝記や過去の新聞など、あらゆる書物が揃っていた。所在地は五つの国が囲む中心に存在する”
”
”ホーラ”からの入国の場合、
「国立図書館は”
二人は感謝を述べると、ゲートを潜った。ゲートは10個あるが、係員は二人と少ない。
身分証として”宿るもの”をかざし、
アイリーは恐る恐るポートに立つと、あたりが白光した。気がつくと、別の場所に到着していた。
「ちゃんとワープできたようね。」
背筋よく現れたミラの横で、アイリーは慣れないワープに軽い酔いを起こした。「次からは、酔い止めを飲んだ方が良さそうね。」とミラはいい、水筒を渡した。アイリーは礼を述べて、水を飲む。すると落ち着いたので、二人はそのまま国立図書館へ向かった。
国立図書館の外観は、まるで「歴史的建造物」を想像させた。一般人が閲覧できるフロアだけでも、地上8階、地下3階まである。戸棚を挟む通路は広く、自然光が入るように、ドーム上の天井はガラス張りで、中心が吹き抜けになっている。
入ってすぐの場所に、館内の地図が設置されていた。二人はそれを確認し、「地理」と書かれた場所へ向かった。場所は5階だったため、エレベーターを利用した。
「図書の中には、貴重な資料もあるから、利用者は魔法が使えないようになっているのよ。」
魔法ですぐに資料を取り寄せられると思っていたアイリーはそれを聞いて落胆した。その姿を見てミラは「そういう制約を設けることで、成り立っているのよ。」と付け加えた。
「地理」ブースに到着すると、あまりの資料の多さにアイリー驚いた。この中から、必要なものを探すにはどうすれば良いのだろう。インフォメーションにいた司書に頼むべきだったかも、と彼女は考えたが、すぐにミラが資料を片手に戻ってきたので、その必要は無くなった。
「レイチェルやニュースから分かるように、子どもたちは”タピオ”の山脈へ向かったみたい。ならば、その山脈に手がかりがあるかもしれないわ。」
そのアイリーの推理の元、ミラは”タピオ”の地図を持ってきた。南北に分かれた地域の子どもを集める場所として、中心にそびえる山脈は絶好の場所であろう。しかし、山脈は非常に険しく、子どもや犯人が集合するには、都合が悪い。何か、抜け道があるはずだ。例えば、誰にも知られていない、秘密の通路や洞窟などが存在していたら・・・
「ミラ!見て、この記述。」
アイリーは、山脈について書かれた文章を読み上げた。
「昔、南北の人々が物々交換をするために使われた”必要の洞窟”は、山脈を200mほど登ったところに存在していた。これは、南北をつなぐ通り道であったが、他国との交流が盛んになった時期からは、使用されなくなった。ゆえに、現在はあまり知られていない。これを機に、南北間が悪化したのはいうまでもない。だって!」
それを聞いたミラは、地図から場所を特定した。
「”必要の洞窟”は、地図から見るとこの辺りね。きっと犯人は、双方の子どもたちをここに集めているのね。」
二人はこの地図を書き写し、レイチェルに送った。直接行くには手続きが必要であり、それは時間ロスになると判断したため、手紙として送ることにした。幸い”
二人は配送受付に向かい、早急便として手紙を渡した。その時発生した金銭はミラが建て替えたため、「後で半分出すね。」とアイリーは囁いた。
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