Ⅰ - Ⅸ ビジネスとプライベート

「よく来てくれたな。」


アイリーとレイチェル、ミラが談話室に入ると、エルベアドが紅茶を用意して出迎えてくれた。扉の向こうには、アインハードが守備している。


彼女らは恐る恐る着席した。


アイリーとレイチェルは、豪華すぎる椅子や食器類を目の当たりにしそわそわした。これが、ヒンデンブルク家の屋敷ではなく、聖者の屋敷だということが恐ろしい。彼の家はどれくらい豪華なものなのだろう。

その2人を横に、上品に紅茶を啜るミラが、いつも以上に輝いて見えた。


「アイヒベルガー校長から既に聞いていると思うが、君たち3人はいずれ蘇る“悪”と戦わなければならない。」


重い空気が漂った。

しかしブロンドの髪をなびかせて、青年は微笑みを浮かべた。


「大丈夫。何も君たちだけを戦場に出したりはしない。我々も共に戦うのだよ。」


アイリーは言葉以上の安心感を感じた。

これは聖者としての貫禄からか、それとも彼自身からだろうか。


話は変わり、学校生活について聞かれた。

ミラは授業が簡単すぎると愚痴を漏らし、レイチェルは学食が美味しいと答えた。


アイリーは魔法発動に苦戦していたことを伝えると、エルベアドは薄い緑色の瞳を細めて微笑んだ。


(神々しい。この人は、生まれながらにして聖者としての、何かをお持ちなのだわ。)


ミラはそう思って感心した。


「実は、君たちにこういう話を聞くのは訳があってね。」


青年が紅茶を一口啜ると、話を進めた。


「近いうちに、聖者の集まりがあるのさ。自分の国の現状報告というやつでね。そこで君たち候補生の成長についても報告をしなければいけないのだよ。」


これまでのお喋りが業務だったということを告白し、申し訳なさそうな顔をした。


「ただ、今まで仕事の話。今からは私用プライベートの話をしようか。」


そういう時エルベアドは執事を呼んで、紅茶のおかわりを頼んだ。

もちろん少女たちの分まで。


「あと、デザートを取ってきてくれないか?お嬢さんたちは、甘いものが好きだろう。」


3人は笑顔で互いを見合った。

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