Ⅰ - Ⅴ 寮の門限

 3人は何とか門限に間に合ったが、寮長カミーユ・ド・プロヴァンスに叱責された。


「入学早々、門限ギリギリに帰ってくるなんて。まだヘイムダル生としての自覚がないようね。」


3人がうなだれていると、副寮長ニナ・プランタジネットが仲裁に入った。


「まぁ寮長、そこまで怒らなくても。3人とも悪気があったわけではないのだから。」


そもそも門限破りをしたわけではなく、門限ギリギリに帰ってきたのだから良いではないか、とニナは付け加えた。


「ニナの言う通りね。よろしい、お部屋へお戻りなさい。」


解放された3人はそそくさと部屋に戻った。

3人がロビーを離れたことを確認すると、カミーユはニナに囁いた。


「あの3人が時期王候補生という噂。あなたは知っているかしら。」

「はい、小耳に挟んでいますわ。」



カミーユは天才と呼ばれ、その才能から自力で上位階級に昇格した少女である。現在はその才能をより評価され、校長自ら寮長のひとりに推薦された。

そんな彼女だが、欠点がある。人を覚えることができないところだ。というよりもだけなのだが、そういう態度は周りから反感を受ける。

その欠点を埋める存在が、ニナである。


ニナ自身は成績も容姿も真ん中くらいだが、人当たりが良く、周りからよく好かれていた。

そのためカミーユと相手の仲裁役になっていた。


2人は一年の時にたまたま同じ寮室だったため、自然と仲良くなり、カミーユが寮長になることが決まった時点で、彼女自らがニナを副寮長に推薦した。



「入学早々あれだと、先が思いやられるわ。」

「えぇ。」



 部屋に戻ったアイリーたちは寝る支度をした。各自でシャワーを浴び、明日の授業準備をしてベッドに横になる。


ただアイリーはすぐに眠ることはできなかった。

明日からまた魔法の勉強をしなければならない。ただ、どうしたら魔法が使えるようになるのか。結局その答えは思いつかず、とにかく今は寝ることに集中しようと切り替えようとした。


しかしその努力は虚しく、ほとんど寝付けぬまま次の日を迎えることになった。

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