Ⅱ - Ⅴ ヘイムダル魔法学校
アイリーはアインハードに教えてもらった通り、教室へ向かった。その教室は、20人程が一緒に授業を受けることのできる広さがある。
先ほどの秘密の地下室でのことがあったので、途中から教室に入ることになってしまった。
後ろから扉をそっと開け、空いている席に座った。その席は三人掛けになっており、運良くレイチェルとミラが座っていた。
「ねぇ、アイリー。あの後何があったの?」
レイチェルが小声で聞いてきたが、先ほどのことは内密にするよう忠告されていたため、「魔法使いについて、簡単な指導を受けていた。」と答えた。
「どんな指導を受けてきたの?」
レイチェルが興味津々に問いただす横で、ミラは呆れていた。「王になる自覚はあるのかしら。」とでも言いたげに、2人を見ていた。
「遅刻するということはあらかじめ聞いていますが、入学初日からひそひそ話などはいかがなものでしょう、ミス・シュトライヒ。それと、ミス・フリンツァーも。」
気がつけば、彼女たちのすぐ横に教師が立っていた。彼女の名は、メレンドルフという。全身黒いローブを纏い、黒と白の混じり合った短い髪型、黒い瞳を持つ。まるで御伽噺の魔女のような風貌だ。
アイリーたちが素直に謝ると、メレンドルフはそのまま教壇に戻った。
「ここにいる者たちは、これから共に学ぶ仲間たちです。協力し、時には切磋琢磨して、このヘイムダル魔法学校で、一人前の魔法使いを目指すように。」
話が終わると、今度は大ホールで式典が行われるので、生徒たちは移動を始めた。
「メレンドルフ先生の話し方だと、どうやら私たち3人が時期王候補者ということを知らないようね。」
ミラがそう言った。それを聞きレイチェルが「みんなには内緒っていうことよね。なんか寂しい。」と言って俯いた。
しかしそれにはお構いなしに、ミラは時期王になるために、様々な魔法を身につけなければいけないだとか、歴史を学ばなばならないなど、どんどん話を進めた。
「特にアイリーはこっちの世界について、一から学ばなばならないから、相当大変かもね。」
アイリーもその通りだと思った。この2人よりも、学ばねばならないことは山ほどある。大変なのはこれからだ。
大ホールについた。ここには、アイリーたち新入生の他に、彼らの保護者や在校生がいた。在校生の代表が挨拶を済ますと、先ほど会ったばかりの校長と2人の聖者が現れた。
すると周りが騒がしくなったので、アイリーはその理由をレイチェルに聞いた。
「この歓声は聖者に向けてのものだと思う。」
その返事を聞き、そういえば聖者が何なのか知らなかったので尋ねたところ、“国を守護する選ばれし者”だという。詳しい役目はレイチェルもよく知らないという。
「国によっても聖者のやることって違うみたいだし…」
そして、なぜこのような歓声が上がったのかというと、聖者が表舞台に出ることは少ないからだった。
また、それに加えて彼ら2人の男性の端正な顔立ちに、騒ぎ立てた女子が多かったという。
「アイリーってあんまり異性に興味ない感じ?」
レイチェルにそう言われたので、アイリーはまじまじと聖者を見た。エルベアドは端正な顔立ちだけでなく、瞳や髪の色、立ち振る舞いにおいても、周りとは異なる偉大さを感じさせた。アインハードは無表情だが、騎士の名がふさわしいたくましさを感じた。
そして、たまたまアインハードの腕が目に入った。先ほどの秘密の地下で、その腕に触れたことを思い出し、アイリーは再び赤面した。
「あら、アイリーもなんだかんだ面食いなのね。」
とミラがいうと、レイチェルと一緒にクスクス笑った。
「君たちは晴れて、このヘイムダル魔法学校に入学した。この学校の教育目標は“共闘尊育”である。この意味、想像つくだろうか。つまり、一人前の魔法使いになるために、時には協力し、時には戦い、互いを尊重しながら切磋琢磨してほしいということだ。」
校長の話は思いのほか早く終わった。
しかしその後の、来賓者の話は長く、退屈するような内容だった。
アイリーは横を向くと、たまたま横にいた少年が寝ていた。無理もないだろう。
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