Ⅱ - Ⅲ ミラ
やがてふたりは、一つの大きな開き扉の前に到着した。扉は高さは8メートルもある。
ここが校長室である。
扉を開ける呪文がわからなかった2人は、それぞれドアノブを掴んで、思い切り押した。一見重そうな扉であったが、思いの外簡単に開いた。
校長室には、1番奥に2メートルほどの長テーブルがあり、そこに1人の男性が座っていた。
顔にはシワがあり、白髪も目立つ。
それほど歳はとっていなさそうな容姿だが、年齢以上の貫禄を感じた。
そして、そのテーブルの前にはなんと、先ほど人混みで出会った、青いワンピースの少女がいたのだ。
「あなた、さっきの…」
「うそ!さっきのあなたも候補者だったの!」
アイリーとその少女は、眼を丸くした。
その様子を見て、レイチェルは「知り合いなの?」と声をかけたが、2人は先ほどたまたま出会っただけだと説明した。
「時期王候補者の3人が集まったな。さぁ、そこの2人も隅っこに立っていないで、彼女の横に来るが良い。」
そう言われると、アイリーとレイチェルは、言われた通りに、もうひとりの少女の横に立った。
「私はこの“ヘイムダル魔法学校”校長のガーラン・アイヒベルガー。よろしく。」
そういうと校長は席を立ち、3人と握手をした。
「では、3人とも自己紹介をしてくれたまえ。」
すると、青いワンピースの少女が初めに自己紹介をした。
「私はミラ・フォン・ヴァルモーデン。よろしく。」
そういうとミラは、アイリーとレイチェルと握手をした。
ミラは純潔貴族ヴァルモーデン家の長女であると、校長は付け加えた。通りでとても気品のある人だったんだわ、とアイリーは思った。
「私はレイチェル・フリンツァー。“タピオ”から来ました。よろしくね。」
人間と魔法使いの子どもであることも話した。それを聞いてミラは驚いていた。その様子を見て、アイリーは人間ってそんなに驚くものなのかな?と疑問に思った。
「私はアイリー・シュトライヒです。その…人間です。」
「人間ですって!」
先ほどのレイチェルへのリアクションとは比較にならないほど、ミラは驚いていた。
「まさか候補者に人間がいるなんて…信じられないわ。」
ミラがそう呟くと、アイリーは落ち込んだ。しかしその後、ふつふつと怒りが込み上げてきた。
(人間ってだけでそんなにいけないわけ?)
思わず攻撃的な言葉が出そうになったが、ミラがすぐに謝った。
「ごめんなさい。少し驚いてしまっただけなの。気を悪くされたなら、申し訳ないわ。」
「え!純潔貴族が謝った!?」
ミラよりも無礼な態度を取ったのはレイチェルだった。
「私、噂で聞いてたけど、“ホーラ”の貴族って、血筋とかすごく気にするんでしょ?だから人間って結構嫌がられるのかと思って…」
実はレイチェルも、自分が人間との子どもということを言うのは躊躇っていた。理由は、この国の“純潔派”の話を予習してきていたので、何か嫌がらせを受けたら嫌だと思っていたのだ。
「そんなことをするのは一部の過激派だけよ。馬鹿馬鹿しいわ。」
そう言ってミラはそっぽを向いた。少し声を荒げて答えた様子を見て、アイリーは誰か心当たりがあるのか?と思った。
そんな感じで3人はお互いについて話し始めた時、後ろの扉が開いた。
「やっと来たか。聖者よ。」
ギギィという音を立てて扉が開くと、2人の青年が立っていた。
ひとりは身長180センチ以上の長身で、白色に近いブロンドの長い髪を、藍色のリボンで一つに束ねている。服装はいかにも貴族というべき正装をしている。瞳は珍しい薄い緑色であり、透き通る美しさだ。その瞳や容姿から、貴族特有の気高さを感じる。
もうひとりは180センチ近い背丈で、全身は
2人は校長の元まで近づくと、振り返り3人と顔を合わせた。
「初めまして。私は“ホーラ”の聖者のひとり、エルベアド・フォン・ヒンデンブルクだ。」
ブロンドの髪をなびかせながら、そう言った。
「隣にいるのは、同じく聖者のアインハードだ。私たちヒンデンブルク家直属の騎士だ。」
そう紹介され、隣の青年は一礼をしながら
「アインハード・フォン・ロイスだ。」
そう答えた。
自己紹介が終わると、校長とエルベアドが目配せをして、エルベアドから時期王候補についての説明が行われた。
この世界の王の任期は60年である。今の王はあと5年ほどで任期を終える。そこで、時期王を予言したところ、ミラ、レイチェルそしてアイリーの3名が候補に挙げられた。
3人は魔法学校で一人前の魔法使いになり、1番中優秀だった人を王として迎え入れるとのことだ。
「ただし、候補生だからといって手加減はしない。他の生徒と同じように学校で学び、試験を受けて卒業してもらう。」
エルベアドのその台詞を聞き、3人は思わず背筋を伸ばした。これから3人は仲間であり、良きライバルになる。
これらの説明が終わると、ミラとレイチェルは教室に向かうように指示が出た。場所はエルベアドが説明してくれたので、2人はそそくさと校長室を出て行った。
アイリーも後を追いかけようとすると、校長に呼び止められた。
「アイリーは、アインハードについて行ってくれ。」
校長がそう言うと、アインハードは彼女の方を見ずに歩き出したので、アイリーは慌てて追いかけた。
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