第7話 どうして?
頭が痛い。痛くて痛くて堪らない。頭が煩い。煩くてうるさくて堪らない。どうして? なぜ今なの? もう少しで外に出られるタイミングで。どうして?
痛み、そして煩さ。エレベーターの稼働音を塗り潰すぐらいのモスキートーンが私の頭の中で鳴り響く。
痛い。煩い。その二文字だけが私の脳内を犯していく。
ついに私は崩れ落ちた。頭が痛くて耐えられなかった。全身の感覚を見失った。ないわけじゃない。そこにある。でも分からない。人混みでは特定の人を見つけるのが難しいように。私は分からなかった。それとも脳がそれを拒んだ? 分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。
痛みは増すばかり。煩さもそう。止まることを知らない? 限度を知らない? いつまでこれは続くの? どうして私はこんな思いをしなくちゃいけないの? これは誰が私に課したものなの? なぜ私は外に出てはいけないの? 私はいつまでも地下にいるべきだったの? 誰がそんなことを決めたの?
痛みと煩さに無意味に抗う。エレベーターは無慈悲にも上階へ向かう。
いや、無慈悲って、どうして? 私はなぜそう思ったの?
そしてその度に頭痛の轟音は大きくなっている。気がするじゃない。確実にそうなっている。頭が破裂しそうだ。でもそんなことはない。実際に頭に変化が起きているわけではない。それはあくまでも心の方。ストレスとか、その類。
もしくは、自衛?
エレベーターが上階に到着したことを知らせる音を発した。私の脳は、それを何とか聞けたらしい。視界さえジャックされた。でも玄関を視認することは成功した。
痛みも、煩さも止まらない。けど外に出ればなくなるはず。自分が今どんな体制なのかも分からない。でも普通に歩いているわけでも、ましてや走っているわけでもなかった。ならば、こんなにも遅いわけがない。ゆっくりと、しかし着実に私は外に向かっている。日光が見える。光が、すぐそこにある。暗闇に慣れていた瞳にはそれは強すぎた。けれどそれ以上に外に出られることが嬉しい。楽しみだ。あらゆる苦痛から開放されるその瞬間を、今か今かと私は待ち続けている。
それは永遠にさえ思えたけど、また、一瞬にも思えた。ああ、記憶が欠落しているんだ。短期的な記憶能力さえ奪うほど、激痛と騒々しさは強大であったらしい。でも、今やそんなことどうでも良い。
外に出た。
さっきまであったあらゆる苦痛が、嘘だったかのように引いていった。それはまるで、もうこれ以上は無意味だと、世界から諦められたようだった。
私は自由になった。そう、私は外に脱出できた。目の前の光景を見て、私はそれを。それを。それを。それを。それを。それを。それを。それを──。
「⋯⋯どうして?」
私は、そう口にした。それ以外、口にせざるを得なかった。
同時、私は大部分の記憶を取り戻した。⋯⋯ああ、そうか。私は、間違ってなんかいなかった。でも、それはそれ以上、どうしようもない。私はこれをなんとかできない。少なくとも、すぐには。愚直にする他ない。どちらにせよ、私が求めるものは、どうやら今回手に入れられなかった。それが得られた。
そこに答えなんてない。終わりなんて見えない。あるのかどうかすら、分からない。でも、私は歩み続けなくてはならない。
⋯⋯何度、私はこう思った? 嫌だ。
どうして私はこんなことをしている?
どうして私はこんなことになっている?
どうして私はこうならなければならなかった?
どうして誰も私を救ってくれない?
どうして世界はこんなにも無慈悲なの?
どうして私はこんなことをしている?
どうして私はこんなことになっている?
どうして私はこうならなければならなかった?
どうして誰も私を救ってくれない?
どうして世界はこんなにも無慈悲なの?
どうして私はこんなことをしている?
どうして私はこんなことになっている?
どうして私はこうならなければならなかった?
どうして誰も私を救ってくれない?
どうして世界はこんなにも無慈悲なの?
どうして私はこんなことをしている?
どうして私はこんなことになっている?
どうして私はこうならなければならなかった?
どうして誰も私を救ってくれない?
どうして世界はこんなにも無慈悲なの?
どうして私はこんなことをしている?
どうして私はこんなことになっている?
どうして私はこうならなければならなかった?
どうして誰も私を救ってくれない?
どうして世界はこんなにも無慈悲なの?
どうして私はこんなことをしている?
どうして私はこんなことになっている?
どうして私はこうならなければならなかった?
どうして誰も私を救ってくれない?
どうして世界はこんなにも無慈悲なの?
どうして私はこんなことをしている?
どうして私はこんなことになっている?
どうして私はこうならなければならなかった?
どうして誰も私を救ってくれない?
どうして世界はこんなにも無慈悲なの?
どうして私はこんなことをしている?
どうして私はこんなことになっている?
どうして私はこうならなければならなかった?
どうして誰も私を救ってくれない?
どうして世界はこんなにも無慈悲なの?
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