木とそれ以外、あるいは機械工学 6
日陰に咲くひまわり、急転直下の戦闘機、透明なキリギリスと、それを囲う反政府組織の群れは、しばらく閉ざされた赤門を食い破るほど、期待に満ち溢れていた。すべからく愛を捧げるべきであり、舗装された道路を浮かび上がらせるほど、光速は一筋の希望だったのだが、それも今や昔の話だ。
困窮する我が子を谷に突き落とす。それだけが親の役目であり、すなわち、親に役目など存在しないのだ。夢を乗せた銀河鉄道は、巡回セールスマン問題の最適解を、あっという間に算出すると、光速を超えた高速で、宇宙を走り回った。
干からびた荒野は、誰の助けも無しに、緑あふれる世界に姿を変えてみせた。近くに恒星があったこともその一因であろう。意味の無い文章の連なりが、あらゆる事象を捉えて、この世界に具現化させる。知らず知らずのうちに、私たちは役割を担っているのだ。約束された大地、約束された勝利、約束された破滅、その他諸々を背負って、私たちは生きていくのだろう。
少女はリュックサックに荷物を詰め込み始めた。三日分の加工食品、三日分の着替え、いくつかの本、音楽プレイヤー、必要な物も、必要では無い物も、たくさん詰め込んだ。
少女がパンパンに膨らんだリュックサックを見ながら、言った。
「これだけあれば十分かしら?」
私は頷いた。
「それだけあれば十分だよ。世界の果てまででも旅ができる」
少女は目を輝かせると、続けて言った。
「山登りなんて初めてだから、いろいろ心配になっちゃうわ。だけどね、私、ワクワクしてるの。初めてのことに挑戦できるって、とても素晴らしいことだから。そうは思わない?」
私はまた頷いた。
「思うよ。新しいことっていうのは、とても素晴らしいことだ。今までに感じたことのない体験ができるからね。それに山は良いところだ。神聖な空気が漂っている」
「山に登ったことがあるの?」
「あるよ。何度もね」
私と少女は、それぞれリュックサックを背負うと、家を出た。山のふもとに到着したのは、それから二十分後のことだった。見上げてみても、雲に隠れて山頂を確認できない。
少女は山を見て言った。
「こんなに大きいものが、なぜ存在しているのかしら?」
私は答えた。
「それが自然の力というものだよ。人類には決して超えられない壁だ」
それから、私と少女は二日間かけて、山を登った。山頂の空気は言葉では表せないほど美しく、穏やかだった。私たちはなぜ山に登るのだろう。私たちはなぜ山に魅了されてしまうのだろう。その答えを探していた。
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