同好会の活動
三
「ところで、『学校同好会』では何をするのでしょうか」
学校同好会。それは遠野さんが廃部寸前の社会奉仕部を隠れ
棚の中にファイルを戻し、遠野さんが愉快そうに口の端を上げる。
「さてね。目的としちゃ、こうして部室に集まって
社会奉仕部の活動に学校同好会の活動が内包されている、ということか。隠れ蓑とはよく言ったもので、部活動であれば何でも良かったのだろう。だからこそ、遠野さんは社会奉仕部の存続を願う想いに応じたのかもしれない。
「とは言え、二人きりだと
遠野さんが入り口側の壁を見つめる。隣の部屋から
「逆も
「いんや、俺は毎日ここに来るよ。部長だし、会長でもあるからね」
「俺もなるべく来ますよ」
「なら問題解決だな」
うんうんと遠野さんが
「三ツ谷高校七不思議」
「
首を捻る俺に対し、遠野さんは得意満面となる。
「学校の怪談さ。こういった
「一日一個で一週間分ですね」
遠野さんは俺の指摘に気分を害した様子を見せず、むしろ、より一層うきうきとした様子で、
「三ツ谷高校百物語」
と言った。一日一個で百日分。
「オカルト研ですね」
「信じなきゃただの
遠野さんが肩を
遠野さんは長机の近くにあるパイプ椅子へと腰を下ろし、俺と向き合った。パソコンデスクの椅子は高く調節されており、俺が
「与太話その一。
「それは百物語でしょうか」
「七不思議のほうさ。怪談と呼ぶのは失礼過ぎる」
「不思議と呼ぶのもどうかと」
そもそも七不思議というものは学校独自のものであって、人に依存するものではない。『三ツ谷高校与太話三選』と題したほうが納得できそうなものだ。
「基先生はこの学校に来て長いらしいからな。聞いた話じゃ、ここの出身らしいぜ?」
「そうなんですか。
「なに、知り合いが多いのさ」
「顔が広くて
「須田君から教えてもらった」
意外と狭かった。同じクラスの新聞部員だ。俺もよく話すけれど、教えてくれなかったなあ。
「この調子だと、一日に百不思議くらいいけますね」
「おいおい越渡君。そこに謎があるのなら、解明せずにはいられんだろう?」
「いられますが」
きっと遠野さんは解明せずにはいられないのだろう。小首を傾げ、
「基先生が
と言った。
話を振られないように、俺は先手を打つ。
「感情が乏しいだけではないでしょうか。俺も家だとあまり笑いませんよ」
「越渡君……話なら聞くぜ?」
同情されてしまった。そんな目で見ないでほしい。誰だってそんなものだと思う。遠野さんは自宅でも学校と変わらないような気がするけれど。
「だが、基先生はこの学校に長くいるんだ。一人や二人、見たことがあるはずだろう? なのに、こうして七不思議に数えられちまうってことは、先生が意図的に無表情を決め込んでいるってことだ」
「恥ずかしがり屋なだけではないでしょうか」
「自分が笑ってるところを見られると恥ずかしいって? ははは、先生にそんな可愛い一面があったら、それこそオカルトだな!」
めちゃくちゃ失礼じゃん。
「盛り上がっているところすまないな」
重く背中にのしかかるような、低い声が響く。遠野さんが振り返った先には、基先生本人が
遠野さんは、しかしすぐさま笑みを浮かべ、立ち上がり様に
「お疲れさまです。改めて、よろしくお願いします」
「よろしく」
基先生は何か物言いたげだったけれど、背後から二人の女子生徒がひょっこりと顔を出すと、深く息を吐き出し、二人を紹介するように身体を横にずらした。
「お客人だ」
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