第3話 切れ味抜群ですわ〜!

 急いでお家に帰るとお母様とおばあ様は朝食の準備中。どうや間に合ったみたいですわね。


「ただいま帰りましたわぁ〜!」

「フラムおかえり。朝食には間に合ったねぇ」

「えぇ、いっぱい採ってきたから、おばあ様の薬もたくさん作れますわ♪」

「おや、ありがとさんだねぇ。ご飯はテーブルの上にあるからねぇ」

「わかりましたわ。あ、私、食べたらまたギルド行ってきますの。急がないといけないのです」

「ちゃんと噛んで食べるのよぉ」

「はい!」


 とは言われましても、あのパーティーがいつギルドに着くのかがわからないので急がないといけません。

 それにしても、あのシーリスって子は可愛かったですわね。腰まであるピンクの髪にタレ目気味の大きな目に大きな胸。私より大きい? ん? ん〜? ま、どっちでもいいですわ。


「ごちそうさまでした。いってきます」

「はい、行ってらっしゃい」


 おばあちゃんの見送りを受けて私はギルドに向かいます。


 急いで向かったはいいのだけれども、どうやらまだ戻って来てないみたいですわね? 寄り道でもしているのかしら?

 いつもの席に座ってしばらく待ってると、お昼頃になってやっとあのパーティーがギルドに戻ってきました。今は換金してる所。あのヒーラーさんも一緒ですわね。なんだかみなさんお疲れのご様子?


「へへっ、とんでもなく疲れたけど、やっぱりフェザーバードは良い金になったな」

「そうだな。ほらシーリス、お前の取り分だ。そしてさっき言った通りに、ここでお前とはお別れだ」


 チリンッ! という音ともにシーリスって子の目の前には銀貨が一枚。はぁっ!?


「そ、そんな! これだけなんて……。ま、待ってください!」


 ギチッ! ミシミシミシ……!


 あら。銀貨を投げた男性の腕がまるで雑巾のように絞られていきますわね。


「いぎっ! いでぇぇぇ! 思いっきり腕を掴むんじゃねぇ! この馬鹿力が! っはぁ……ちぎれるかと思ったぞ……。大体な、回復出来ないヒーラーなんていらねぇんだよ! 顔と体はいいからパーティー入れてたけど、身持ちも固くて夜の誘いにも乗ってこねぇしな。耐久力だけじゃなくてそっちも固くちゃつまんねぇんだよ。じゃあな」


 そう言うとシーリスさん以外の三人はギルドから出ていってしまいました。


「うぅぅぅぅ、こんな【パーフェクトメイデン】なんてスキルじゃなくて、回復力があがるスキルさえあったらこんな事には……ふぇぇ、早く次の仕事見つけないと宿代がもたなくなっちゃう……」


 えぇっ? ちょっと!? 明らかに強いですわよねぇ〜!? 追放した人達はお馬鹿なの!? お馬鹿ですわよね!?

 まぁいいですわ! きっとこれから回復力にも目覚めていくパターンですわね! それで不沈の回復物理乙女誕生の布石に違いないですわ〜!


 ふふっ♪ 貴女の事、見守らせていただきますわ!


 ◇◇◇ 


 次の日ギルドに行くとシーリスさんは何かのクエストを受注していました。なにかしら? あら? かいがんにいくのね? あらあらあら? シーリスさん!? なんでいきなり服を脱ぎだしてますの!?

 あ……水着姿になるだけですのね。ご乱心かと思ってびっくりしましたわ。

 それにしても予想よりも大きいですわね。今にもお胸が水着から溢れそうですわ。

 ってそれはとりあえず置いといて、一体彼女は何するつもりなのかしら? ん? 海に飛び込みましたわね。いったいなにを──


 ドゴーンッ!


 なんですの!? 衝撃音と一緒に私が立っていた場所まで揺れましたわ!

 そしてその揺れが収まった頃、輝きを放つ大きな岩が海面から顔を出してきましたわ。それはどんどん姿を表して、最終的にそれを担いだシーリスさんも出てきたんですの。

 水中モンスターが何匹もシーリスさんに体当たりをしてますけど、シーリスさんは全然気にもしていないようですし、効いてるようにも見えないですわね。 シーリスさんはそのまま陸に上がると、その大岩を地面に置いたのですけど、むしろシーリスさんも大岩なのではないかしら? 硬すぎじゃありませんこと?


「よいしょっと。鍛冶屋さんから出てた鉱石採取クエストだけど、ちょっと大きすぎたかなぁ? せーの、えいっ! えいっ!」


 パキンッ! パキンッ!


 可愛らしい掛け声と共に大岩をぶん殴るシーリスさん。その音と共に大岩はどんどん砕かれて……は? 砕かれて? どういうことですの? 両手で抱えて収まる程度の大きさにまでバラバラになりましたけど!?

 どうして何事もなく服を着ているのかしら!?


 私が驚きに驚きを重ねて驚きサンドイッチを作っている間にシーリスさんはそれを何個か軽々と持ち上げて、町に向かって歩きだしてしまいましたの。


 す、凄いですわシーリスさん!

 きっとその力に注目した人が貴女を導いてくれるのよ! 頑張ってくださいませ〜!



 そして一ヶ月後──


 カーーン! カーーン!


 町の外れから鉄を打つ音が響いております。

 何かしら? 町外れなのに凄い人だかりだけど……。

 興味本位で覗くと、そこには小さな鍛冶屋があって、ドワーフみたいなおじさんが人だかりを整理しているようですわ。


「はい、押さない押さない。数には限りがあるからナ! 一番高い値段を付けた順に売るからナ! 奇跡の鍛冶師、シーリスの歯こぼれしない剣と包丁はここでしか買えないからナ!」


 ……え? シーリスさん?

 そんなまさか……。確かに最近ギルドで見なくなったとは思ってましたけど……。

 その時、店の奥から見たことある姿と声が──


「ふぇぇ、親方ぁぁぁ。材料がなくなりましたぁぁって、なんですかぁ? この人だかりは」

「あぁん? みんなお前さんの打った得物を買いに来てんのよナ! だからこれからも頑張るのナ!」

「は、はいぃぃぃ!!」


 なんで貴女まで、地域に根付いた才能を発揮してるのかしらぁぁ!?

 見返すのは? 冒険はどうなさったの?

 はぁ、とりあえず……


「包丁一本下さいませ」






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