第2話 危険ですわ〜!
今日は朝から少し忙しかったのですわ。
朝っていうか、早朝? まぁどっちにしろ朝には変わりありませんわね。やっと太陽が顔を出してきたくらいの早い時間に起こされましたの。ねっむ……。
その起こされた理由と言うのが、おばあ様がいつも飲んでる薬の材料が足りないようで、この辺りにはございませんから山を二つ越えたところにある泉の側の花を朝食までに取ってきて欲しいと、お母様頼まれたからなのです。
相変わらず無茶苦茶なことを言うお母様ですわ。
私はまだFランクなんですのよ? 朝食までに山二つ分の往復なんて、相当急がなくちゃ無理ではなくって!? まったくもうっ!
これがAランク冒険者とかでしたらきっと、『シュンッ!』って行って、『シュシュンッ!』って戻ってくるのでしょう
はぁ……まぁいいいですわ。行かないとおばあ様も困りますもの。がんばりますわ〜!
背負いカゴを持って庭に出ると、まずは準備体操を致しますの。途中で足とかつりたくありませんからね。
体操の後は、家の近くで一番高い木の上に飛び乗って辺りを見渡しますわ。
いつもなら森の中を突っ切って行くんでしょうけど、今の時期は虫がたくさんいるから嫌ですの。虫だけはホントに嫌いですわ。滅びてしまえばいいのよ!
だから今日のルートは、目的地まで高い木の上を飛び移っていくことにしましたわ。それなら虫との遭遇率も低くて安全なはずですものね〜。
さ、しゅっぱ「フラム〜」……んん?
私を呼ぶ声がして下を見ると、そこにはおばあ様が。
「おばあ様どうなさいました?」
「なんでもないけど、気をつけていきなさいよ〜」
「わかりましたわ。じゃあ、ちょちょっと行ってきますわ!」
おばあ様にそう返事をして私は思いっきり踏み込んで次の木に向かってフライハイですわ!
◇◇◇
──うん、これだけあればしばらくは大丈夫ですわね。
出発した後は、特になにも問題なく目的地に着きまして、花の採取も終わったところですの。持ってきたカゴにいっぱいに詰めましたから、後は帰るだけ。これなら朝食までには間に合いそうですわね。
そう思ってまた同じように来た道をピョンピョコ。そのまま山を一つ半越えたあたりで戦闘音が聞こえてきましたの。
早朝クエストかしら? それか、たまにある深夜の緊急クエスト? そういうのはCランクからだから、私が受ける事は出来ないけれど、話だけは聞いたことがありますわ。ちょっと覗いて見ようかしら?
木の上から降りて、なるべく草むらになってないところ(虫がいないから)に体を隠して覗きます。なんだか変態さんになった気分で嫌ですわ。でもこれは仕方がないことですの。
「おいシーリス! はやくこっちも回復しろよ!」
「はいぃ! 今やってますぅぅ!」
「ねぇ! こっちもやばいんだけど? しかも回復量少なすぎない!? ヒーラーなんでしょ!?」
「はいぃぃ! 今すぐにぃぃぃ!」
「おそいんだよ! それにアンタも攻撃されてるのになんでケガしてないんだよ! 自分ばっかり真っ先に回復してんだろ? 前衛が落ちたら終わりなのわかってんのか?」
「そんなぁぁぁ、自分の回復なんてしてませんよぉぉぉ!」
「くそっ! 耐久には自信があるヒーラーだっていうから連れてきたのにとんだお荷物じゃねーか! お前だけ耐えれても意味ねーんだよ!
このままじゃ全滅だぞ!」
あれは……大きな鳥? 名前は忘れましたわね。冒険者の人達が持ってるのは大きな卵ね。あ〜そういう事ですのね!? 商業ギルドからたまに出る朝一の卵の採取のクエスト! それで、卵を取られた親鳥との戦闘になったって感じなのね?
それにしても……結構苦戦しているようですわね。きっと四人中、Cランクは一人しかいないのだわ。あの鳥そんなに強いのかしら?
地面を見ると手ごろな石が落ちてましたから、それを拾って鳥を見ます。
見つからないように……。
ヒュンッ!
『グエッ!』
大きな鳥は一声鳴くとパタリと倒れてしまいましたわ。あら? なんですの? 弱いじゃありませんこと? もしかしてあの人達、ランクを偽ってクエスト受注したのかしら? たまにそういう事をする冒険者に憧れた一般人達がいるって聞いたことありますけど、それかしら?
ちなみに、私が軽く投げた石は、鳥の頭を貫通してから反対側の木にめり込んでましたわ。
危険ですわ〜! もう少し力入れてたら、木を倒してたかもしれないですわ〜!
「な、なんだ? いきなり倒れたぞ?」
「わからねぇ……さっきの俺達の攻撃が時間差で効いたとか?」
「さあ? まぁいいさ。せっかくだから素材になりそうな所を剥ぎ取ってギルドに戻ろうぜ。こいつのは結構高値で売れるからな。おいシーリス。お前とはそこでお別れだからな」
「そ、そんなぁぁぁぁ……」
ん? お別れ? これはもしかして追放の伏線ですわね!
早くお家に戻ってギルドで待ってないといけませんわ〜!
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