神楽坂学園への入学
試験から二週間が過ぎ、街には美しい桜が見え始めた。
四月に入り新学期が始まる。いつもと違う通学路、いつもと違う景色。
今日から俺は神楽坂学園の生徒となる。
時刻は八時をわずかに過ぎた頃。
「入学式まで後十分くらいか」
普通の学校なら十分もあれば校舎見学でも出来そうなものだが、この学校の広さではそれも難しいだろう。
少し早い気もするが体育館に入るとしよう。
「何だ…ここ」
校門から左に進んですぐにある建物。丁度学園を囲む塀をなぞるように建てられているため外からは広さの全容は分からなかったが、入ってみるとその広さに唖然とした。
試験の時の地下空間もかなりの広さがあったが、ここはさらに広い。あの地下空間がふたつは入るのではないかと思えるほどだ。
中には沢山の折りたたみ椅子が並べられていて、名前が書かれた封筒が置かれている。
自分の名前が書かれた封筒を置いてある椅子を探すのか。この広さの中で。
大変な作業になるかと思ったが、近くの物を見てみるとどうやら五十音順に並んでいるようだ。これなら案外直ぐに見つかるだろう。
相坂だからな。
「あったあった」
予想通り最前列で俺の席を見つけた。左端ということは俺が一番前になるのか。
封筒を足元に置いてのんびり待つ。
少しうとうとし始めた頃に、大きなスピーカーの音で目が覚めた。
『まずは入学おめでとう。私は神音坂帝治かんのんざかていじだ。この学園の理事長を務めている』
神音坂家、相坂家とは遠縁の親戚にあたる名家だ。彼自身は既に引退していて、家督は息子の雅人まさとが引き継いでいると聞いた。理事長をしているのは意外だったな。
『さて、これから君達は様々な分野について学んでいく訳だが、中でもより実践において高い能力を持つ二十人が所属する特別クラスのメンバーを紹介しよう』
一人ずつ名前が呼ばれる。呼ばれた者からステージに上がる。そのほとんどが名家の人間で、聞き慣れた名前ばかりだった。
『相坂嶺緒‼︎』
残り三人というところで俺の名前が呼ばれた。
他の生徒と同じようにステージに向かう。ステージから見るとその人数の多さを再認識出来る。
『千崎刀矢‼︎』
『成宮玲‼︎』
残りの二人も呼ばれ、ステージに上がってくる。その二人の顔には見覚えがあった。
前世で交流のあった二人、剣聖トーヤ・エディットと勇者レイ・グレイブと瓜二つだったのだ。
マリアのことといい、なぜこうも同じ容姿の人間が多いのか。
ただの偶然か……それとも……。
『以上が特別クラスのメンバーだ。彼らは一足先に実践にも参加してもらう、文字通り特別な生徒たちだ。授業を共にすることもあるだろう。是非彼らから技術を盗んでほしい。私の話は以上だ』
理事長の話と共に始業式も終了する。封筒に入っていた案内を頼りに教室に向かった。
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