第49話 狂戦
禍つ神の中でも、特に強そうな相手のステータスは次のようなものだった。
***
名 前 がしゃどくろ(鎧武者)
称 号 禍つ神・怨霊の王
年 齢 422
L v 250
◆能力値
H P 1,399,000/1,399,000
M P 1,948,000/1,948,000
スタミナ 710,902/710,902
攻撃力 1,257,600
防御力 953,300
素早さ 1,486,290
魔法攻撃力 1,369,000
魔法防御力 3,403,400
肉体異常耐性 1,304,460
精神異常耐性 1,213,800
◆根源値
生命力 153,900
持久力 125,000
筋 力 157,200
機動力 133,400
耐久力 104,000
精神力 120,380
魔 力 254,000
◆固有スキル
【怨霊隷従Lv.75】
◆スキル
【鬼火Lv.300】
◆戦技
【特殊剣術Lv.120】
***
***
名 前
称 号 禍つ神・赤き鬼の王
年 齢 1,500
L v 500
◆能力値
H P 2,130,100/2,130,100
M P 1,339,500/1,339,500
スタミナ 1,218,000/1,218,000
攻撃力 1,572,000
防御力 988,000
素早さ 2,516,000
魔法攻撃力 1,597,500
魔法防御力 1,830,260
肉体異常耐性 2,134,570
精神異常耐性 1,481,600
◆根源値
生命力 214,800
持久力 208,655
筋 力 196,500
機動力 186,700
耐久力 100,100
精神力 148,160
魔 力 166,698
◆固有スキル
【妖鬼隷従Lv.150】
◆スキル
【鬼火Lv.50】【
◆戦技
【特殊棍棒術Lv.300】
***
***
名 前 八岐大蛇
称 号 禍つ神・蛇の王
年 齢 2,000
L v 1,000
◆能力値
H P 3,295,150/3,295,150
M P 893,025/893,025
スタミナ 1,828,035/1,828,035
攻撃力 1,991,200
防御力 1,213,000
素早さ 3,658,500
魔法攻撃力 912,870
魔法防御力 2,684,000
肉体異常耐性 2,609,000
精神異常耐性 1,389,000
◆根源値
生命力 322,200
持久力 276,900
筋 力 216,150
機動力 257,300
耐久力 117,000
精神力 157,420
魔 力 116,000
◆固有スキル
【蛇族隷従Lv.100】
◆スキル
【蛇睨みLv.180】【
***
ともに同種の禍つ神を従えるボス級の相手である。
それに対して、現在の俺のステータスは次の通りだ。
***
名 前 凡野蓮人
称 号 狂戦神・統一王・覇王…➤
年 齢 14
L v 100
◆能力値
H P 1,521,500/1,521,500
M P 1,488,375/1,488,375
スタミナ 1,015,575/1,015,575
攻撃力 1,048,000
防御力 1,235,000
素早さ 2,286,600
魔法攻撃力 2,282,175
魔法防御力 2,431,013
肉体異常耐性 2,371,750
精神異常耐性 1,852,000
◆根源値
生命力 179,000
持久力 184,650
筋 力 131,000
機動力 190,550
耐久力 130,000
精神力 185,200
魔 力 198,450
…➤
***
ほぼ互角か、相手の方がやや格上と言ったところか。
流石は禍つ神──神格に相応しい力を有している。
一対一ならば問題は無いだろうが、そう都合よくはいかないだろう。
目の前にはそんな相手が何百何千といるのだ。
こちらに来てから初めて、俺は死を意識した。
これは、そういう戦いである。
俺が立っているのは、紛れもない死地。
気を抜くと足元を掬われるだろう。
だからこそ、俺は顔がにやけずにはいられなかった。
戦場の香りが身内をぞくぞくと震わせる。
崖の上からずっと、逸る気持ちを抑えてきた。
あの時、鏖殺隊を早く助けたかった訳ではない。禍つ神の侵攻を早急に食い止めなければ大変なことになる、という焦燥感でも、無かった。
俺はただ、早く戦いたかった。
少しでも早くこの場に飛び込みたかった。
人同士の喧嘩程度で、解消出来る筈もない闘争の奔流──やっと解放できる。
ずずん……!!
鎧を着たがしゃどくろが俺の前に立ちはだかった。巨大な刀を両手に構える。
そのすぐ後ろには細身のがしゃどくろも居て、薙刀を手にしていた。
冷気を帯びた冴え渡る殺意が、俺を襲う。
オーガや南たちの殺意が子供騙しの低俗な、雑味の多いものだったのに対して、禍つ神たちのそれは、純粋で混じりけのない殺意だった。
俺の良く知る、本物の殺意だ。
ずざあぁぁっ!
鎧武者のがしゃどくろが、刀を天高く振り上げた。
真っ直ぐに斬り落とす。
俺へと叩きつけてきた。
ヒュド──!!
それに合わせ【
ガゴンッ!!
膝の関節に蹴りを入れた。
膝が外れて、がしゃどくろが体勢を崩す。
そのまま上に飛んで、肩の関節も斬り落としてみた。
がしゃどくろが倒れ込む。
しかし、バラバラになった骨は意志を持っているように浮き上がり、すぐに元に戻った。
「やはり。グラン・ヴァルデンのアンデット系と同じか」
【伝心】にて百鬼にも注意を促す。
ゴオォ──ッ!!
死角から巨大な火の玉が飛んできた。
薙刀を手にしたがしゃどくろが放った鬼火である。
咄嗟に指先から【エアボール】を撃ち放つ。
鬼火の直前で、圧縮された空気の弾が爆散し、その風圧によって鬼火に巨大な穴が開いた。
その穴を潜り、俺は地に降り立つ。
地に足がついた瞬間に、【雷身】で鎧武者の真下へと移動した。
特大剣の切っ先に鋭利な魔粒子で纏わせる。
その切っ先を真上に向けて狙いを定める。
「これならばどうだ」
アンデットと同じであれば、ここを断たれたら復活できまい。
「【
真上に飛ぶと、尾てい骨を打突した。
ビシッ!!!!
骨が裂ける音が響いた。
尾てい骨に亀裂が生じ、それが背骨の下から上へと駆け巡る。
がしゃどくろが声にならぬ声を漏らした。
脊柱が腰椎、胸椎、頚椎と順に砕けていく。
身体の根幹を失い、がしゃどくろは為す術なく全身の骨が瓦解して崩れ落ちていった。
最後に大きな頭蓋骨が落ちてくる。
バギンッッ!!
それを打ち上げるように叩き、砕く。
「やるジャないカ……、ヒト風情めが……!!」
「!?」
山のような体躯の赤鬼と青鬼が並び立っていた。周囲には、その二体よりやや小柄な鬼たちが群れを成している。
鬼の大将格である。
赤鬼と同じく、青鬼も【青き鬼の王】と言う称号持ちだ。ステータスも赤鬼と同格だった。
「ウマそうな霊力だ!」
「しゃぶリ甲斐がありソウだ!」
赤鬼がべろんと唇を舐めた。
ズンズンと前のめりに大股で踏み込み、巨大な棍棒を叩きつけてくる。
ぼご────んっ!!
一撃で地面に大穴が開いた。
空中へと退避した俺を目敏く見つけ、そのままの勢いで膝蹴りを繰り出して来る。
ステータス通り、見た目に反して身軽なようだ。
俺は剣身でガードした。
バ────ッ!!
その瞬間だった。
背後から、今度は青鬼が張り手を繰り出して来る。
──間に合わないか!?
咄嗟に【魔鎧】で防御する。
ぱーん。
「!?」
俺は軽く真上に打ち上げられた。まるで空中にボールを放るように。
しまった!
目の前に青鬼の顔があった。
「
強烈な頭突きをまともに喰らう。
数百メートル吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた。
凄まじい威力が【魔鎧】越しでも伝わってくる。
「行け、シモベどもよ!!」
「だが、喰うんじゃナイぞ!? そいつは俺たちの喰いモノだ」
赤鬼と青鬼の一言で、周囲の鬼たちが一斉に俺に飛びかかって来る。
俺はゆっくりと立ち上がり、呼吸を整えた。
「これだ。これだよ。俺が
黒曜の特大剣を構えなおし、鬼の大群目がけて斬り込んでいった。
──グラン・ヴァルデンはまさに戦乱の時代だった。
敵は魔王と魔王率いる魔王軍──強大な力を持つ魔族たちである。
そんな魔族との戦いは小規模な小競り合いでも、一対一の勝負などでもなかった。
魔王討伐軍と魔王軍との最低でも数千騎がぶつかり合う戦争、であった。
俺は多くの種族、多くの兵を従える身だった。
勝つためにも冷静に戦況を分析し、最善の一手──こちらの犠牲を最小化する一手を常に考え、戦術を組み立ててきた。
そして、俺自身が強くなり、単独で数万規模の軍を壊滅させられるようになってからは、敵味方入り乱れる戦場においても【手加減】や【気遣い】が必要になった。
だからこそ、世界各地のダンジョンに潜るのはいつも独りだった。
仲間たちが同行したいと申し出て来ることも多かったのだが、色々と理由をつけて断っていた。
加減をすることも誰にも気を遣うこともなく、気兼ねなく、自分の全力を解放して戦えるその悦楽を求め、ダンジョンに潜っていたのだから。
一人であれば、余計な心配などせずに、済む。
ダンジョン最深部で強大な敵と対峙している時──どのような状況でも冷静に戦況を分析し最適な判断を下す、そんな戦場で見せている俺は、そこには居ない。
余計なものは削ぎ落し、全力をぶつけ合って己の生存をかけて命を削り合う。
それが俺。本当の俺の戦い方。
鬼たちを斬り倒し、再び俺は赤鬼と青鬼の前に立った。
「すばらシイ」
「褒めてヤロウ」
赤鬼が棍棒を両手持ちに変える。
青鬼も大鉈を両手で構えた。
「【騒速之身】!」
「ついて来られるカナ?」
ブンブンブンブン!!
赤鬼と青鬼がそれぞれの武器を振り回す。
スピードが上がっている。
【騒速之身】は、素早さを上昇させる【妖術】のようだ。
「すり身にシテやろう!」
「刺身と肉団子、ドチラがいい?」
「来い!」
ガガガガガッ!!
ガガガガガッ!!
ガキガキギギギギッ!!!!
連続で振り下ろされる棍棒と大鉈と、俺は真っ向から打ち合った。
一瞬でも気を抜けば即、死。
このような死線を前にした真剣勝負で、魔法でファンネルを打って茶を濁す真似など興醒めだ!! なぁ、そうだろ!?!?
「ははははハハハっ!!!!」
笑いながら黒曜の特大剣を相手の武器に叩きつける。
オレンジ色の火花がそこら中に散っては消えた。
ガガガッ! ガン! ガガッ!!
ガガンッ! ガッ! ガゴ!
ゴガガガギギギギ!!!!
【いなし】を使うことさえも忘れ、鬼に己のすべてをぶつける。
そんなこちらの様子に、二匹の鬼が怯んだ。徐々に押し込まれていく。
「どうしたのだっ!? そんなものではない筈だろう!?」
ガヂンッッ!!!!
強烈なかち上げで、鬼の巨体が浮いた。
「どぅら゛!!!!」
特大剣の薙ぎ払いによって爆風が巻き起こる。
山のような体躯が仰け反り、鬼たちは尻もちをついた。
「キサマ! ヒトの分際デ!!」
「ぅオお゛お゛オ────ッッ!!」
青鬼が唸り声を上げて怒る。
「【剛力之身】っ!!」
今度は攻撃力を上昇させた。
大鉈を真後ろに振り上げて、高く跳んだ。
俺の頭目がけて、全力で振り下ろす。
周囲の空気を巻き込み、切り裂き、磨り潰しながら巨大な刃が俺の頭上に影を作りながら迫って来きた。
俺は何もせずに、ただその場に立っていた。
「受け切る!!!!」
躱すこともいなすことも、しない。
特大剣を構え、全身全霊でもってかち合わせた。
紛れもない死地において、越えてやる!!
【
ガヂンッッ!!!!
足元を中心に大地に亀裂が走った。広く円形に陥没する。
石が真上に高く舞った。
ピシッ!!
「!?」
ゴギンッ!!
大鉈にも罅が入り、次の瞬間砕け散る。
「っらぁ!!!!」
【雷身】で近づき、青鬼を斬り上げた。
「おォおォ!?!?」
股から頭頂部まで一刀両断、一撃で斬り伏せる。
「がおおオオっ!!!!」
それを見ていた赤鬼が怒り狂った。
猛ラッシュを仕掛けて来る。
だが、鬼のスピードにも圧にも力にも、もう俺は適応していた。
一撃の圧力、俊敏さ、攻撃力……すべて俺が上回り、どんどんと押していく。
「ぐ、ヌ、が!?」
今度は赤鬼の方が防戦一方になった。
特大剣の暴風雨を完全に防ぐことが出来ず、徐々に身体が切り刻まれていく。
「終わりだ!!」
真横に一閃。
赤鬼の太い手首を斬り落とした。
「ぐおぉぉっ!?」
切断面から紫色の鮮血が噴き出す。
赤鬼が苦悶の表情を浮かべて蹲った。
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