第34話
「な、泣いてても仕方ないよな……考えよう、知っていこう……元の世界に帰るために」
僕は涙を拭いて、自分に言い聞かせていた。奮い立たせるように、諦めないようにした。
こぼれた僕の言葉を聞いていたマナチ、ツバサ、ジュリは泣き止んでいった。まるで僕が泣くの終了しようかって言っているみたいだ。
「ま、まずは情報を共有していこう」
いつアカネがやってくるのかわからないが、それまでの間に出来ることがあるはずだと思った。ムッツーは相変わらずぼーっとしていて、このまま放っておいて大丈夫なのだろうか。洗脳が解けた後に洗脳されていた間の記憶はそのまま残るから、情報共有していく中で彼女も聞いていた方がいいかもしれない。
「前にツバサが言っていた銃と防具の関係性、銃の適正距離とか、そういった事を教えてくれないか」
僕は前に聞いたことをさらに詳しく教えてくれると思った。
「ゲ、ゲームの知識なので、その……」
ツバサは自信なさそうになっていた。
「そのゲームって銃撃乱舞だったりするのか?」
「え、あ、はい……」
「知らないと知ってるとは変わってくるから、教えてくれないか」
するとツバサはおずおずと話し始めてくれた。
「銃といっても様々な種類があり、拳銃、ショットガン、サブマシンガン、アサルトライフル、マシンガン、スナイパーライフル等があります。それぞれ適正距離があって拳銃が一番短くて、スナイパーライフルが一番遠くから攻撃できます。ただ、この私が持ってる銃やヨーちゃんが持ってる銃などは銃撃乱舞で出てくる銃で見た事のない銃なのでもしかしたら色々違うかもしれません」
「私が持ってるこのショットガン、軽量型小型自動散弾銃参禄式というのも銃撃乱舞には出てきてない」
ジュリが銃を召喚し、教えてくれた。
「え、じゃあ私のこの銃も? HKA-502って言うんだけど……」
ツバサがマナチが召喚した銃を見て眉間に皺を寄せていた。
「502……聞いたことがないですね。でも形はどことなく見た事はあります」
「ということは、僕たちが持っている銃は現実の銃ではない、のは確かなのかもしれないな」
僕はクリスベクターカスタムブレイクスルーを召喚した。
「もしかしたら、そうかもしれません」
ツバサが悩みながら答えてくれた。
「どういうことだ?」
「私が知らないだけで秘密裡に開発された最新の銃、という可能性もあるので」
「なるほど、それでそれぞれ適正距離があるということは戦い方もあったりするって事だよな」
ツバサが一呼吸し、彼女が持つ銃をいったん消した。
「近距離、中距離、遠距離とわけるとしたら、ジュリが持つショットガンは近距離、ヨーちゃんが持つ銃は近距離から中距離、アサルトライフルは中距離で銃によっては遠距離も対応ができるといった感じになります。ただ、私たちが身に着けている防具や扱われている銃弾から当てはまるのかわかりません。なので、実際に試射したり、訓練をしたりしないと見えてこないのかなと思いました」
手がかすかに震えており、銃を撃つのが怖く感じているようだった。
「ツバサも実際に撃ってみるとスッキリすると思うよ」
ジュリがとんでもないことを言い出した。
「え」
「アカネちゃんに言われた手ネズミを撃ったけれど、いいストレス発散になった。まあ、生き物を殺しているから何言ってるんだろうだけど、小さくて力がない私には頼れる力だって感じたんだ」
マナチはジュリが言った言葉を聞き、大きく頷いていた。
「わ、私も何かあったときにちゃんと戦えるようになりたいです」
そして、マナチも触発されたように言った。みんなが協力していけば乗り切っていけると僕は思った。
その後はアカネやベェスチティが来ることなく、夜がふけっていった。互いの情報を共有し、アビリティ・スキルについて話し合っていた時に、生存確率がぐんと減っていった。僕たちは突然20%まで下がった事で顔を見合わせた、それが何を意味するのかわからずだったが、銃を召喚し、入口の方を警戒した。。
しかし、建物の入口からは何かやってくる気配もなく、何か近寄ってくるような音もなかった。
すると生存確率が20%から30%まで上がった。
「いったい何だったんだ?」
疑問に思い建物の中を見渡したりした。
「わからない、わからないけれど、今減った生存確率が30まで戻った……」
ジュリが生存確率の変化を口に出して言ってくれた。僕たちが何かを感じ取ったと思ったのだが、そうではなく警戒したことによって生存確率が戻ったのではないかと考えた。
銃を召喚する事によって、生存確率が上がった事で僕たち四人は銃を出したままにした。生存確率が上がったままになり、その事についてそれぞれ話し合う事になった。
「も、もしかして、これでどうにかしないといけない事が起きる……ってことかもしれない」
僕は銃で決着をつけないといけない状況が差し迫っているのではないかと思った。
ツバサはそうなってしまうのは嫌だなと顔ににじみ出ていた。だが、彼女が今まで知っている知識があれば銃を使って対処して、クリアすることで生き残る予測ができるのではないかと思う。そして、それが現実に今自分たちに起きている事で、信じたくなく拒絶したいのだろうと僕は思った。
これから起こりえる事をゲームやアニメであるような展開を知っていて、嬉々として楽しめるのは死なないという約束された状態だ。だが、今はそんな約束もされていないので、怖いという感情がどうしても襲ってきてしまう。
「や、やるしかないのかもしれない……よね」
ツバサは噛みながら受け入れたくないものの、自身が予想している何かに対して覚悟を決めようとしていた。
「やる、やるしかない」
ジュリは、すでにネズミを殺した事によって変わった感じがしていた。引き金を引くという行為に対して、試射した時とは比べ物にならない程、生きているものに対して撃つことへの躊躇いが低くなっているようだった。
僕はマナチの方を向き、彼女が微妙に震えてるのに気づき、守らなければと思った。
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