第14話 どうも、妹専門のマッサージ師です。



「か、確認だけど脚を揉み解せばいいんだよな?」

「おにいちゃんだったら全身くまなくマッサージしても良いけど?」

「……梓、年頃の可愛い女の子がそんなこと簡単に言っちゃいけません」

「…………むー、本心なのに」



 梓は俺の枕に顔を押し付けながら再び何やらぼそっと呟くが、きっと揶揄っているのだろう。男はみんな心に狼を飼っているので、もしそんなことを言われたら参ってしまう。実際俺もほんの少し理性と本能の間で葛藤してしまったので、今後は是非とも発言に気を付けてもろて。


 さて、ベットの上で膝立ちになった俺は梓のほっそりとした乳白色の瑞々しいおみ足を眺める。



「……良い景色だ」

「え?」

「いやいやなんでもないよ。それじゃあいくぞ?」

「うん、優しくしてねっ」



 あぁ、と俺は返事を返すが、やや梓の声が上擦っているところを見るに、きっと彼女も緊張しているのだろう。大丈夫だよ梓、お兄ちゃんなんだからえっちな感情なんて一瞬でも抱く訳ないじゃあないか。


 さ、全身の力を抜こうねぇー(ニチャア)。



「———ひゃんっ」

「ど、どうした梓!?」

「う、ううん! おにいちゃんの手がひんやりしてたから少し驚いちゃっただけっ!」

「うぇ!? ご、ごめんなっ!?」



 梓の太ももの付け根に俺の指先が触れた途端、いきなり驚いたような可愛らしい声を上げたのでびっくりした。どうやら俺の手が原因らしい。俺は昔から冷え性な所為か手足が冷たくなりやすい。本格的な夏場一歩手前ということもあり、自分ではあまり冷たいと感じてはいなかったのだが盲点だった。


 ごめんね梓、急いでおててあっためるね! ハァー。ハァー!!

 


「こ、今度こそ大丈夫だと思う。いくぞ?」

「うんっ!」



 やがて意を決した俺は、梓の右太腿の付け根の裏に両手を置くと包み込むように揉んでいく。十分に両手を俺の吐息で温めたおかげか、最初の時のように驚いた様子はないので一安心。


 ショートパンツから伸びる脚はまるでシルクのようなすべすべもち肌をしている。手の平に伝わる肌の感触は非常に心地良い。もうこのままずっと揉んでいたい程である。



「んふふ、なんだかくすぐったい」

「えぇ、マッサージしてって言ったのは梓だろうに。我慢出来ないならやめるか?」

「だーめっ」



 どこか楽しげな声を出している梓だが、やはりくすぐったいのだろう。太腿からふくらはぎにかけて全ての指を使ってじんわりと、ゆっくり指圧していくも、たまに逃げるように脚を動かしてしまう梓に思わず笑みがこぼれてしまう。



「こーら、そんなにもぞもぞしたら揉みづらいんだけど」

「んーんぅ、多分慣れてくると思うから続けてー?」

「あいあい、愛しのお姫様」



 甘えるように可愛く急かしてくる梓にそう返事を返しつつ俺はマッサージを続けていく。


 因みにだが、俺はマッサージをするのは初めてである。ド素人の俺が気持ちよく出来るなどと自惚れるつもりはないが、折角こうして甘えてきてくれているのだ。せめて少しでもリラックスして貰えると嬉しい。


 そうして俺は優しく、そして丁寧に指圧を続けていく。









 ——— ギシッ、ギシッ。



「んっ……あっ」

「ふっ、ふっ、気持ちいいか、梓」



 ———ギシッ、ギシッ、ギシッ。



「うんっ。こ、こんなの、初めて……ああんっ」

「痛いところがあったら言ってくれよ……ふっ」

「きて、おにいちゃん……もっとぉ……っ!」



 やがて梓の下半身マッサージを始めて数十分経過。現在も俺は梓の足の付け根からつま先にかけてじっくりと揉み解すように揉んでおります。……はい、お察しの通りなんだかいけないことをしている気がしてなりません。煩悩退散、色即是空、心頭滅却ゥ!!


 俺の枕に顔を押し付けた梓の身体はうつ伏せの状態で全身だらんと脱力しきっており、しっとりと仄かに汗ばんだ綺麗な脚はほんのりと桜色に色付いている。時たま梓が喘ぐ声とともに身体をピクリと動かすのはリラックスしている証拠だろう。……えぇ、きっとそうでしょうそういうことにしましょう!!!!



「おにいちゃ……っ、これ、すご…………ぉっ」

「はは、喜んでくれているようで何よりだ。案外俺にはマッサージ師が向いてるのかもしれないなぁ?」

「そう、かも……っ。流石、おにいちゃん……だよぉっ」



 【朗報】どうやら梓からの太鼓判も頂けたので、今日から俺が梓専門のマッサージ師です。役得すぎて内心猿みたいに奇声をあげたい程です。ウホッ、ウホホーーーーーーーッ!!! あ、これゴリラでした。


 モミモミ。モミモミ、モミモミモミ。しばらくそのまま愛しの梓の滑らかな柔肌を堪能していると、寝そべった彼女から声が聞こえた。



「ねぇ、おにいちゃん。もう、十分かな……?」

「そうか、わかったよ。今手を離すからな」

「……おにいちゃん?」

「おっとすまん」



 息も絶え絶えな梓がきょとんとしながら言葉を紡ぐと、正気に戻った俺は謝りながら正座する。そうして額に浮かんでいた汗をそっと拭った。


 危ない危ない。危うくこのまま梓の触り心地抜群な脚をマッサージし続けるマシンと化するところだったぜ……っ。なんとか鋼の意志で手を離したが、今回のようなマッサージを今後もお願いされたら我慢が効かずにエンドレスモミモミしちゃうかもなぁ(遠い目)。



「ありがとう、おにいちゃん。すっごく気持ち良かったよ?」

「お、おう。どういたしまして」



 そんなことを考えていると、梓はそっと身体を起こしながら女の子座りをして俺をじっと見つめる。


彼女は最初の様子に比べると身体が火照っているので情欲をそそるようなとろんとした表情をしている。きっとマッサージのおかげで血行が良くなっているのだろう。ぷるっとした綺麗な唇からは熱を帯びた吐息が洩れており、心なしかこの部屋全体が甘い匂いに包まれているような気がするのは気の所為だろうか。雰囲気も、なんだかいつもより湿気が多いような。



(……あれ、よくよく考えたらこの状況ってちょっと危なくない?)



 いくら妹である梓が家族だとしても俺と彼女の間には血の繋がりは何もない、所謂義妹というやつである。そんな彼女と二人ベッドに座っているこの状況は非常にマズい気がする。



「そ、それじゃあ梓、ベッドから降りて部屋に……」

「おにいちゃん」



 そう呟いた梓はポフッと俺の胸元に顔を押し付ける。途端に女の子特有の甘い香りが広がり少々動揺してしまうが、きっといつものハグだろう。そう思い冷静を保ちながら梓の背中に手を回すが、次の瞬間、俺の胸元に顔を押し付けた梓の言葉がはっきりと聞こえた。



「好き。大好き」

「え…………っ!?」

「———私のことも、ちゃんと見て?」



 そう言うや否や、ほんのり顔を赤く染めた梓は「マッサージ、またお願いするね。おにいちゃん?」と言って部屋から出て行ってしまった。


 一方ベッドの上に一人残された俺はといえば、呆けた顔のままなんだかいつもと様子が違う妹の姿を見送るしかなかった。


 …………えぇ?


















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今日は私の誕生日です! ハッピーバースデー私!!


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