第13話 愛する妹のおねだりを断れる兄がいるだろうか。いやいない。




「ああ、おかえり梓。早かったな」

「うんっ! 早くおにいちゃんと一緒に居たかったから」

「おっふ。そ、そうか。ほら、おいで」

「わーいっ!」



 正直梓の姿を見た瞬間にル◯ンダイブで抱きつきたかったが、必死に我慢。


 椅子から立ち上がった俺が両手を広げると、満面の笑みを浮かべた梓はとてとてとやってきて俺の身体に抱きつく。カチューシャを付けた梓のさらさらとした髪を優しく撫でると瞳を細めてくすぐったそうな表情になるのがとても可愛い。


 あっ少々犯罪臭がしますが、兄妹なのでギリギリセーフです!! まぁ血は繋がってないんですけれどねガハハ!!


 因みにこうして俺が梓に抱擁を交わすのはもはや二人の間の恒例行事である。俺としては極力梓とべったりしていたいのだが、流石に年頃の男女ということもあり嫌われたくないので、梓に配慮して学校に行く時と帰ってきた時だけ。


 以前のツンツンしてた時期の梓も可愛かったのだが、最近はこうして甘えてきてくれているので俺も大手を振って抱き締めらせるぜひゃっほーい!!



「あー、すんごい落ち着く……んぅーー」

「えへへ、梓もだよ。…………すぅーーー、はぁーーーー。ほんと最っ高(ぼそっ)」

「んー、なんか言ったかー?」

「ううんっ、おにいちゃんに撫でられるの気持ちいいなーって」



 うちの妹、きゃわわわわわ〜〜〜!!


 そのにへらっと蕩けたような笑みを浮かべているこの距離この角度は俺しか見れない特等席だ。へへっ、やったぜ。我が愛する妹成分、通称アズサニウムは梓大好き!!と強く思いながら密着していないと摂取出来ないので、この不肖響野拓哉、ただ今全力でお兄ちゃんを遂行してますはい。



「それにしてもおにいちゃん、今日はスイーツ作ってないの?」

「あっ、ごめんな? ちょっとお兄ちゃん今日は考え事してたんだよ」

「考え事?」



 上目遣いで俺の顔を覗き込む梓だが、ここは素直に口に出して良いものだろうか……? 



「……もしかして、例の告白してきたって女の人?」

「ぎくりんこ」

「やっぱりそうなんだ」

「で、でもな梓? いうてあれから関係性が発展した訳じゃ……」

「おにいちゃん、その人と連絡先交換したでしょ?」

「どうして知ってらっしゃるんでせうか!?」

「だってご飯食べてソファで寛いでいる時、ニヤニヤしてるもん」

「まじっすか!?」



 思わず頬を両手で押さえてしまうも、梓のじとーっとした真っ直ぐな視線が俺を捕らえて離さない。


 確かに夕食を食べた後に小泉さんからSNSで連絡が来てよくスマホをぽちぽち操作しているが、まさか俺がそんな間抜けヅラを梓に晒してたなんてなんという失態……っ! 梓にバレているということは、きっとマッマやパッパにも俺が異性と連絡をとっていることがバレている可能性が微レ存。


 ともかく、なんとか梓が寂しがらないようにしなければ。ほら、今だってぷくーって現在進行形で膨れっ面になってる。可愛いけど。可愛いけども!! もしこれが原因で嫌われてしまえば一生立ち直れない。このままじゃやっべぇぞ⤴︎☆



「おにいちゃん、梓は最近寂しいです」

「お、おう……」

「あんまり構ってくれなくなりました」

「ご、ごめんな? 今度絶対に埋め合わせするから!!」

「今度じゃなくて、今がいい」

「仰せのままに!」



 ちょっと待っててね、と言葉を残すと、そそくさと俺の部屋から出て行ってしまった梓。隣からバタンと音が聞こえたので、どうやら自分の部屋に戻ったのだろう。


 咄嗟に返事を返してしまったが、一体これから梓は何をするというのだろうか。ま、現在の夕暮れ時の時間帯では遠出など出来ないし、梓のことだから俺が困ってしまうような無理難題は仕掛けてこない筈である。だって天使ですから(ドヤァ)!



「お待たせ、おにいちゃん」

「あぁ、着替えてきたのか」

「うんっ」



 しばらくして俺の部屋に再び戻ってきた梓は中学校の制服からラフな私服姿に着替えていた。綺麗な黒髪をカチューシャで留めた髪型なのは変わらず、紺色のスウェットのホームウェアに黒のショートパンツといった自宅らしい自然な格好である。



(うーん、しかしだ。いくら兄妹とはいえ露出しすぎではないでしょうか……? お兄ちゃん、心配です)



 梓は俺よりも頭一つ分程小柄ではあるものの、決して幼児体型という訳ではない。むしろスレンダー寄りの体型をしており、腰のくびれや胸の形など身体のラインがくっきりしている程綺麗なボディラインをしている。


 梓の超絶可愛いあどけない表情に加えて、服装から伸びるすらりとした乳白色の手足が露出した格好を思春期の野郎どもが目撃してしまえば、それはもうたまらないのではないだろうか……?


 ……え、俺? すぅーーー、そうっすね。頑張って平静を保とうとしてるけれどもう可愛いすぎて理性が決壊しそうですが何か(早口)?



「それじゃあ、おにいちゃん」

「え?」

「———マッサージ、して?」



 なんと梓は俺のベッドへ飛び込むと、部屋で呆然として突っ立っているこちらへ視線を向けながらそう言葉を紡いだ。うつ伏せになった彼女はホットパンツから覗く魅力的な生足をパタパタとさせるが、俺はといえば内心動揺していた。



「あ、梓さん? それは流石に兄妹とはいえまずいんじゃ……?」

「これがいいのー。おにいちゃん、お願い」

「やらせていただきます!!」

「…………やったっ」



 そんな可愛らしいきゅるるんな瞳でおねだりされちゃったらやるっきゃねぇよなぁ!!


 そうして俺はギシっと音を立てながら自身のベッドに乗り上げたのだった。


















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続きは次回の更新です!


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