シスコンな俺、不審者に襲われているクラスメイトの心優しい清楚系S級美少女を助けたら惚れられて、いつの間にか溺愛されるようになりました。
第4話 あれれー? 告白されたことを伝えたら妹の様子がおかしいぞー?
第4話 あれれー? 告白されたことを伝えたら妹の様子がおかしいぞー?
かちゃかちゃ、かちゃかちゃ。
「うーん……」
かちゃかちゃ、かちゃかちゃ。かちゃかちゃ、かちゃかちゃ。
「まさかあの小泉さんが俺のことを好きだったとは……」
帰宅してからというもの、梓が食べる用のスイーツを作っていた俺はそう呟きながら何度もかちゃかちゃと音を立てる。クレープ生地はもう何枚も焼き終えたので、現在はキッチンで生クリームを泡立てている最中だ。あとはクレープ生地に生クリームを塗りたくって何十層にも重ねたらあら不思議、ミルクレープの完成である。
「ドッキリ……? いやぁ、流石にこれまでの様子を見るとそんなんじゃないだろうしなぁ……」
うーん、小泉さんの言葉が本心かそうじゃないか、それが問題だ。
確かに俺が不審者から彼女を助けたことに違いはないが、それを言うならばあの若い警官さんだって小泉さんを保護して助けてくれたのだ。あの件がきっかけで俺のことが好きだというのならば、あの警察官の人も好きでなければおかしいと思いますです。
「あー駄目だ駄目だ。小泉さんから告白されたことから目を逸らして面倒臭いこと考えてる俺!」
なんとか切り替えようとするも、正直全く身が入らない。
何故なら女の子から告白なんてされたのはこれが初めて。この前愛する妹から「お兄ちゃん大好き(はぁと)」ときゅるるんな瞳で言われて以来のふわふわした夢見心地である。未だぼうっとしてて現実味がないが、今日の出来事が夢でないのは確かだ。
「まずは友達から、とは伝えたものの……明日から小泉さんとはどんな顔をして会ったら良いんだろうなー?」
そこはかとなく頭の端っこで「笑えば良いと思うよ」と呟く儚げに微笑む少年の声が聞こえた気がしたがきっと気の所為だろう。
あのとき小泉さんは友達からでお願いしますという俺の日和ってる返事に素直に満面の笑みで納得してくれたようだが、とにかく怒っていないようで一安心。素直な彼女らしいポジティブさである。
陰キャに優しいギャルもびっくりな良い子具合にDTのワイもニッコリやで。
「そもそも会話したのも片手で数えるくらいだしなぁ」
いくらシスコンで彼女いない歴=年齢なチェリーボーイだとしても、流石に告白されて相手のことをよく知らないままはいそうですかと付き合うのも些か抵抗がある。何と言っても相手は高嶺の花である清楚系美少女小泉さん。こんな三度の飯より妹ラブなシスコンで、不審者を不審者で対抗して撃退するふざけた野郎なんかよりももっと顔良し性格良しの王子様がもっと他にいるかもしれない。
そう、こんなモブ顔でなんの取り柄もないシスコン陰キャ野郎よりもね!! ……あっ、なんか自分で言ってて悲しくなってきた。ぴえん。
「思えば今までクラスで会話するのはほとんど野郎ばっかで、碌に女子と話したことないな……。だからさっぱり何話せば良いのかわからん。……ま、なんとかなるやろ」
そう言ってなんとか区切りをつけた俺は、改めて全俺の全俺による愛する妹の為のスイーツ作りに集中したのだった。きっと小泉さんとは明日からの俺が上手くこう……なんとかやってくれるだろう(小並感)。まぁ恋愛経験値は全っ然ないが。むしろマイナスだが。
うん、ここは景気付けに梓が大好きな桃の缶詰とアイスクリームも後でトッピングしちゃおう。思考放棄? 知らん知らん。
しばらくすると、玄関の方向からガチャリと入口の扉が開いた音がした。
「おっ、帰ってきたな」
すぐさま俺がいるリビングに向かう、ぱたぱたとした軽やかな足音が近づく。俺は彼女を迎える為待ち構えていると、俺自慢の愛する妹はそのキュートでプリティな姿を現した。
「お、に、い、ちゃ〜ん!! ただいま〜!!」
「おぶっ」
俺の鍛えられた肉体(笑)の鳩尾目掛けて元気よく猪突猛進してきた梓は、そのまま俺にぎゅっと抱きつく。ふわりと甘い香りが俺の鼻腔を擽った。
制服を着たまま、現在進行形でぐりぐりとちっちゃな顔を擦り付けるようにして抱きついている小柄な女の子。髪型は顔の輪郭がはっきりとわかる黒のミディアムヘア。頭には以前俺が誕生日プレゼントにあげたカチューシャを身に付けており、俺の鑑定眼通り大変可愛らしいキュートな印象に仕上がっている。
彼女こそ俺が心底妹として愛している
「——————すぅはぁすぅはぁ。おにいちゃんのにおい……!」
「うん? 梓、なんか言ったかー?」
「んーん、なんでもないよ? おにいちゃん♪」
ぱっちりした瞳を嬉しそうに細めると梓は下から覗き込むようにして俺を見上げた。はい可愛いすぐ可愛いとっても可愛いもう花丸満点あげちゃう!! 今日もパンツ拝借してごめんね!!
「ねね、今日は何作ってるのー?」
「今日はミルクレープだぞー。トッピングに桃の缶詰とアイスクリームもつけちゃうぜい」
「おおー、やったー!! 嬉しいー!! でもおにいちゃん、今日は特になんだか嬉しそう。何か学校であったの?」
「お、嬉しそうか。……そっか、俺は嬉しいのか。いや実はさ梓。俺、人生で初めての経験しちゃったんだよ」
「初めて?」
きょとん、と不思議そうな表情を浮かべて首を傾げる梓。普段から頭では梓のことばかり考えているシスコンな俺だが、その隙間にふと小泉さんのことを考えてしまうほど彼女に告白されたのが嬉しかったのだろう。
ショーケースに保存しておきたいというやや狂気的なことを考えてしまうほど可愛くて魅力的と思いつつ、ちょっぴり饒舌に俺は言葉を続けた。
「そそ、実は俺、なんと告白されちゃったんだよね〜」
「——————は?」
そのようにややテンション高めに告白されたことを打ち明けたら、何故か梓の表情から感情という感情全てが抜け落ちた。将来は美人さんになるであろう端正な顔立ちをしている分、真顔でこちらを見つめられるとほんの少しだけ怖い。えぇ……。
こんな梓の冷たい表情を見たのは約一年振りである。まるで俺と梓が本当の兄妹ではないと両親からカミングアウトされる前の梓に戻ったかのようなツンツンした表情だった。
そう、実は俺と梓の間には血が繋がっていない。俺もつい最近初めて知ったのだが、どうやら梓が赤ん坊の頃に本当の両親が交通事故で亡くなってウチに引き取られたらしいのだ。初めて知った時はほえー、とアホ面になりながら驚愕したものだが、俺にとっては大切な家族で愛する妹であることに違いない。
何故その日を境に梓がこんなに甘えてくるようになったのか分からないが、今これだけはわかる。どうやら俺は地雷を踏んだらしい。
「おにいちゃん、それ本当?」
「え? あ、あぁ……」
「それで? どう返事したの?」
「まずはお友達からって……」
「ふぅーん、そっか。………………いったいどこの女狐かな」
梓は小声で何やらぼそぼそと呟くが、残念ながら聞き取ることは出来なかった。最後あたりは特になんて言ったんだろうか? はっ、もしかして梓……!
とある考えに思い至った俺は梓の両肩にポンと手を置くと、彼女は驚いたのかびくりと肩を揺らす。相変わらず小さくてほっそい!
「梓、お前もしかして」
「な、なにかなっ。おにいちゃん……?」
「ふっ。何も心配するな、梓。いくら告白されたとはいえ、俺にとっちゃ梓が大切な妹だということには変わりないよ。だから、そんなに寂しがらないでほしい」
「え?」
「ん? 俺が作ったスイーツが食べられなくなるって心配してるんだろう?」
ん〜ん、呆けた顔もかわいいねぇ(親戚おばちゃん顔)。
俺が告白されたと聞いた瞬間、きっと梓は咄嗟にこれまでおにーたんが私に作ってくれていたスイーツを食べる機会が減っちゃうどうしようきゅるるん! と思ったに違いない。わかる、わかるよ梓。今まで当たり前だったことが少なくなると寂しいもんねっ。
でも安心してもほしい。いくら告白されたとはいえ、まずは友達から始める予定だ。不審者に襲われそうになっていた小泉さんを助けて好意を抱かれていたとしても、お兄ちゃん一応紳士でシスコンのつもりだからそこの線引きはしっかりとするつもりだよ。
もしかしたら彼女が俺に惚れたのは吊り橋効果の一環かもしれないし、もしかしたら俺のことを知る度に幻滅して他の格好良い男子に靡くかもしれない。ほら、女心と秋の空っていう
あっ、でも俺より酷い男は絶対ダメです!! その時はしっかり品定めさせて頂きますよ小泉さん!! ニチャア(後方腕組みお兄さん)。
という訳で、梓との時間が減る予定は今のところないから心配しないでほしい。
「むー、そういうことじゃないんだけど」
「えぇ、そうなのぉ!!??」
つまりどういうことだってばよ!?
「しょうがないなぁ、じゃあそういうことにしてあげるね。おにーちゃん?」
「ん、おぉ、わかったよ梓。ありがとう」
「それじゃあ制服着替えてくるね! 後で一緒に食べよ?」
「あいあーい。完成したら冷蔵庫でしばらく冷やさなきゃいけないから、一時間くらいしたら下降りてきなー?」
「はーい! おにいちゃん大好きだよっ!」
そう言って手洗いうがいをして元気に自分の部屋に向かう梓の姿を見送った俺。その姿が見えなくなると、俺はどさりと膝から崩れ落ちたのだった。
「俺の妹可愛すぎる……っ!!」
我が愛する妹の尊さにしばらく悶えたあと、俺は再びスイーツ作りを再開したのだった。
うぉぉー、待ってろよ梓!! 今からお兄ちゃんがミルクレープ愛情込めて丁寧に作ってやっかんな!!
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