03. 雫の日記帳01 ~雫もロリータ着てみたい~

 雫は、リエラちゃんに買って貰った新しい日記帳の表紙を撫でる。リエラちゃんが言うには、新しいページに手を置いて一日の事を思うと記録されていくって事だったわね。

 表紙を開いて真っ白なページを開く。この最初のページから、世界の思い出を記していくのが、とっても楽しみだわぁ。

 早速今日の事を記しましょう。雫は真っ白なページに手を置いて思いを巡らせる……。




「んん……っ」


 寝顔もかわいらしくて、ずっと見ていたいけど、蒼ちゃんが目を覚ましたらしい。蒼ちゃんはいつも同じくらいに目を覚ます。今日は雫がワクワクして早く起きちゃったけど。


「おはよう、蒼ちゃん」


 眠そうな顔でこっちを見る蒼ちゃん。寝ぼけた顔もかわいい。


「おはようお姉ちゃん、今日は早いんだね」

「ワクワクして目が覚めちゃったのよぅ」


 蒼ちゃんは伸びをして部屋の周囲と窓の外を見ている。今日もいい天気よねぇ。この世界の空もとっても綺麗。


「よし、目も覚めたし着替えないと……って、着替えがないからそのまま寝ちゃったんだっけ」

「そうよぅ。早めにお洋服が欲しいわね。リエラちゃんに売ってる場所を聞いて行ってみましょうか」

「その前に、この世界の常識とか教えて貰わないと……」


 そんな話をしながら、雫と蒼ちゃんは、起き出して階下へ向かったの。居間に着いたら、リエラちゃんはもう起きていたのか、紅茶を飲んでいた。


「二人共、おはようじゃ。よく眠れたかの?」

「おはよう。よく眠れました」

「おはようリエラちゃん、ぐっすりぱっちりよぅ」

「それはよかったの。座って朝食でも取るとよい」


 リエラちゃんは向かいの席に、焼いたパンとスープ、それから紅茶の注がれたカップを置いてくれる。

 スープとってもおいしそう。パンは昨日と同じ固いやつかしら。食感がおもしろいのよねぇ。

 雫と蒼ちゃんは席に座って、いただきますをして食べ始める。スープだけど、野菜の味が濃くてとってもおいしいわぁ。


「食べながらでよい、これからの予定を考えたので聞いて欲しいのじゃ」


 雫と蒼ちゃんはリエラちゃんを見て頷く。


「まず、訓練じゃが午前に座学じゃ。この世界の事や魔術の事を教えよう。午後に魔術の実践じゃ。ただ、今日は午後から街へ買い物に行こうと思うのじゃ。服も日用品も何もないからの、食材も買わないといかん。じゃから、今日は取り急ぎ街で必要なこの世界の常識を教える。魔術の座学と実践は明日からじゃの」

「分かりました」

「分かったわぁ」

「ところでお金なんですが、神様からは通貨は渡せないと言われて宝石を貰いました。渡しますので、私たちにかかるお金とリエラの報酬の足しにしてください」


 蒼ちゃんは神様に貰った小袋を取り出してテーブルに置く。雫はすっかり忘れてたわぁ。神様は雫がよく物をなくすって気づいてたのかしら?


「ふむ。確認させて貰うとしよう」


 リエラちゃんは袋を開いて中身を確認する。中身を取り出して目を凝らして確認しているわ。偽物だと困るものねぇ。ところでリエラちゃんの手が震えてきてるけど大丈夫かしら。

 確認が終わったのか、リエラちゃんは宝石をしまってこっちを見て口を開く。


「これは、ダメじゃ……」

「え!? 偽物って事ですか……?」


 それは残念ねぇ、神様でも偽物を持っちゃうくらい大変な世界なのねぇ。


「違う、そうではない。これをしかるべきところで換金したら……ぬしら一生遊んで暮らせるぞ」

「え?」

「あらぁ、雫たち大金持ちになっちゃうのかしら」

「路銀が欲しいってお姉ちゃんが言っただけなのに……」

「少なくとも路銀ってレベルではないの。国宝ってレベルじゃ」

「じゃあ、お金どうしよう……」

「まぁ金ならわしも持っておるから気にするでない。これはしまっておくとよいぞ」

「それなら尚更、これはリエラにあげます」

「わしが持ってても魔術の研究で砕くだけじゃ。軽く使うにはちょっと勿体ないの」

「蒼ちゃん、一旦持っておいて、冒険者になって稼いだらリエラちゃんにお返ししましょう?」

「そうじゃの、そしておくれ。今日のところは金庫にしまっておくとよい」

「分かりました……。しまっておいてください」


 納得したのか、蒼ちゃんが一旦……とリエラちゃんに袋を差し出す。頷いて袋をしまいに行くリエラちゃん。

 雫たちは朝食を食べ終わり、ごちそうさまをした。リエラちゃんは魔術を使って食器を片付けてくれる。洗うのとしまうのが一片に出来て便利ね。雫にも使えるかしら。


「それじゃ、座学を始めるかの。まずこの国の事じゃ」


 そう言って地図をテーブルに開いてくれるリエラちゃん。指で差しながら説明してくれる。


「まず、この国はアルメイン王国と言う。概ね地図の範囲が領土じゃ。そしてここが、今わしらがいる森。この辺りに家がある。森はかなり広いから他領にも広がっているのじゃが、この家の周辺はマイヤ領と言う。マイヤ領の領地邸を中心にマイヤの街があり、街がここになる」


 リエラちゃんは地図の一点に小さな宝石を置いてくれる。綺麗な宝石ねぇ。分かりやすい目印だわ。


「そこから東に行くとディオン領……アルデナ領と続く。アルデナ領の北にあるのが、王都と王国の直轄領じゃ」


 マイヤの街と同じように、街がある位置に宝石を置いていってくれるリエラちゃん。


「まず地理はこの辺りでいいじゃろう。今日行くのはマイヤの街じゃ」


 雫と蒼ちゃんは頷く。


「次に貨幣について説明する。使われている貨幣は五種類じゃ」


 リエラちゃんは五種類の貨幣を並べていく。十円硬貨みたいな色のと、百円硬貨みたいな硬貨。これは金貨かしら。キラキラするものもあるわ。


「ぬしらから見て左から銅貨、銀貨、小金貨、大金貨、白金貨となっておる。物によって異なるが、銅貨1枚から数枚で果物やパンと交換出来る。銀貨1枚で宿で一泊出来る程かの。三人で食事をしたら銀貨1枚でお釣りがくるくらいじゃ。交換率は銅貨五十枚で銀貨一枚、銀貨百枚で小金貨一枚と交換出来る。大金貨と白金貨はほとんど商人と貴族しか使わんからおいおい覚えておけばよい」

「な、なるほど……」

「今日は銅貨と銀貨だけ覚えればいいかしら。まだよく分かっていないけれど」


 難しい事はいつも蒼ちゃんがやってくれていたから、雫は銅貨でパンが買える、銀貨で食事が出来るって覚える事にしたわ。


「まぁ今日はわしが支払いをするから気にしなくてもよい。そのうち慣れていけばよいからの」


 それから、街には外壁があり、門番さんが立っている事や、街や家の中の設備の話をして貰う。この国にも上下水道が整備されているところがあるみたい。雫たちの国には上下水道が完備されている事を話したらリエラちゃんが驚いていたわ。

 電気はなくて、魔力と魔術がその代わりになってるみたいね。電化製品の代わりに、魔術具っていうものがあるみたい。

 蒼ちゃんが言うには、文明レベルは近代くらいだって。

 リエラちゃんは雫たちの国の文明レベルがすごい高い事に驚いていたわぁ。確かにとっても便利だったけど、雫には難しくて原理とか説明出来ないのよぅ。ごめんねリエラちゃん。蒼ちゃんは知っている事を話していて、リエラちゃんと二人で楽しそうにしていた。雫はついていけないけど、聞いている分にはとっても楽しかったわぁ。


「さて、そろそろいい時間じゃの。街へ向かって、お昼ご飯を食べるとしようかの。それから買い物じゃ」

「はぁい」

「よろしくお願いします」


 雫たちは家を出る。リエラちゃんが玄関扉に手をかざすと、光って陣が浮かび上がった。これで鍵が出来たらしいわ。魔術って便利なのね。鍵を忘れる心配がないもの。

 そしてリエラちゃんを先頭に森を進む。10分くらいで森を出て、街道を歩き出す。道ではご飯とか、ファッションとか、そういう雫でも分かる話題を三人で話しながら歩いたわ。気を遣ってくれてありがとうね。




 二時間近く歩いて、マイヤの街と思しき街の外壁へ辿り着く。話しながら歩いていたから、ちょっと疲れたけどあっという間だったわね。リエラちゃんが疲れたじゃろうって回復魔術をかけてくれたら、疲れがなくなったわ。私でも使えるようになるのかしら。使えるようになったら蒼ちゃんも癒してあげられるし、嬉しいわぁ。

 門にたどり着くと、鎧を着て槍を持った門番さんがいるわ。こっちを見て警戒していたけど、一緒にいるリエラちゃんを見て話しかけてきたわ。


「おう、リエラ嬢ちゃん、久々だな。そっちの二人は知り合いかい?」

「そうじゃ、一緒に暮らす事になったシズクとアオイじゃ、よろしくの。わしが保証するから通ってよいか?」

「あぁ、嬢ちゃんが言うなら問題ない」


 そう言って門番さんから警戒が消えて通してくれる。リエラちゃんって何者なのかしらね。不思議に思ってリエラちゃんを見ていたら、こっちに気づいたのか説明してくれたわ。


「昔世話しての、それ以来よくしてくれているんじゃよ。さて、中へ入ろうかの」


 昔ってどれくらい前なのかしら。

 門をくぐると、石造りや木造りの家が並んでいて、情緒あふれる石畳の道が続いていた。これは素敵ねぇ。どんなお店や品物があるのかしら。なんだかワクワクしてくるわぁ。

 蒼ちゃんも楽しいのか、そわそわしてるわぁ。頭があっちこっちと揺れててかわいいの。


「まずは腹ごしらえかの。露店とレストランどっちがよいかの?」


 リエラちゃんの質問に雫はすぐさま答える。


「露店がいいわぁ。色々あって楽しそうだもの」

「私も露店で!」


 蒼ちゃんも露店がよかったみたい。どんなお店があるかしら。見た事ない食材はあるかしら。

 リエラちゃんに案内されて私たちは街の奥へ進む。こっちは商業区と呼ばれる区画らしくて、商店や露店が多いとか。

 広場に着くと、たくさんの露店があった。串焼き……果物……あっちはパスタに、包み焼きもあるわぁ。

 雫と蒼ちゃんはそれぞれ気になって食べたいものをリエラちゃんに買って貰った。雫は薄い生地で、お肉や野菜を挟んだ包み焼きで、蒼ちゃんは串焼きにしたみたい。リエラちゃんはホットドッグみたいな食べ物にしていたわ。

 三人で広場のベンチに座って、リエラちゃんのお祈りを待っていただきますをする。

 何のお肉か分からないけど、味が濃くてソースがちょっとピリッとしていてとってもおいしいわぁ。野菜はレタスかしら。お口の中をさっぱりさせてくれる。

 蒼ちゃんが雫の手にある料理をじーっと見つめてくる。あ、これはあれね。


「お姉ちゃん、そっち一口ちょうだい」

「勿論よ」

「私もあげる、はい」

「ん……。このお肉もおいしいわねぇ」

「これ何の肉だろ……。ソースがおいしい」


 蒼ちゃんと二人で交換しながら食べる。

 やがて三人共食べ終わり、ごちそうさまをして立ち上がる。


「さて、次は服かの」


 そう言ってリエラちゃんは服屋さんへ向かい出す。雫と蒼ちゃんは付いて行く。途中、宝石店やアクセサリーショップなどがあったわ。門から広場までは食材のお店やレストラン、露店が多かったけど、今度の通りはファッションが多いのかしら。グループごとに分かれていて雫にはとっても分かりやすいわ。

 やがて服屋さんにたどり着く。


「まずはここじゃ。他の店も回るつもりじゃし、荷物はわしが収納出来るから気にせず、好きなものを買うとよい。金も気にするでないぞ」


 お店の中に入る雫たち。どんなお洋服があるのかと思ったら、雫たちの世界にあったものとちょっと似通っている。ブラウスやワンピース、スカートが多いかな。

 雫はいくつか気に入ったお洋服をカウンターに置いていく、蒼ちゃんも好みのを見つけたみたい。雫たちは双子だけど、ちょっと好みが違う。雫はフェミニンなものが好きで、蒼ちゃんはガーリーなものが好き。でも、たまにお洋服を交換したりするの。蒼ちゃんのお洋服も、雫はかわいくて好き。


「お姉ちゃん、この服お姉ちゃんが好きそう。どう?」

「あら本当ね。こっちのスカートは蒼ちゃんにどうかしら?」

「本当だ、これ好き。ありがとうお姉ちゃん」

「こんなに買って大丈夫かしら?」

「お金なら気にするでないぞ」

「でも悪いわぁ、さっきのご飯も出して貰っちゃったし……」

「余っておるから本当に気にするでないぞ」

「お金が余ってるって……。リエラって貴族なの?」

「元じゃがな。勘当された身じゃ」

「それじゃお金なんてないんじゃないの?」

「ふむ……。実は昨日ぬしらにも使った生活魔術があるじゃろう?あれ、わしが発明したんじゃ。国に報告して、その報酬が莫大でな。毎日遊び惚けても使い切れん」

「開発って、すごい」

「リエラちゃん、すごいのねぇ」


 開発するのがどのくらいすごいのか雫には分からないけれど、莫大な報酬って事はきっとすごい事なんだわ。

 そんな話をしながら、結局身一つでこの世界に来た雫たちには枚数も必要だろうというとこで、リエラちゃんに甘えてお洋服を買っていった。


 次のお店に行っても同じように気に入ったのを買っていく。このお店ではリエラちゃんもロリータ服を買ってた。昨日も今日も着ているし、好きなのかな。かわいいわぁ。

 

「リエラちゃん、そういうお洋服好きなの?」

「うむ、そうじゃ。貴族の着るドレス程かしこまってなく、でもかわいい。シズクとアオイもどうじゃ?」

「私はいいかな……。恥ずかしいし」

「そうねぇ、雫は似合うのがあったら着てみたいわねぇ」

「よしきた。わしが見繕ってやるから待ってるがよい」


 リエラちゃんは張り切って店の奥へ行ってあーでもないこーでもないと雫に着せる服を選んでくれる。

 そして何着かお洋服を持ってくるリエラちゃん。


「シズク、これならどうじゃ? 落ち着いた雰囲気が好みにも合うと思うのじゃが」


 そう言って持ってきたのは、リエラちゃんが着ているかわいらしい感じよりも落ち着いた、クラシックな感じのロリータ服だった。

 普段着ているものと雰囲気が似ているけれど、とっても華やかで、雫は一目見て気に入っちゃたわぁ。


「リエラちゃん、このお洋服すごく素敵だわぁ」

「そうじゃろう、そうじゃろう」

「買ってもいいかしら?」

「勿論じゃ。こっちはアオイにどうじゃ? ちらちら見ていたのは分かっておるぞ」


 リエラちゃんは目ざとく、ちらちらこっちを見ていた蒼ちゃんへ話しかける。私も気づいてたわよ。


「え、うん……。かわいい……」


 結局、蒼ちゃんもお買い上げした。黄緑色でフリルのたくさん付いた、とぉってもかわいいお洋服。

 雫たちはこうして三店の服屋さんを回って、そこそこの枚数のお洋服と下着を買った。リエラちゃんに教えて貰ったら魔術で洗濯も出来るし、これで大丈夫ね。

 ところで蒼ちゃんが雫の買った下着の色を気にしていたけど、着替えの時まで秘密よぉ。

 



 次に向かったのは日用品などのお店。タオルや食器などを買っていく。お皿を三人で色違いのお揃いにしちゃった。嬉しいわぁ。


「ずっと不思議なんだけど、リエラって、今まで買った荷物をかばんのどこに入れてるの?」

「これは魔術具のかばんでな、家一つ分くらいは入るのじゃ。おまけに重さも感じないし、劣化もしない」

「すご……」

「そんなかばんがあるのね。一杯入って便利そうだわ」


 驚いている雫たちに、リエラちゃんは手招きして小さな声で話しかける。


「本当はストレージという空間属性魔術じゃ。ぬしらも適性があったら使えるぞい。じゃが、知られると商売、誘拐、軍事利用、犯罪と色々面倒な事になるから、いつも魔術具のかばんという事にしておる」

 

 雫にも使えるかしら? そう思っていると再びリエラちゃんが言う。


「そろそろ疲れたじゃろ? 回復してもよいが味気ない。食材を買って帰る前にカフェで休むかの」

「雫はまだ平気よぅ」

「私はちょっと休みたいかな」


 そんな話をしながら、休もうって事になってカフェに向かう事にしたわ。その途中のお店で、ショーウィンドウにかわいらしい表紙の本が目に付いた。


「あれ、何かしら?」

「あれは魔術具の日記帳じゃの。その日の出来事など、思った事を記録する。あの厚さなら10年程記録出来るかの」


 日記帳……。雫は毎日の出来事を忘れないように日記に書いていたけど、こっちに転移した時に日記帳を持っていなかったから、今は手元に書くものがない。


「リエラちゃん、お金は必ず返すから、私あれが欲しいわぁ」

「構わんぞシズク。買ってやるぞ?」

「ううん、払いたいの」

「分かった。ちょっと待っておれ」


 そう言って店内へ買いに行ってくれるリエラちゃん。店員さんがショーウィンドウから引き下げるのを店外から見てたら、リエラちゃんがその日記帳を持って出てきてくれる。


「ほれ、使い方は開いて、手を記録したいページに置いて思いを巡らせるだけじゃ」


 雫はお礼を言って買って貰った日記帳を抱きしめる。早速今日から使いたいわ。楽しみ。




 カフェでは三人で紅茶とケーキを食べながら、今日買ったもので不足はないかの確認と、あれがよかったこれがよかったと話しながら過ごした。

 ケーキはベリーのタルトを食べた。酸味の強いベリーと甘みの強いベリーが乗っかって、それがバランスよくまとまっていてとってもおいしかったわ。蒼ちゃんからチーズケーキも貰ったけど、そっちも濃厚ですごくおいしかったわ。リエラちゃんがうらやましそうに見ていたから、雫はリエラちゃんのショートケーキとも交換したわ。クリームが甘くてこっちも負けずにおいしかったわぁ。




 商業区の広場に戻り、別の道を進む。すると様々な食材を売っている市場があるの。リエラちゃんは次から次へと食材を買っていく。そんなに食べられないんじゃ……、それに傷んじゃうって思ったけど、魔術でしまうから傷まないんだったわ。本当に便利ね。

 お野菜、お肉、果物、調味料を買って雫たちは市場を後にする。


「もう買い忘れはないかの?」

「さっきも確認したし、大丈夫だと思う」

「食材も一杯あるし大丈夫よぅ」

「まあ足りなければまた来ればよいの」


 本当は大荷物なんだけど、雫たちは来た時と同じ軽装で街を後にする。楽しい事がたくさんあったし、リエラちゃんに回復魔術を使って貰ったから疲れ知らずで森へ向かう。二時間程歩いて森へ着く。森の中ではリエラちゃんに先導してもらう。迷ったら危ないから、これで大丈夫ね。

 そして、リエラちゃんの家に帰ってきた。リエラちゃんは扉に手をかざして鍵を開ける。家に入ったらリエラちゃんは言う。


「いつまでも客間じゃ悪いしの、部屋を用意したからそっちに行こうかの」


 言われて雫と蒼ちゃんはリエラちゃんに付いて行く。階段を上がって、昨日案内された客間の反対側の部屋の前に立つ。


「わしの部屋はそっち。その隣が書斎じゃから、ここの二部屋をぬしらにあてがおうと思う」


 リエラちゃんはそう言って二つの部屋の扉を開ける。ベッドと机、クローゼットのある、綺麗に掃除されている部屋。窓も大きい。

 蒼ちゃんの部屋は薄緑で、私の部屋は水色が基調だわ。かわいい。


「二人の荷物はそれぞれのベッドの上に置いておく、後は各々好きに片付けたらよい」


 リエラちゃんは蒼ちゃんの部屋と雫のベッドの上にそれぞれの荷物をぽんぽんと置いていってくれる。ストレージって整頓も出来るのかしら。

 雫と蒼ちゃんが各々の部屋で片付けていると、階下からリエラちゃんが夕飯が出来たと呼んでくれる。

 今日のメニューはサラダと魚のソテーだった。いただきます。何の魚か分からないけど、白身魚ね。さっぱりしてておいしい。酸味があるのはマスタードかしら。

 雫と蒼ちゃんはおいしいとリエラちゃんに言いながら食べて、ごちそうさまをしたわ。


 リエラちゃんに頼んでお風呂の魔術を使ってもらう。一日外で歩いていたから、とってもさっぱりする。今日は寝巻を買ったから、寝るときに着替えましょう。


「明日、まず一番に魔力操作と生活魔術を教えるから、もう一日我慢しておくれ」

「雫はこれもさっぱりするし、楽しいわよぉ」

「私はお風呂に入りたい」

「でも確かにそうねぇ。明日魔術を覚えたら一緒に入りましょうねぇ」

「……広かったらね」

「自慢じゃないが風呂は広いぞ。三人でも問題ない」

「嬉しいわぁ」

「リエラも入るの!?」

「楽しそうじゃない」

「恥ずかしいから、私は一人で入る……」

「えぇ……。蒼ちゃんのいけず」

「はいはい、ごめんなさいね」


 リエラちゃんはそのやり取りを聞いて笑っている。雫も楽しい。お風呂一緒に入れるといいな。雫たちはそんな話をしながら就寝準備を整えていく。

 おやすみ。そう言ってリエラちゃんが雫と蒼ちゃんに挨拶する。雫も蒼ちゃんにおやすみを言って新しく用意して貰った自分の部屋に戻る。

 寝巻に着替えて、ベッドの上でリエラちゃんに買って貰った日記帳を取り出す。


 ふふ……。今日も楽しかったわぁ。

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