第13話 世界は目の前に道となり……


★「おしゃれ」「お母さん」→マンモス白珊瑚の森に住む。おしゃれ金平糖ウミウシ。

★「いちご」→船形石珊瑚に住む「おしゃれ」の心友。いちごジャムウミウシ。

★「兄」→マンモス白珊瑚の森に住む14匹の魚たちの長男。青くて大きめの魚。過度の心配性の特徴あり。

★「妹」→マンモス白珊瑚の森に住む14匹の魚たちの末っ子。オレンジ色の小さな魚。しっかり者の性分。



珊瑚の海。


険しい岩礁地帯。


深海の暗い海底。


太陽がまぶしく照りつけるエメラルドグリーンやオーシャンブルーの水の色。


マグロやサンマの群。


イルカやクジラ。


イカの大群や飛び魚たちが回遊していく姿。



ゆっくりと確実に船は進み、そして船を包み込む外側の海の世界の景色が、変わっていく。《星の船》は、隙間からのぞいている「兄」の前から少しも動いていないのだが、「兄」の目の前で、変わっていく海の景色はとても雄大であり、生命の神秘に満ちている。


船はやがて、水しぶきをあげて、水の大循環の中を通っていく。

海の世界が真っ直ぐにどこまでものびている。

世界は、目の前に道となり、どこまでも立ち並んで続いていく。


《星の船》は、真っ直ぐに進むだけでいいのだ。

なぜなら海の世界はそれに従うのだから。

例え円い世界であろうとも、《星の船》の進行通りに世界は、動いてくれる。


「兄」は、向こう側の世界をのぞきながら、そう感じていた。


一秒、一分、一時間が、同じ意味を持ち、同じように時を分かつ。

そんな時の巡りの足音が聞こえてきそうだ。

限りない海の大きな呼吸に包まれて、《星の船》は、まるで世界をひと巡りするかのように、流れて行くようである。


「兄さん、そんなところで何してるの? 」


妹の声に「兄」は、我に返った。


「また夢でもみてたんでしょう。兄さんは、考えこんでいるうちに、ところかまわず寝てしまうんだからいけないわ。しっかりしてよ」


「兄」は、ようやくハッキリしてきた頭を海草から離して、ヒレを動かし「妹」の方を向いた。


「ああ、ごめん。何だか長い間眠ってしまったようだね。迎えに来てくれたのかい。今夜は一緒にいちごさんの所へ行くんだったね」



〈続く〉

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