第12話 光のシルエットの中に
★「おしゃれ」「お母さん」→マンモス白珊瑚の森に住む。おしゃれ金平糖ウミウシ。
★「いちご」→船形石珊瑚に住む「おしゃれ」の心友。いちごジャムウミウシ。
★「兄」→マンモス白珊瑚の森に住む14匹の魚たちの長男。青くて大きめの魚。過度の心配性の特徴あり。
★「妹」→マンモス白珊瑚の森に住む14匹の魚たちの末っ子。オレンジ色の小さな魚。しっかり者の性分。
そうこうしているうちに、次第に海の水が頭の中に深く浸透してくるのが分かる。
「兄」は完全に目を回した。
そして、いびつな円を描いてふらつきながら、海草に突っ込んで行った。
静止した「兄」の頭が、海草に寄りかかるようにして、斜めに体をよじって、うなだれている。今まで頭に浮かんでは消えて行ったハッキリしないイメージの断片が、
「兄」の頭の中で小魚たちの群のように素早くまとまり、やがてそれは大きな一匹の魚のように、鮮やかにたくましく泳ぎはじめる。
――海草が揺れている。足の長い海草は群になり、「兄」の目の前をふさぐように、横へ広がっている。その揺れる海草の隙間から、まばゆいばかりの光が差し込んでくる。「兄」はしきりに、海草の隙間からもれてくる光に顔を押しつけて、向こうの景色をのぞこうとする。しかし、あまりのまぶしさに目がくらんで、前を思うように見ることができない。
「兄」は、勢いよく海草の中に飛び込み、向こう側に抜けようとする。
だが、海草の群は思ったよりも厚く密集して立ちはだかり、「兄」を緑の部屋の中に閉じ込めて、向こう側には決して通そうとしない。
仕方なく「兄」は引き返して、また光りの洩れる隙間に顔を近づける。
すると、光のまぶしさは先ほどと変わりがないのに、向こう側の光景が光のシルエットの中に、少しだけ、見えてくる。
……そう、光の中に、《星の船》が浮いている。
とても明るい世界。
影が一つも見当たらなくて、水の色も、生き物の姿も、岩や珊瑚や石や砂も、みんな輝いている。
《星の船》は、光の海を進んでいく。
どんどん進んでいくのに、《星の船》は「兄」から離れていかずに、船の周りの光景だけが、潮の満ち引きに合わせて、船の後ろに遠のいていく。
〈続く〉
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