第11話 危険でハードボイルドな「兄」?
★「おしゃれ」「お母さん」→マンモス白珊瑚の森に住む。おしゃれ金平糖ウミウシ。
★「いちご」→船形石珊瑚に住む「おしゃれ」の心友。いちごジャムウミウシ。
★「兄」→マンモス白珊瑚の森に住む14匹の魚たちの長男。青くて大きめの魚。過度の心配性の特徴あり。
★「妹」→マンモス白珊瑚の森に住む14匹の魚たちの末っ子。オレンジ色の小さな魚。しっかり者の性分。
そうかと思うと、行ってはいけないと「お母さん」から言われていた海の底に沈む船の中に、もしかしたらお母さんはそこで何かおっかない生き物に捕まって、無理やりに、泳げもしないのに泳いでみろなんて意地悪されているんじゃないか、と心配して中に入って行き、ほら、やっぱりいた! 悪の大魔王。と、何か勘違いされて迷惑がっているウツボと大喧嘩しては、胸ビレの先を噛みちぎられて帰ってきたこともあった。
心配な原因やその場所に自ら好んで飛び込んでいく。
もしかしたら「兄」は、心配というものがはらんでいるスリルとサスペンスに、
魚の一生というものをすべて投げ出せるほど、魅了されてしまっているのかもしれない。
「心配だから、このまま放っておけない、僕が行かなきゃ! 」
という心境に最後にはなってしまうのが「兄」の十八番。
その強い意志で、海面にぷかぷかと浮いて死にかけた状態から、不死魚のように甦る。そのうちに、「どうしよう。さあ、大変。このままでは、ああなってしまう」と、妄想たくましくして行って、やがて、だんだんと泳げるようになってくる。
そうしてまた、羽を風になびかせ、空から鳥が海面めがけて飛んできてクチバシを鋭く水に差し入れた瞬間、くるりと尾を返し、「兄」は潜っていくのだった。
これも、「兄」にとっては、心配と妄想を使い自らが体験するスリルとサスペンスのうちなのだろう。
考えようによっては、危険でハードボイルドな「兄」なのだが、
白珊瑚の森に住む兄弟たちからは、「心配がりやの兄さん」としか理解されていなかった。
問題は《星の船》だった。
「いちご」さんが暮らしているあの大きな船形の石珊瑚なのだ。
「兄」は、そばで揺れている海草の周りをしきりに回ってみる。
そうやっていると、頭の中までぐるぐると回る。
〈続く〉
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