第9話 星の船の出番
★「おしゃれ」「お母さん」→マンモス白珊瑚の森に住む。おしゃれ金平糖ウミウシ。
★「いちご」→船形石珊瑚に住む「おしゃれ」の心友。いちごジャムウミウシ。
★「兄」→マンモス白珊瑚の森に住む14匹の魚たちの長男。青くて大きめの魚。過度の心配性の特徴あり。
★「妹」→マンモス白珊瑚の森に住む14匹の魚たちの末っ子。オレンジ色の小さな魚。しっかり者の性分。
そしていつの間にか、解きほぐしがたかった《自分の現在》をひもとき、
ウミウシらしい「未来への一歩」を、自然に選択しはじめる。
「いちご」は、急に歌いやんだ。何か思い出してきたようだ。
振り向きざまに、「妹」に言った。
「ああ、そうだったわ。おしゃれは元気? 」
「妹」は、マンモス白珊瑚の森で、ずっと珊瑚の枝に寄り添ったまま、
ボーっとしている「お母さん」のことを詳しく話した。
「そうなの。それは大変だわ。でももう安心して。実はね、彼の居場所が分かったの。きのう、飛び魚の郵便屋さんが教えてくれたわ。彼はいま、旅に出てるの」
「やっぱり、お母さんは、コイしてるんだ。お相手の方は誰なのでしょう? 」
「あまり知られていない方よ。《ターコイズブルーウミウシ》って言うのよ。さあ、一刻も早く「おしゃれ」を彼に会わせなくちゃ。いよいよ、星の船の出番だわ。あなたたちも、手伝ってね」
どうやら「いちご」さんは、コイをしている相手の方に「お母さん」を会わせようとしているらしい。そのために、星の船を使うつもりなんだ。と、「兄」と「妹」は、なんとなく理解した。
船形の大きな石珊瑚、つまりは、《星の船》の上で、三匹は、はるか海面の上から差し込んでいた光の帯が、いつの間にかうす赤い細やかな何本もの糸となり舞い降りはじめているのに気がついた。辺りが暗くなりかけた海の底で、かすかに降り注ぐ光の糸は、交差したり、絡み合ううちに、やがて束になり、一本の太い光線に変わって行った。
その光の中で、三匹は、頭上の海面の裏側に映っている赤い満月を、しばらく眺め続けていた。
〈続く〉
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます