第8話 未来への一歩
★「おしゃれ」「お母さん」→マンモス白珊瑚の森に住む。おしゃれ金平糖ウミウシ。
★「いちご」→船形石珊瑚に住む「おしゃれ」の心友。いちごジャムウミウシ。
★「風船ウミウシ」→体を丸めて転がって移動する珍しい種族。みんなからスーパーウミウシとあがめられている。
★「兄」→マンモス白珊瑚の森に住む14匹の魚たちの長男。青くて大きめの魚。過度の心配性の特徴あり。
★「妹」→マンモス白珊瑚の森に住む14匹の魚たちの末っ子。オレンジ色の小さな魚。しっかり者の性分。
何か捉えどころのない、得体の知れない生き物? そう「兄」に思わせてしまうほど、風船ウミウシこと「ふうせん」の存在は突拍子もなかった。
もちろん、「おしゃれ」にも「いちご」にもそんなところがあった。
「何考えてるの? お兄さん」
一点を見つめたまま、ヒレも動かさずに少しずつ潮に流されていく「兄」を、
怪訝そうに「妹」が覗き込んだ。
「なんでもないよ」
そう言って、「兄」は背ビレをピンと張ってゆらし、
ツーっと真っ直ぐ「いちご」と「妹」の前まで泳いできた。
「どうもいけないね。ときどき知らない間に流されていることがあるんだ」
「兄」は、何気なくうつむいて、ふぅーと息を吐いた。その拍子に海底の砂がパッと舞い上がる。
「それにしても、いちごさん。この星の船を、奪い取ろうとするものが、後をたたないのは、なぜでしょう? 」
舞い上がった砂が、頭上から光ながらゆっくりと落ちていく光景を、
同じように眺めている「いちご」に向かって、「妹」がずっと頭の奥からはなれずにいた疑問を投げかけた。
「いちご」は、いつの間にかキラキラと落ちていく砂の下に、いそいそと這って行って、身にふりかかるキラキラにうっとりして、海の明るい上の方を仰いでいた。
海面に光がにじんで、海底に差し込んでくる明かりは、振り子のように揺れている。
いつものように15秒で「いちご」は我に返った。
もう一度同じことを言おうと思い「妹」が口を開いたとき、「いちご」が歌を歌いはじめた。
そう《体に感じたことを15秒で忘れる》「いちご」が、いったい今、自分は何をしていたんだろう、と考えに考えた末に何もかもが分からなくなった精神状態におちいると、自然と歌がでるのだ。
歌い終わると不思議に「いちご」は、冷静さを取り戻している。
〈続く〉
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