第5話 イシガキ竜宮ウミウシ現れる

★「おしゃれ」「お母さん」→マンモス白珊瑚の森に住む、星形のウミウシ。おしゃれ金平糖ウミウシ

★「イシガキ竜宮ウミウシ」→ウミウシ仲間から恐れられている共食いする怖いウミウシ。

★「兄」→マンモス白珊瑚の森に住む青くて大きめの魚

★「妹」→マンモス白珊瑚の森に住むオレンジ色の小さな魚



ついこの間、こんなことがあった。


白々と月明かりが差し込む夜、マンモス白珊瑚の森が、恐怖につつまれた。

そう、イシガキ竜宮ウミウシが森の中に、入ってきたのだ。


イシガキ竜宮ウミウシは、お腹がすいていようものなら、同じウミウシの仲間を、

ところかまわず丸飲みにしてしまうことで有名だった。


「兄」や「妹」をはじめとした14匹の魚たちは、いち早く「お母さん」に知らせ、

白珊瑚の森から、そっと非難させた。


マンモス白珊瑚の森の裏には、長い岩礁にはさまれた、回廊のような一本砂の道が通っている。そこを抜けると、透明な海水を透かして、遥か遠くに渦を巻き流れる潮流を遠目で見ることができる、広々とした海の世界が広がっている。


回遊魚のマグロやシマアジ。まるで流れ星が海水の中を流れていくように、発光して光るホタルイカの群。飛び魚やイルカ。

そして、潮流の向こうには、巨大なマッコウクジラの群が霞んで見える。


おしゃれ金平糖ウミウシは、一本の砂の道をゆっくりゆっくりと移動していく。

白珊瑚の森に住む魚たちは、「おしゃれ」を囲むように頭上や海底を泳いでいる。


「お母さん、さあ、がんばろう」


「お母さん、今夜は月がよく見えますよ。散歩にはもってこいです」


魚たちは、口々に、「おしゃれ」を励ました。


「おしゃれ」は、目の前に寝そべっているヒトデを乗り越えようとして、

ヒトデの上をそっとぬたって行ったのはいいが、かえってヒトデの方でくすぐったがって身をよじらせたので、お互いにもつれ合ってしまった。


そんな時は、魚たちが口をそっと「おしゃれ」に近づけて、体勢を直すのを助けてくれる。



〈続く〉

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