第6話 イシガキ竜宮ウミウシの猛進


★「おしゃれ」「お母さん」→おしゃれ金平糖ウミウシ。マンモス白珊瑚の森に住む。

★イシガキ竜宮ウミウシ→ウミウシながらにウミウシが大好物。みんなから恐れられている。

★「兄」→マンモス白珊瑚の森に住む青くて大きめの魚。

★「妹」→マンモス白珊瑚の森に住むオレンジ色の小さな魚。



気を取り直して、少し進むと、今度は小さな蟹が飛び出してきた。

その蟹は「おしゃれ」と顔見知りだったから、久しぶりなんて、立ち話をはじめると最後、その場をずっと動かなくなってしまう。


そんな時も、魚たちの中から、スィーと誰かが泳いでいって、蟹と「おしゃれ」の間に割って入り、もうそろそろ…………おいとましましょうかね、とうまく切り出しては、話を切り上げる手助けをしてくれる。


そうこうしているうちに、魚たちの表情が、突然かたくなった。


瞬間、どの魚もエラやウロコに息苦しさを感じる。

背後に目を向けるまでもなかった。殺気だった何かが、すぐ後ろでメラメラと燃え盛っているのを感じる。


「お母さん、はやく前に進んで!」


「ずっと、はやくよ。もっと早く、前へ! 」


魚たちは、そう絶叫すると、「おしゃれ」の後ろに全員でぴったりと寄り添い合い、

敵をお母さんには近づかせまいと通せんぼした。


それでもイシガキ竜宮ウミウシは、魚たちの体を張っての通せんぼをものともせずに、鋭利な角の生えた頭を、魚たちの体と体の隙間に差し入れ、首をぞんぶんに振って、魚たちを蹴散らしはじめた。


たちまち、魚たちの寄せ合っていた体は、離れ離れにされた。


もう、イシガキ竜宮ウミウシを止めることは、誰にもできなかった。

見る間に「おしゃれ」の背後にヌッと近づいた。

その黒々としたとがった影が、二倍に膨れ上がっている。

頭には二本の漆黒の角をはやし、背には鶏冠のような鰓をギラギラとはためかせ、

お腹には太くて黄色い筋を、しっぽの先まで伸ばしている。



〈続く〉

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