第3話 苺ジャムウミウシに会いに行く
★「兄」→青い大きめの魚
★「妹」→オレンジ色の小さな魚
★「いちご」→苺ジャムウミウシ
かすかに光が水底に差し込んできた明け方のこと、
マンモス白珊瑚で暮らす二匹の魚は、苺ジャムウミウシに会いに行った。
二匹の魚というのは、「心配性の兄」と「しっかり者の妹」のことだ。
「兄」と「妹」が、苺ジャムウミウシが暮らしている大きな船形の石珊瑚の上まで泳いで行くと、苺ジャムウミウシは、その上で、小さくとろけていた。
まるで赤いゼリー状のものが熱で溶け出して、平べったくなってしまったような状態だった。
だから二匹の兄弟がそれを「いちご」と判断するのには、かなりの時間を費やした。
二匹の兄弟はやっと「いちご」を見つけた。
同時に、とろけてしまった「いちご」のすぐ上を円を描くように泳ぎ回っている
一匹のエイがいることに気がついた。
「兄」と「妹」がツーっと、とろけてしまった「いちご」のそばまで近づいていくと、頭上で泳いでいたエイは、顔をぐるりと囲んでいるひらひらしたヒレのようなものを、波のように揺らめかせて、遠くへ行ってしまった。
いつの間にだったろう。
とろけてしまっていた「いちご」が風船のように膨らんで、ムクッと起き上がったのは。
「ふーぅ。死んだふりも疲れるわね。あらっ。あなたたちだったの。来てくれたおかげで助かったわ。エイのヤツ、いつまでもグズグズと動かないんですもの」
唐突にしゃべりはじめた「いちご」に「兄」も「妹」も驚きを隠せない。
「びっくりしましたよ。もう死んでしまったのかと思った。死んだふりなんて、いちごさんも、なかなか悪いなあ」
「あいつ、わるいやつなんでしょ。わたし、見ただけで分かったわ。いちごさん、あいつの毒にやられてしまったのかと思った。でもよかった。またお話しができて、うれしいわ」
「いちご」の鼻先で「兄」と「妹」が笑顔を見せた。
二匹の笑顔につられて、「いちご」は、先ほどあったことを、話しはじめた。
どうやらのエイは、「いちご」の暮らしているこの船形の石珊瑚を奪いに来たらしいのだ。それで「いちご」は三度もエイの尾の先の毒針を身に浴びたのだという。
だが、「いちご」には、《15秒で体に感じたことを忘れる》という習性があった。
〈続く〉
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