第2話 「おしゃれ」の異変

★「おしゃれ」「お母さん」→おしゃれ金平糖ウミウシ

★「心配性兄さん」→青い大きめの魚

★「しっかり者の妹」→オレンジ色の小さな魚



マンモス白珊瑚で暮らす14匹の中で、一番大きな青い魚の「心配性兄さん」が、

珊瑚の森の中で、空気の玉のようになってボウッと佇んでいる最近の「おしゃれ」の異変にいち早く気がついて、口をパクパクさせて、まくしたてた。


「兄さん、そんなに心配しないで。わたしも、最近のお母さんのご様子がおかしいことくらい、気がついていたわ。なんとなく、原因だってわかっているのよ。だって、女同士ですもの。病気じゃないから、兄さんも心配しないで。でも、ちょっと、たいへんなことだと思うの」


産まれたのが14番目の、オレンジ色した一番小さな「しっかり者の妹」がそう言って、「兄」をさとした。


「病気じゃないっていうのかい? じゃあ、いったいなんなの? えーい、じれったいな。もっとこっち。兄さんのそばまで泳いで来てごらん。そして話して聞かせてごらんよ」


さっそく「妹」は、ツーっと「兄」さんの耳元まで泳いで行った。


「コイよ。……兄さんも聞いたことあるでしょ。コイに落ちたら、決して引き返せない。海の生き物たちが、死ぬまでに一度は経験すると言われている試練のことを」


「まさか、お母さんは、あれにかかってしまったのかい。だとすると……大変じゃないか」


「…………」


「…………」


「とにかく、何か僕たちで母さんの手助けになることを考えなきゃ」


「ほんとうに、そうね……」



〈続く〉

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る