おしゃれこんぺいとうウミウシの恋

夢ノ命

第1話 マンモス白珊瑚の森の仲間たち


★「おしゃれ」「お母さん」→おしゃれ金平糖ウミウシ★




「おしゃれ」は、マンモス白珊瑚の森の中で、

繁る白い枝々の一本に、身を添わせている。


この「おしゃれ」の暮らしている白珊瑚の森は、

「おしゃれ」の他にも、白や、青や、黄色や、

オレンジの色とりどりの可憐な魚たちが暮らしていた。


「おしゃれ」は、この小さくカラフルな魚たちのことを、

卵からかえり、産まれたての頃から知っている。


どの魚たちも、母親の後をついて遊泳している時に、

みんなとはぐれてしまったのだ。


一匹で寂しそうにうろうろしている小魚を見ると、

「おしゃれ」は何だか、無性にかまいたくなってしまう。



「おまえ、そんなところで何しているの?」


「…………」


「群からはぐれたんでしょう?」


「…………」


「これからどうするの?」


「…………」



「おしゃれ」は、そのまま迷子になった魚の子を引き連れて、

自分の暮らしているマンモス白珊瑚の森へと戻ってくる。



「ここはプランクトンが豊富なだから、食事には不自由しないわ。

 ねっ、自由にここで、お暮らしなさい。大丈夫。強制はしないから、安心して。

 出ていくのも、いつでも自由よ」


と、「おしゃれ」は、魚の子にそう告げ、後は放っておく。


時が経つにつれ、魚の子たちは日増しにどんどん増えていった。

そうして今、マンモス白珊瑚の森には、大小様々な14匹の魚たちが暮らしている。


大きく成長していって、大人の魚になったものもあれば、

子供の時と同じ姿のままの魚もいる。


そんな14匹の魚たちはいつしか兄弟のように絆を深め、親しくなった。


マンモス白珊瑚で暮らす14匹の魚たちは、「おしゃれ」のことを「お母さん」と呼んだ。


「たいへん、たいへん! お母さんがいつにもまして、すごくふにゃふにゃのご様子だ。それに目があんなにトロンとして。さっきから口も聞かずに、動かない。きっと、何かの悪い病気なんだよ。どうしよう? ああ、こうしちゃ、いられない。さあ、なんとかしなくちゃ。それにしても、よくお前たちは、ジッとしていられるよ。本当に気が知れない。もうお母さんが死んでしまったら――ほら、あんなに動かないで。どうしよう。もう、こうしちゃ、いられない。早く元気が出るように、すぐそこの岩礁まで行って岩ゴケをたんととってこなくちゃいけない。お前たちも、もっと気をきかせなきゃ。どうしよう? 」



〈続く〉

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