第11話 本当のクズは…俺だ



さぁ今日が勝負の日だ。


「それじゃ、行ってきます」


「随分と朝早くから出かけますのね」


「まぁな…今日は色々と忙しいんだ」


「まさか、あの二人と用事があるとか言いませんわよね?」


「それは無い、昨日誓っただろう『マリアだけを愛す』ってな…そう言えばマリアから『愛している』と言われてないよな」


「全く、口に出さないと駄目なんですの?」


「言ってくれると嬉しい」


「愛してますわ」


「絶対に?」


「もう恥ずかしいですわね…絶対に愛してますわ…これで良いんですの?」


「ああっ、行ってくる…そこのバスケットにサンドイッチが入っているから、朝食とお昼にして、まだ体調だって本調子じゃないんだからゆっくりして…」


「その割には随分と色々な事しましたわね」


「まぁ、その…」


「うふふっ冗談ですわ…行ってらっしゃい!」


マリアの笑顔に見送られ、俺は最後の大勝負に出掛けた。


俺が今回した事は…かなりのクズだ。


簡単に言うなら『手の届かないマドンナ』に自分の所まで降りてきて貰う。


俺の前世のクズが良く使った手だ。


裏で攫って沢山の男に輪姦させたり、事故を起こして歩けなくしたり、顔に一生残る傷を作る。


方法はさまざまだが『人間の価値』を落とし…更に落ち込んでいる時に近づき信頼を得て自分の物にする…昭和の悪党の良く使う手段だな。


さらに言うと…俺はこれに麻薬やら媚薬を用意していた。


これで三人をと思っていたが、やはり俺には三人を手に入れハーレムを…なんて出来なかった。


まさか、あそこで逃げ遅れるだけでなく…擦り付けまでやる程、あいつ等がクズだとは思わなかった。


同じ位クズな俺にはそれを咎める権利は無い。


まぁ、まだガキだから『自分の命が大事』それは解るがな。


まぁギャルゲーで言うなら、ハーレムルートを目指していたが気がついたらヒロインルートしか選べなくなった。


そういう事だ。


まぁ、それで良い。


三人の中で一番綺麗で可愛いのは間違いなくマリアだ。


実際にガイアが一番好きなのはマリアで間違いない。


それを取り戻せたんだから…もう充分だろう。


◆◆◆


「流石のガイアも眠そうだな」


「ふぁ~あ…まぁマリアの事もあったしな、だけど凄いな…此処、同じエルフでも、こう格が違うというか…まあ最高だったよ」


「そうか…それは良かったな…流石に疲れているだろうから、今日は休むだろう?」


「いいや、昨日相手してくれた子ティファーにが凄く可愛くてな、今日の予約を入れてしまった」


はははっ俺がお金出すのに…勝手に…まぁ良い。


「それで、書類の方は書いてあるのか?」


「ああっ、書いてあるぞ、ほら…」


「あれっ、何で、エルザとリタの署名まであるんだ」


「ああっ、朝一で用意する約束だったからな…少し待ち時間があったから、いったん戻って書類を書いて、二人にサインをさせてきたんだ」


「そうか…随分早いんだな」


「まぁな、あんな気持ち悪い女、少しでも一緒に居たくないからな」


自分達で擦り付けをしておいて、それかよ。


まぁ良いけどな。


俺はガイアから正式に『マリアのパーティ追放届け』を受け取った。


「それでガイアはこれからどうするんだ?」


「それで相談なんだが…此処昼間も営業しているんだよ」


「はぁ…それで?」


「24時間コースって言うのを特別に良いって言われたんだけど…お金用意できるか?」


「どうしてもと言うなら、どうにかするが…そんなに出来るのか?他の女にしないで良いのかよ」


「ああっ、ティファニーが凄く可愛くてなぁ、もう他の女は要らない位だ」



これはワンチャンあるか…いや、やめよう。


「そうか…それじゃ金貨20枚(約200万)渡しておくからこれで暫く遊んでいてくれ」


「良いのか?」


「ああっ、ただマリアの憎しみが凄く強いから、パーティを独立して暫くは別行動だな…一応、それが今の俺のほぼ全財産だから…大切に使ってくれ…あとパーティからの独立する書類も悪いが今作ってくれるか?」


「ああっそうだな、此処じゃなんだから中に入ろうぜ、ペンと紙貰って直ぐに書くよ」


「ああっ…頼む」



うん、かなりクズに育ってきたな。


まぁ…金が無い宣言したからガイアの性格からして暫くは俺に何か言ってこないだろう。


書類を書くと俺に渡してガイアはまた店の奥に消えていった。


娼館の店員と目が合った。


「参考までに聞いておきたいが…ガイアが嵌まっているエルフの子って身請け金幾ら位なんだ」


「ああっ、それなら金貨300枚(約3000万)ですね」


エルフにしては安い気もするが…高いな。


「結構安いんだな」


「結構、歳くってますからね…まぁそれでも寿命は200年は有るから人族なら充分でしょう、それに随分長い事働いているから、流石に借金も減ってますから…買いますか?」


「いや…ガイアがどうするかだな…俺はパーティで会計しているだけだからな」


「なんだ…正直に聞くけど、買うお金はパーティにあるの?」


「まぁ…余裕であるよ」


「へぇ~そうなのか…まぁそのお金の出どころは聞かないですよ…」


勇者のお金は教会が出すから、青天井と言っても間違いない。


だが…それは前の世界でいう税金みたいなお金なので…馬鹿な事には使えない。


それが娼婦を身請け出来るお金があると聞けば驚くだろうな。


「教えてくれてありがとう」


そう伝えて俺は娼館を去った。


◆◆◆


娼館を去った俺はまず教会に行った。


「すいません、昨日の夜お願いした物は届いていますか?」


「ああっ聖女様、大変でしたね…事態が事態なので直ぐに届きましたよ…勿論、使用許可も下りています」


これは賭けだった。


確率は恐らく4割くらい…かなり大げさに話した結果が良かったんだな。



直ぐに、貰った小包を収納袋に放り込んだ。


「これを勇者ガイアから預かってきました…宜しくお願いします」


「これは?」


「さぁ?」


本当は剝き出しで貰ったが敢えて封書に俺はした。


しかも『願い』でなく『届け』で書いて貰った。


これで時間は稼げるな…


「解りました、勇者様の文ですので大司教様が戻られてから開封させて頂きます」



「頼みました」


そう伝えて、急ぎ教会を後にした。


その足で冒険者ギルドに向かった。


「すみません、パーティの新設の届けとメンバー移動の手続きをお願いします」


ギルドの受付嬢が驚いた顔をした。


「とうとう、追放されちゃったんですか? ですが…落ち込まないで下さい! 貴方が募集すれば 剣姫にアイスドール」


「それは俺の物語じゃない…それに俺は独立で追放じゃない、正式に勇者ガイアから許可を貰って別パーティを作るんだ」


「ああっ、そうなんですか? ええっー―――っ」


目が飛び出そうな位驚いている。


「聖女様を引き抜いて独立するんですか? これは教会もご存じなのですか?」


「先程、マリアのパーティ追放の届けは受け付けて貰った…ほらガイアのサインもある書類も持ってきた」


「本当ですね…解りました、それじゃ受付をします」


俺は自分とあらかじめマリアから預かった冒険者証明を渡した。


「書き換えですが…どうしますか?」


「リーダーはマリアで、俺がサブリーダー、まぁ二人だけどね」


「はい…それでパーティ名はどうしますか?」


決めて無かったな…まぁ良いや。


マリアって名前は前世だと有名な神様の母親だ。


聖女だしこれで良いんじゃないかな?


「『女神の微笑み』でお願いします」


「本当に…それで良いんですか?」


「はい…」


《今は良いかも知れんませんが歳をとった時どうするのかしら? まぁ面白そうだから敢えて言いません(笑)》


「はいどうぞ…手続きは以上です」


上手くいった…スピード勝負だったが、これでもう勝ちだな。


後はお面を買ったら終わりだ。



※次回で本編終了です、そのあと後日談や閑話を書く予定です。



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