第9話 マリア無残 破壊と喜び



俺は、バクベアーの体液から作られた防虫薬を自分に振りかけた。


バクベアーはビィ系の魔物の天敵…これで余程の事が無ければ近づいてこない。


そして俺は侍マスターのジョブ持ちだ。


このジョブの最大の恩恵は刀が上手く使える事…つまりスライムを斬るには最高のジョブだ。


俺は三人が走ってきた方向を中心探した。


すると…無数のスライムが集まっている場所があったのでそこに向かい…スライムを数匹斬った…やはり居た。


マリアだ…だがその姿はもう勝手の美貌は何処にも無い。

頭部は表面を溶かされ2/3の頭髪が無かった。


恐らく酸で溶かされたのだろう…頭髪が無い所は焼けただれている。


もう髪は生えてこないだろうな。


顔も半分が酸で焼かれていて顔左半分から左胸下まで焼けただれている。

他にも体中が酸で焼かれていた。


見方によっては日本の顔が崩れた幽霊の方がましに見える。


ゾンビですら生ぬるい位だ…だが…


死んではいない。


スライムはゆっくり時間を掛けて溶かして食べるから命は助かる事が多い。


だが、亜種は酸を出して溶かしながら食うから『女としての一生は終わる』顔から体から表面が酸で焼かれ溶かされた状態…そんな女誰も最早相手にしないだろう…


どうやらドラゴンビィに刺された場所は運が良いのかスライムに溶かされたようだ…銀色のスライムが死んで居たからそいつが食べたのかも知れない。


もう裸同然だが、残っている布をはぎ取った。


何故か持っている大量の水で体を洗いポーションを振りかける。


火傷は治るが…歴戦の戦士の傷が消えないように…醜く跡がしっかり残る。


これで命は大丈夫だ…但し顔の半分はまるで手にかぎ爪をつけた悪夢に出てくる有名な殺人鬼のようだ。


何故か持っているシーツに包んで背中に担いだ。


◆◆◆


はぁはぁ…ぜぃぜぃ…


流石に湿地帯を人一人担いで歩くのは大変だな。


「リヒト、それって生きているのか?」


「ああっ生きてはいる…だが」


「良かった助かったんだ、無数の蜂の魔物にたかられた時はもう駄目かと思ったぞ」


「マリア…良かった、良かったよー-っ」


「そうでも無いんだ…これ」


「うっ、これはまるで化け物じゃないか!」


「これは酷いな…うっ」


「ううっ気持ち悪いうぇぇぇぇぇー-っ」



「悪い…まだ手当しないといけないから、俺だけ先に帰るわ…あと1部屋追加で宿屋借りる…じゃあな」


それだけ伝えて俺は一人先に宿に戻った。


◆◆◆


ポーションで傷が塞がっているから包帯はまく必要は無いな。


このままじゃかわいそうだから顔の半分だけどうにか包帯を巻いた。


後はどうする事も出来ないな。


起きたら…


まぁその時の対処だ。


「いやぁぁぁぁー――っ嫌ぁぁぁぁー-っ」


気がついたようだ…一応宿屋には事情を話して、周りが空いている部屋にして貰ったから問題は無いだろう。


「マリア…大丈夫だから落ち着いて、なぁ」


「あああっー――ああリヒト、私、私怖い夢を見たの…本当に怖い夢を見たのですわー――っ」


現実と夢を混在しているのか…


「マリア…ごめん」


「リヒト…なんで謝りますの」


そう言いながらマリアは自分の体に目を落とした。


「嘘…裸、なんで…嘘、嘘ですわー――っ嫌っいやぁぁぁぁぁー――っ、そんなあれが本当だなんて…そんな嫌です…嫌ですわー――っ」


「マリア...」


今は声を掛けても無駄だ。


俺が声を掛けられるのは…マリアが落ち着いてからだ。


どの位経ったのか解らない。


俺は傍で眠ってしまったようだ。


周りを見るが、三人が来た感じは無い。


マリアは…


「うふふっ、うふふっ私…化け物みたいですわね」


「あはははっまだゴブリンの方がましですわー――っ、なんなのです、この醜い顔は…あはははっ終わりですわ…終わりですわねー――っ」


自虐気味に叫んでいる。


かなり心が痛む…


「あの…マリア?」


「あのね…あの馬鹿たちは私に蜂の化け物を押し付けましたのよ…最低ですわ、将来側室とは言え、夫になる人と一緒に側室になって支える人間に裏切られましたのですわ」


まぁショックだろうな…流石の俺も裏切りまでは考えていなかった。


ただ逃げ遅れるのはリタかマリアだとは思っていた。


それに、まだガイアもエルザもリタも若すぎる。


命がけで家族を守れるのはある程度の大人で人間関係が構築されてからだ。


実際に前世では危ない人間に絡まれて彼女や妻子供を見捨てて逃げる奴は多い。


まだ10代半ばの彼らに、それを押し付けるのは酷な話だ。


自分の命と他人の命…他人の命を取れる人間は友情や愛があっても難しい。


ドラマや小説みたいな綺麗ごとは現実にはなかなか無い。


そんな事は言えないな。


「…」


「そうですわよね…リヒトには何も言えませんわね…あはははっ私は化け物、化け物ですわ…恋人も友人も全部失って、捨てられた化け物ですわ…うふふふふふっ」


「それは違うぞ…俺は見捨てない」


「同情ですわね…惨めになるだけですわ…だいたい貴方はモテるのですから…さあっさと捨てていくと良いですわ…私はこの世を恨んで死んでいきます、うぐっうぐっううん…ハァハァなにしますのふざけないで下さい…殴りますわよ」


俺はマリアに抱き着き無理やりキスをした。


「俺は同情とかじゃない、マリア達が好きなんだ…死ぬのって自分を捨てるって事だよな…捨てちゃうならマリアを俺にくれよ、うぐっううん…ううん」


舌を噛まれた。


「調子に乗らないで欲しいのですわ、幾ら化け物みたいな容姿でもそこ迄軽い女じゃないのですわ、本当にこんな私でも愛してくれますのかしら? どう見ても化け物ですわ…金貨1枚で買えるような奴隷でもまだ私よりはマシですわよ…それでも私を愛すって誓えますの? 無理ですわね…今のキスも同情ですわよね…惨めに、うぐっううんうんぷはぁ」


暴れるマリアに無理やりキスをした。


「これが同情だと思うのか…俺はそれでもマリアが好きなんだ」


「嘘ばっかりですわ、そんなに私が好きなら抱けますわよね! こんな醜い女抱けませんわよね…所詮あなたも偽善者ですわー-っ」


俺の前世は『悪食』だったから普通に抱けるけどなぁ。


普通は無理だが…俺は出来る。


「マリアから言ったんだからもう止まらないから、今更嫌だって言っても無駄だからな…ほら」


俺は自分の股間にマリアの手を持ってきた。


「ああっあの…これって反応していますの…ちょっと待って欲しいのですわ…私これでも…うぐっううん…ハァハァ少し…」


「だ~め」


「ちょっと、待って欲しいのですわ…気持ちはわかりましたわ…その私もリヒトが好きですわ…ですが」


「駄目、待ってあげない」


「それならせめて、せめて私の好きな所を…そう5個、5個あげて」


「可愛い、性格が好き、しぐさが好き、声が好き、振舞が好き、その他全部好き」


「解りましたわ、わかりましたわ…仕方ないですわねもう…顔が真っ赤になりますわよ…此処迄来たらもう嫌なんて言いませんわ…ただ後悔しますわ…私もうきっとリヒトから離れませんわよ…裏切ったら殺しますわよ…」


「それで良いよ…うぐううんうんっ」


「うぐっううんうんうん…ぷはぁ」


もうマリアは抵抗をしなかった。


そのまま体を重ね合った。


マリアは多分捨てられるのが怖いのか、偶に体を震わせていたが…


驚く位に何でもしてくれた。


口でも胸でも何でも使って…俺が喜ぶと嬉しそうに笑顔でしてくれる。


確かに容姿は変わってしまったが…その笑顔は凄く可愛く見えた。


「ハァハァ…凄いな…これ」


「リヒト私好き過ぎですわ…本当に壊れるかと思いましたわよ、まぁ此処迄するなら愛していないなんて事はありませんわね…こんなに愛して貰えるなら…とっととリヒトの恋人になれば良かったですわ」


「ありがとう…うぐっ」


「うぐっ…お返しですわ」


もう何回したか解らない、ただかなり暗いから夜になっていた。


三人がいつ来るか冷や冷やしたが…こなかった。


うん? そう言えばガイアと約束があった。


「マリア、悪いガイアに報告をしてくる」


「私はあの三人が大嫌いなのですわ、だから行きませんわよ…あのそれよりリヒトぉ、あのね」


「ああっ、少し話したら直ぐに帰ってくるよ…続きをしたいからな、あっ!ついでにワインと食い物も買ってくるよ」


「まさか、寝ないでするつもりですの?」


「マリアが嫌じゃ無ければな」


「まぁ、仕方ないですわね…リヒトなら嫌じゃ無いですわ」


俺は後ろ髪をひかれる思いでマリアの部屋を後にした。





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