第8話 散々



「依頼を受けてきたぞ…スライムの討伐だ」


「はっ、またメンドクサイ物を受けてきたな」


「あれは私も嫌いだ」


「私も苦手ですわ」


「私は得意だよ、魔法一発だからね」


「確かにそうだけどな…エルザはスライムみたいな奴でも斬れるようにならないとならないし、マリアだって対処法を覚えないと不味いでしょう」


「確かにそうだ」


「そうね」


「そうだな、俺達なら楽勝だろう!」


「そうだな、斬って斬って斬りまくるぞ」


「そうね、私もリング系の魔法での対処の練習が必要かも知れませんわ」


「まぁ私は問題なく対処できるけどね」


これが勇者の力か羨ましいな…


言葉一つで人を惹きつけ奮い立たせる…凄いなぁ…羨ましい。


「それじゃ…1時間くらいしたら出発で良いか」


「「「「了解」」」」


今日は機嫌よく受けてくれたな…いつもガイアは一言二言文句が入るのに…


この後の夜があるからか…


◆◆◆

俺が案内して、ビィの湿地帯についた。


「場所は此処なんだが、俺はどうしたらよい?」


「そうだな、4人の連携を中心にした戦いをしないといけないから外れてくれないか?」


「了解…それじゃ俺は離れた所で自分の食い扶持を稼ぐとするよ」


「ああっ、そうしてくれ」


三人は不思議そうに俺を見ているが、ガイアが言ったから反対は無い。


実際はスライムは強敵だが刀を使う俺には楽勝だ。


この中で俺だけは褒賞が無い代わりに狩った物を買い取って貰える。


まぁ勇者パーティだからズルはしないと信頼もある。


多分ガイアの中で『風俗代』を稼がせる為の別行動だろう。


◆◆◆


俺はガイア達に伝えていない事が2つある。


この湿地帯の中にある茂みや周辺の森にはドラゴンビィという雀蜂を3倍にしたような大きな虫の巣が無数にある。

特に湿地帯の中の茂みには沢山の巣があり入り込むと襲われる。


この辺りのスライムはギルドは公表していないが亜種が多く、酸や毒を吐く凶暴な種類が多い。


勿論、勇者パーティである彼等なら『知識さえあれば』充分な対処が可能…だが事前準備が出来て居なければ…さてどうなるのだろうか?


◆◆◆


「皆、確かにスライムはそこそこ強いが…所詮はそこそこだ! この位の魔物は一人で倒せないようではこの先の戦いに勝利は無い! もし襲われてもスライムの体に取り込まれるまでの時間に救出すればいいだけだ…まずは散開して各自対処でやってみようぜ! 難しかったらペアに変更だ」


「ああっ私はスライムを斬れるようにならないといけないからからそれで良い」


「まぁ、私の火の魔法はスライムの天敵だから問題ないよ」


「あの…皆はそうかも知れませんが、私は回復メインですわよ」


「マリア、不安なのは解る…だが、聖女だからって戦う状況はこの先山ほどある…不得手なのは解るが、リング系の呪文を上手く使ってみてくれ」


「解りましたわ」


リヒトが抜けたフォーメーションなら…確かに自分の身を自分で守らないといけませんわ。


ガイアやエルザに存分に戦って貰う為には私やリタも防御力を身に着ける必要がありますわ。


こうして私達はバラバラになってスライムを狩り始めましたわ。


「ホーリーリング」「ホーリーリング」「ホーリーリング」


ぶしゅうううっ


良かったですわ、最近身に着けた『ホーリーリング』を三発位打ち込めば倒せますわね。


これなら囲まれなければ倒せますわ。


どうにかなりますわね…


どうにか2体のスライムを倒してゆっくりしていると…


銀と紫の個体が居ましたわ…


危ない所でしたわね…確か前にリヒトから聞いた話では『色のついた個体』は亜種で危ないという話でしたわ。


大した事は無いと思いますが…初めてのスライム狩なので見送りましょう。


暫く、無難に狩りをして更に追加で1体の狩りをしていた所、向こうからガイアが走ってきたのが見えましたわ。


その横をエルザが走り…少し遅れてリタが走っています。


『何があったのでしょうか?』


「ガイア、エルザ、リタ…どうかしたのですか? そんなに慌てておかしいですわよー――っ!」


私がそう大きな声で声を掛けたら…三人とも私の方に走ってきます。


周りに何か見えるのですが…嘘…あれはキラービィかドラゴンビィですわ…不味いですわ逃げないと大変な事に…嘘ですわね、三人とも私に…まさか擦り付けようとしていますの…不味いですわ、最低ですわよ。

私も急いで走り出しました。


「最低ですわよ、まさか擦り付けをしようとするなんてー――っ」


すぐさま私も走り出しましたわ...ですが…


ねちゃっ…なに…嘘、今私が踏んだのは…銀色の個体、まさか亜種。


嘘ですわ、小型のスライムを踏んでしまいましたわ。


「ガイア、エルザ、リター-っ」


三人はもう私のすぐ後ろまで来ています。


数えきれない程の蜂の魔物を押し付け三人は走り去っていきました。


「マリアー-!済まないな…俺は勇者だ死ぬわけにはいかない」


「許してくれー-っ恨むなよ」


「ごめんねマリア、私貴方の事はわすれないよー――っ」


嘘、嘘…嫌ですわー――っ


私の体を無数のは蜂の魔物が刺してきます。


「痛いっ痛いっ痛いですわー――っ誰か助けていやぁぁぁー――っ」


ぶしゅー――っ


何かが顔に掛かりましたわ。


「ああああっ熱いっ熱いですわー――っ、誰か」


走らなきゃ…走らないと死にますわ…ですがスライムが纏わりついて…


これで終わりですの…私終わりですの…


恨んでやりますわ…ガイア、エルザ…リタ…許しませんわよ…


呪ってやる…死んだら呪ってやりますわー―――っ


私は歩く事も出来ずに…そのまま倒れ込んだ…


『お前らなんて…死んじゃえば良いのですわ』



◆◆◆


三人が走ってこっちにきた。


「どうかしたのか?」


「蜂…蜂の魔物に襲われたんだ…痛ぇー-」


「凄く痛い、何か薬を持ってないか」


「凄く痛んだよ…ぐすっリヒトどうにかしてよ…痛いよー-っ」


「どうにかするけど、後で文句言うなよ…セクハラとか無しな」


「解ったからどうにかしてくれ」


俺はガイアの服をはぎ取ると背中に三か所刺された跡があった。


ピンセットを収納袋から取り出し…針を抜いて口をつける。


「止めろ気持ち悪い」


「俺だってそんな趣味ないわ…毒を吸い出すんだから仕方ねーだろうよ」


気持ち悪いのを我慢して毒を吸いだした。


「次はどっちが良いかな」


「私は、その…」


「どうでも良いから痛いのどうにかしてよ…リヒト」


エルザが服を脱ぐのを躊躇している間にリタが割り込んできた。


「悪いな…」


俺はリタを裸にした。


ガイアと違って背中からお尻に掛けて10か所位刺されている。


「嫌、いやぁぁぁぁぁー-痛い、あんいやぁぁぁー-」


何だか悩ましい声を出しているが、棘を抜いて毒を吸い出しているだけだからな…


まぁ、絵面は嫌がる少女を押し倒してひん剥いて背中からお尻迄吸っている変態に近いが…不可抗力だ。


「ハァハァ、少し楽になったよ…ハァハァ」


「さぁ次はエルザだ」


「あのなぁ…」


「エルザ、恥ずかしがるのは良いが、これ結構ヤバい神経毒なんだ、見ろ俺の唇、少し腫れているだろう…俺が嫌ならガイアに頼もうか?」


ガイアは俺の唇とエルザを見比べて…首をぶんぶん横に振った。


恐らく童貞喪失して無かったら口が腫れてもやったかもな。


「解った、女は度胸だ!」


いや上半身しか刺されていないのに下まで脱ぐ必要は無いからな。


「ああっ駄目だ痛い、痛い痛いぞリヒトー――っ」


少し悩ましい声だが、刺されたのは6か所位だからそんなでもない。


俺は最初から気がついている。


知ってて敢えて触れなかった。


「所でマリアは何処に居るんだ?」


置き去りにしたのだろう…予定ではリタの可能性が一番高いと思っていたが違うようだ。


「マリアは…もう手遅れかも知れない…」


「逃げる時犠牲になってくれたんだ」


「マリアのおかげで逃げられたの」


嘘だな嘘をつく時の癖が皆出ているぜ。


「助けに行ってくる!」


「よせ…無駄だ」


「行ってもお前迄怪我するか死ぬだけだ」


「そうだよ…」


「あのなぁ…俺って馬鹿だからさぁ上手く言えないけどよマリアの方が俺の命より大切なんだよ! 勿論お前ら三人も同じだ…馬鹿野郎いい加減気がつきやがれー――っ」


「「「リヒト」」」


俺は薬瓶を放り投げ走り出した。



より状況をドラマチックに演出する…これも前世で学んだ事だ。


やってる事はクズの極みだがな…














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