第7話 準備 



これでガイアには了承を得たわけだ。


これで何か問題が起きても『ガイアが許可した』で済む。


女を口説く事…これは俺にとっては簡単だ。


だが『特定の女を口説く』こうなると難易度はグンと高くなる。


例えばAという女を例にしてみよう。


Aという女に振られたから同等の女、もしくはもっと可愛い子と付き合いたい。


これは難しくない…Aより可愛い子を片っ端から声を掛けていけばよいだけだ。


だが…Aが好きでAと付き合いたいとなると少し事情が違う。


Aに好かれなければ、それで終わる。


俺の前の世界のホストにナンパ師、その全ての人間が難しい…そう言うのは『特定の人物を口説く事だ』


ただし、今回はアドバンテージは俺にある。


宿屋に戻り、ガイアはそのまま寝てしまった。


俺はそのまま、朝市に行く。


今日は何を作るか…


前と違い何でもあるわけじゃ無いから…見てからだな。


スーパーはこの世界には無いからな。


◆◆◆


この世界の宿屋は調理用のキッチンがある…結構便利だ。


「今日の料理は、リヒト特製フレンチトースト風ハチミツパンに、ミニハンバーグに、アンチョビ乗せサラダにオークスープだ美味いぞー-っ」


手は抜かない…胃袋を掴むためにな…ちなみにガイアは眠そうだから同じものをお盆に載せて部屋に置いてきた。


「リヒトなんだこれは? 今日も凄いごちそうじゃないか?」


「今日も凄いですわね…美味しそうですわね」


「うんうん、美味そうだよ」


調味料チートは確かに出来ない。


だが、そう言った美味しい料理は都や大きな都市だけでしか食べられなく…しかも高い。


前の世界でも牛丼やステーキは昔は高額だった…この世界もまた『美味しい物』はまだ高級な世界だ。


「さぁ、食ってくれ」


「ガイアが居ないけど、どうしたんだ?」


「ああっガイアは二日酔いだから、部屋において置いた」


「そうなのですの? まぁ明け方まで飲んでいましたから仕方ありませんわね」


「ガイアも結構飲んだんだ…今日は狩り出来るのかな」


「まぁ3時間位したら、声かけてみるよ」


「頼んだ…しかし、随分ご機嫌だったんだな」


「まぁ、ガイアだって男同士で馬鹿やりたい時もあるだろう」


実際はやっていたんだけどなぁ。


「そうか…しかしリヒトこれ美味いよ…特にこのフレンチトーストか? ハチミツが掛かっていて美味い!」


「このハンバーグって言うのも美味しいですわね」


「それを言うならサラダのドレシッングも絶品だよ」


そりゃそうだ…これらは前世の記憶から作っている。


この世界で再現すれば…かなりのごちそうだ。


「これは、本来未来の嫁さんになる人の為に身に着けただからな…まぁそれは無くなった…まぁお別れの時まで楽しんでくれ」


「ああっ…そうだったのか…なんだか済まないな」


「そう言う事だったんですのね…随分と手の込んだ物ばかりだと思いましたわ」


「なんだか…ゴメン」


「まぁまぁ気にするな…俺はこれからも手を抜かないから、お別れまで堪能してくれ…ガイアはあと数時間寝ているだろうから…俺はちょっと依頼の話をギルドで聞いてくる」


「なんだか済まないな」


「気にするなよエルザ…別れるまではしっかりとフォローするからな…まぁもし感謝してくれるなら、昨日みたいにお礼してくれれば良いよ」


「あんなのでお礼になるのか?」


「まるで私達を楽しませるように飲んでいただけですわ」


「凄く楽しかったけど…あれじゃ私達が楽しんでいただけでリヒトの負担が増えているだけじゃないかな」


「そんなことは無いぞリタ…俺にとっては三人は凄い美女なんだぞ! それこそ帝国の赤髪の騎士姫や天使の歌声と言われるフローラなんかよりずうっとな! そんな三人と一緒に居られる…凄いご褒美じゃないか?」


「まぁ、リヒトがそれで良いっていうなら、うん別に構わないよ」


「それ位なら構いませんわ」


「それなら私も良いよ」


焦らない、焦っては全てが終わる…


「ありがとうな…それじゃまたガイアが居ない時にでも飲もう…一応俺からガイアに許可を得たから安心してくれ」


「そうなのか…」


「それなら大丈夫ですわ」


「うん…それなら良いよ」


今一瞬悲しそうな顔になったな。


まぁ、自分の未来の夫が幼馴染とはいえ自分が居ない時に会うのを許可した…それが嫌だったんだろうな…うんうん順調だ。


◆◆◆


俺は冒険者ギルドで直ぐに依頼を出した。


「すぐそこに適任者がいますが…本当に?」


「ああっ、勇者ガイアだって年頃だ、隠れてそういう処理も必要だろう?」


「そうですね」


「ギルドを通せば秘密が守られるからな…頼むよ」


「解りました…ゼルクさん…あちらのお仕事です『別部屋を使って下さい』」


「おおっ…おおっリヒト様が…」


「違う、ガイアだ」


「リヒト様聞こえちゃいます」


「そうだな」


しかし…勇者は凄いな…こんな事でもサロン(個室)を使えるなんて。


◆◆◆


「すげーな初めて入ったわ…サロンなんて、此処の菓子食べて良いのか?」


「好きなだけ食べてくれ…お金も上乗せするから、半分顧問になって欲しい?」


「顧問? 俺は…その娼館や風俗の情報で生きている人間だぜ…そんな俺に顧問? 何か知りたいのか?」


まぁ普通はそうだな…銅貨3枚(3000円)で風俗情報みたいな情報を売っているんだからな。


この世界には風俗情報誌が無いから失敗したくないならこう言う情報を買うしかない。


「ああっ、その風俗情報を知りたいんだ」


「ほう、成程リヒト様も男って事だな」


「違う…相手はガイアだ、守秘義務をしっかり守るVIP店で、最高の女性が居るお店…そして気に入って女性が出来た場合は身請け可能なのが理想だ」


「勇者絡みなのか?」


「ああっだからこそギルドを通した…1か月集中的に情報が欲しい…報酬は金貨3枚、勿論口止め料込みだ」


「もし俺が裏切ったら」


「殺して終わりだ」


「冗談だよな?」


「冗談だ…だが勇者が店に行くんだ…その情報が流れてその原因がお前だって解かったら…人生詰むぞ」


教会から嫌われるからな…


「ああっそうだな…絶対に守る…それで勇者ガイアはどんな趣味なんだ?」


「まぁエルフが好きだな」


「なら、とりあえずは『フォーレスト』が良い…あそこのエルフは質が高く美人が多い、サービスはソフトだが初心者には良いだろう。物凄く馬鹿高いが身請けも可能だぜ」


「そうか…それで早速今晩の予約は出来るかな…オールナイトで」


「本来は予約制で1週間前が当たり前だがVIP用の特別な子なら可能だ…ただオールナイトなら金貨1枚+銀貨2枚が掛かるぜ」


約12万円か…高級風俗にしては前世に比べたら安いな。


「よし、頼んだ…勇者の身分は相手に伝えても良いけど、みだりに口外しない様に伝えてくれ…あとは出来るだけガイアのオキニになるような子のチョイスも頼む」


「指名になるから+銀貨1枚になるぞ」


「ああっ構わない」


「了解した」


俺はゼルクに金貨2枚と銅貨3枚支払い、サロンを後にした。


◆◆◆


さて…次は依頼を探さないとな。


勇者パーティは魔王討伐の旅の間に、地域の人間に対してもボランティアで塩漬依頼を受けたりしなくてはならない。


まぁ『勇者たちのクリーンなイメージの為』だな。


今のガイアじゃまだ魔王や幹部には届かない…実績やレベルを上げる為でもある。



「それで、何か良さそうな依頼はありますか?」


「そうですね…この辺りは結構平和ですね…」


「そうですか…でもこの辺りで少し依頼を受けておきたいんです」


「手ごわい相手だと、スライムとかですかねオーガは少数ですし、オークやゴブリンは中級冒険者で充分ですから…」


「そうですか? それならスライムの討伐を受けさせて貰います」


「はい…それなら、ビィの湿地帯に出没しますので討伐をお願いします」


「はい」


ビィの湿地帯…あの辺りは確か…これは使えるかも知れないな。


スライムは良く雑魚と前の世界でされているが…実際はかなり厄介だ。剣で倒すならコアを破壊しなくちゃ死なないし、大きさも軽自動車の半分はある…個体によっては酸や毒を吐くものもいる…そして何より足場の悪い湿地帯にいる。


ゲームと同じに考えてはいけないんだ。

ゴブリン、オークより難易度は高くオーガと同クラスだ。

しかもその割に素材は使えないから討伐報酬は少ない。


だから引き受け手は少ない…


まぁ本来なら、俺達からしたら雑魚だ。


だが今回は…何か仕込む場所には良い場所だ。



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